転職して働き始めた後で、「この転職は失敗だった……」と感じる介護職の方は少なくありません。ありがちな失敗の体験談と、次の転職では失敗しないための対策を紹介します。
【介護職の転職】ありがちな6つの失敗談とアドバイス
介護職のよくある転職失敗談を6パターン紹介します。キャリアアドバイザーが原因を分析し、対処法を解説するので、転職前の参考にしてみてください。
【1】給料の良さで選んだけど、人間関係が最悪
30代、介護職8年目、有料老人ホームへの転職
前職では5年働きましたが、いつまでも給料が上がらないことに業を煮やして転職活動を開始。給料の高い施設に片っ端から応募し、内定が出たのが今働いている施設です。
ただこの施設、人間関係が最悪で……。面接で話した施設長がいい人だったので雰囲気の良い施設だと信じていたのですが、現場を仕切っているベテランスタッフたちはくせ者揃い。
派閥のようなものもあり、ご利用者様の前でスタッフ同士が言い争っているのを見たときは本当に驚きました。
まだ入職してから1ヵ月。給料には満足しているのですが、今後もずっとこの人たちと働くのだと思うととてもつらく、この転職は失敗だったかもしれないと感じています。
給料だけを見て転職先を決めてしまったせいで、後悔するのはよくあるパターンです。本当に働きやすい施設なのかを、給料以外の条件も含めてじっくり検討すべきでしたね。
ただし、人間関係は事前に把握するのが難しい要素です。
たとえば面接時に自分と同世代・同性のスタッフがどれくらいいるか、転職者の受け入れ体制はどうかなどを質問しておけば、少しは雰囲気がつかめていたかもしれません。
教訓
”給料以外”の要素も必ず確認すべし!
※介護職の人間関係の悩みについて詳しくはこちら→『【体験談あり】介護職にありがちな人間関係の悩みとは』
【2】友人に紹介された施設に即決。聞いていた条件と違う…
40代、介護職12年目、特養への転職
家事・育児をしながら夜勤に出るのがつらくなってきたので、「うちなら夜勤しなくていいよ」と友人が誘ってくれた近所の施設に転職しました。
友人の紹介だったので面接もスムーズだったのですが、入職後、勝手に夜勤のシフトを入れられてしまいました。
話が違うと上司に抗議したかったのですが、もしそのことで施設とモメたら友人に迷惑がかかるので言い出すこともできず、結局は無理して夜勤をしています。
どうせ夜勤があるのなら、近隣のもっと給料のいい施設にも行けたのに……。
今回の転職は失敗だったので、ここにはあまり長くは勤めず次の勤務先を探そうと思っています。
口頭だけで話が進んで、入職後に労働条件が違うと気がつく、というのも転職でよくある失敗です。
とくに友人や知り合いの紹介だと、施設への条件確認を忘れがち。内定を承諾する前には、必ず「労働条件通知書」などの書面で労働条件を提示してもらいましょう。
また、紹介で入職する場合も、給料や休日日数などの条件を近隣の求人と比較し、本当に自分が長く働けそうかを見極めるとベターです。
教訓
労働条件は”必ず書面”で確認すべし!
【3】好条件での転職。ベテランと勘違いされ困惑
40代、介護職1年目、老健への転職
以前働いていた施設は人間関係がイマイチで、どうせなら条件の良いところを探そうと求人をしっかり吟味。給料はもちろん残業時間や休日日数などもしっかり確認し、好条件で転職しました。
面接時に採用担当者がろくに履歴書も読んでくれず、あっという間に内定が出たのには引っかかっていたのですが、働き始めた後に周囲からなぜかベテランだと勘違いされて困ってます。
自分はまだ介護職としては1年ほどの経験しかないのに、仕事も全然教えてもらえません。
どうやら前職が比較的大手の有料老人ホームだっただめ、「大手から来たならできる人だろう」と判断されているみたいです。
若手のスタッフから質問されたり、対応が難しいご利用者様を任される場面もあり、自分はそこまででもないのに……とこの転職を後悔し始めています。
転職する際は、施設側がこちらの経歴や人柄をきちんと理解してくれたかどうかも大切です。
施設によっては採用担当者が応募者の情報をろくに確認せず内定を出すこともあるので、「経験が浅く慣れるまで不安がある」と面接で率直に伝えておけばよかったかもしれません。
自分自身が納得感をもって働けそうかを見極めたうえで、内定を承諾するかを決めるとよいでしょう。
教訓
面接では”こちらの話を聞いているか”も重視すべし!
【4】未経験からの介護。やりたい仕事じゃなかった
20代、介護職未経験、グループホームへの転職
飲食業で働いてきたのですが、お店の閉店と同時に無職になってしまい、ハローワークで勧められれるがまま介護職に応募しました。
無事に採用されたのはよかったのですが、介護の仕事は予想以上に大変で、毎日辞めたくて仕方がありません。
とくに排泄ケアは苦手です。大変そうだということはわかっていたのですが、いざ自分でやってみると抵抗感があって……。
しかも自分が新人で不慣れなせいかご利用者様に「あなたじゃイヤだ」と拒否されることもあり、それはそれで正直落ち込みます。
別に介護をやりたいわけではなかったし、正直、この転職は失敗でした。転職しやすいからといって安易に決めてしまわずに、もっとよく考えておけばよかったです。
「介護職は人手不足ですぐに採用してもらえるから」と転職するのもよくある失敗パターンのひとつ。
「お年寄りと接するのが好きだから」「生活をサポートする仕事にやりがいを感じるから」など、積極的に介護職で働きたいという理由がない場合は、あまり長続きしないかもしれません。
未経験であればなおさら、本当に介護がやりたいのか考えてみるとよかったでしょう。
教訓
本当に”介護職で働きたい理由”があるか振り返るべし!
【5】キャリアアップしたかったけど、前職の方がよかった
30代、介護職10年目、特養への転職
介護職として10年働き、そろそろキャリアアップしたいと考えてリーダー業務を任せてくれる施設に転職しました。
実際に働き始めてみると、リーダー業務は大変な割にサービス残業が多すぎて、コスパが悪いと感じています。
また、ケアマネ(介護支援専門員)の資格取得のために勉強もしているのですが、仕事から帰るとくたびれきっているので勉強との両立が難しくなってしまいました。
こんなことなら今より残業が少なかった前職のうちに資格を取っておき、その後で転職すればよかったです。
自分には責任の重い仕事は向いていないような気さえしてきて、そもそもキャリアアップのための転職という選択自体が失敗だったと後悔しています。
目標はあったものの、実際に転職してみると仕事がつらくて失敗したと感じる、という方も少なくありません。
こういった場合、自分が何を求めて転職するのかという「軸」が定まっていないことが多いようです。
転職前に、今の仕事でバリバリ働いて管理職を目指すのか、それとも資格取得のために仕事は抑えて勉強時間を確保したいのか、優先順位をつけておけばよかったかもしれませんね。
教訓
何を求めて転職するのか、”軸”を定めておくべし!
【6】施設形態が変わって、仕事も大きく変わった
20代、介護職2年目、有料老人ホームへの転職
良さげな求人が出ていたので、特養から有料老人ホームに転職しました。
介護施設はどこでも大差ないと思っていたのですが、この施設では予想以上にご利用者様への丁寧な対応を求められるので疲れています。
とくにギャップがあるのは、ご利用者様を「○○様」と様付けで呼び、仰々しいほどの敬語で話すよう指導されることです。
以前いた特養ではここまでの敬語は求められなかったので、今の施設ではなんだかご利用者様との距離が遠くなったような淋しさを感じます。
上司からは「ホテルのような対応を目指せ」と言われることすらあります。有料老人ホームは接遇レベルが高いことが多いとは聞いていましたが、ここまでとは……。
敬語が苦手な自分は言葉遣いで注意されることも多くストレスがたまり、この転職は失敗だったと思っています。
情報収集不足のせいで転職後にギャップを感じてしまう、ということは介護職に限らずよくある失敗です。
介護職の仕事は、施設形態や施設の運営方針によっても働き方が変わります。
これまでの仕事とどんなことが変わりそうか情報収集しておけば、入職後のギャップが少なくなったかもしれませんね。
たとえばネットで「有料老人ホームは施設によって求められる接遇レベルに差がある」「老健は介護度が高い方が多い」など、施設形態の違いを調べてみるだけでも参考になります。
教訓
”施設形態”や”運営方針”についてもしっかり情報収集すべし!
次は失敗しない! 介護職が転職に成功するためのポイント
ここまで介護職の転職失敗談を紹介してきましたが、もしまた次に転職する場合、失敗しないためにはどうしたらいいのでしょうか。
介護職の方が転職に成功するためのポイントを紹介します。
自分が転職先に求める条件をまとめ、優先順位をつける
転職に成功するためには、自分が転職先に求める条件をしっかり考えて、優先順位をつけておきましょう。
希望条件とその優先順位がはっきりしていないと、たとえば「残業時間が不満で転職したけど、給料のいい職場を選んでしまったので、残業時間が減らなかった」など、次の職場にも問題を持ち越してしまいがち。
以下の3つのステップで、希望条件をスッキリ整理してみましょう。
(1)現在の職場への不満を洗い出す
転職を考えている場合、今の職場に辞めたいと感じるほどの不満を抱いているはず。それがどんなものか、できるだけたくさん書き出してみましょう。
たとえば、以下のとおり。
(2)不満を、次の職場に求める条件に言い換える
不満を書き出したら、それを解決できる求人の条件に言い換えてみましょう。給料や残業時間はできるだけ具体的な数字も考えておけるとベターです。
(3)希望条件に優先順位をつけて並べ替える
希望条件を出せたら、それを「絶対に叶えたい条件」と「できれば叶えたい条件」に分けて、叶えたい順番に並べてみましょう。
その際、現職で不満はないけれど、次の職場でも引き続き叶えたい条件(現状維持したい条件)があれば一緒に入れておきます。
これだけで、自分が転職にあたって叶えたい条件がかなりクリアになるのではないでしょうか。
とくにありがちなのは、「給料が最優先」と考えてしまうケース。
給料が大切なのは当然のことですが、お金以外の希望条件で何を大切にしたいのかを考えておくことが重要です。
転職に一度失敗しているのなら、なおさら次の職場は安定して長く働ける環境を選びたいですよね。
そのためにも、現職を辞めたいと思う理由を明確にし、希望条件を整理しておきましょう。
情報収集と求人の比較をしっかり行う
自分が転職先に求める希望条件がしっかり整理できたら、その条件に合う求人を探してみましょう。
「この求人、自分の条件にぴったり!」と思うものが見つかったら、それがどんな施設でどんな利用者さんがいるのか、どんな運営方針なのかを調べ、冷静に他の求人と比較してみることが大切です。
たとえば給料や労働時間の条件がぴったりでも、施設形態の違いによって仕事内容にギャップを感じてしまうかもしれません。
転職に成功し、次の職場で長く働き続けるためにも、条件だけでなくさまざまなポイントを複数の求人で比較したり、ときには複数の施設に応募して実際の職場の雰囲気を体感してみることも大切です。
理想の求人が見つかったとしても、応募先をひとつに絞らず、いくつかの求人に応募してみましょう。
面接を受けに行ったら思っていた雰囲気と違っていたり、労働条件が変わることもありえます。
複数の内定をもらったうえで、それぞれを比較しながらどの施設なら長く働けそうかを見極めて転職するのがベストです。
その転職、本当に失敗でしたか?
自分なりにいろいろ考えて転職したものの、転職後に「事前に聞いていた条件と違う、転職に失敗した!すぐまた転職しないと!」と思ってしまうこともあるかもしれません。そんなときは、少し冷静になってみてください。
その問題は、「給料が面接で聞いていた金額と違うのですが」などと上司に相談することで解決するかもしれません。
また、人間関係に問題があっても、もし近隣に系列の施設があれば異動できるよう取り計らってもらえる可能性もあります。
いたずらに短期間での転職を繰り返すと、転職活動に時間を取られて仕事に集中できなかったり、のちのちの転職で「忍耐力のない人」などと思われて採用に不利になってしまうかもしれません。
「転職に失敗した」と感じると焦ってしまうものですが、今からでも改善できる点がないか、一度は振り返ってみることも大切です。
そのうえで、「やっぱり失敗だった」と判断した場合は、『次は失敗しない! 介護職が転職に成功するためのポイント』をじっくり読み込み、慎重に転職活動を行いましょう。
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