片麻痺の方の正しい食事介助の方法は、利用者さんの症状の重さによっても変わります。利用者さんの体の状態に合わせた介助ができるよう、ポイントをしっかり抑えておきましょう。
食事介助の姿勢を調整するときの目安
食事介助をするときは、まず利用者さんの姿勢を整えましょう。姿勢は、下記のような目安で行います。
片麻痺の方の状態を知ろう
片麻痺になり、口の中が麻痺している状態の方は多くいますが、嚥下(えんげ)障害の有無については個人差があります。
脳卒中により片麻痺になった場合でも、嚥下機能にかかわる舌咽神経(ぜついんしんけい)や迷走神経は、脳の両側でコントロールしているため麻痺を起こしていない側がカバーしてくれます。そのため、嚥下障害が残らない方も多くいます。
しかし、脳の片側でコントロールしている舌下神経や顔面神経は、片麻痺になると影響を受けやすい部分です。よって、麻痺側の口が開きにくいと感じたり、口のなかに食べ物が残りやすくなることがあります。
このような利用者さんの体の状態に配慮して、食事介助をすることが大切です。
また、片麻痺の方に限ったことではありませんが、高齢者には唾液量が少なく、咀嚼、嚥下する力が低下している方が多いので、片麻痺の有無にかかわらず誤嚥には注意しましょう。
片麻痺の方の座位での食事介助
片麻痺の方の食事介助をするときには、介護者は利用者さんの健側に座りましょう。
嚥下機能に大きな問題がない方の場合、食べ物は口の中央に運びます。
嚥下機能に障害があったり、口腔機能が低下していて口の中央から食べにくい方の場合には、口の健側に食べ物を運ぶと、利用者さんが咀嚼・嚥下しやすくなるケースがあります。
利用者さんの体の状態や、食べやすさに合わせて調整してください。
箸やスプーンで食べ物を運ぶときは、しっかり口を閉じてもらってから、ゆっくり引き抜きます。そのとき、利用者さんの顔が上がってしまうと誤嚥の恐れがあるので注意しましょう。
また、ごくんと飲んだ後に、飲み込めたか確認する必要があります。口を開けていただいて、口腔内に食べ物が残っていないか観察してから次の食事を運ぶようにすることが重要です。
車椅子の方の場合の食事介助
車椅子に座っている方に食事介助をする場合、姿勢が崩れないように深く腰掛けているか確認します。必要であれば、クッションや丸めたタオルなどで体の隙間を埋めましょう。
麻痺側の腕は、テーブルの上におくようにすることで姿勢が保たちやすくなり、体が傾くのを防ぎます。また、足は車椅子のフットレストからおろして足裏を床面にしっかりつけるようにします。そうすることで、支持基底面が広くなり、姿勢がより安定しやすくなります。
側臥位にするときは健側を下にする
かなり重症の方向けの介助法になりますが、喉に麻痺が認められ、側臥位で食事をとる方の場合には健側を下にポジショニングして食事介助をします。
健側を下にすることで、重力によって食べ物を健側に落ち、利用者さんが咀嚼、嚥下をしやすくなります。食事介助を行う場合には、健側の方に食事を運ぶようにしましょう。
利用者さんの顔は、麻痺側の方に向けます。そうすることで、麻痺側の喉頭(こうとう)からは食べ物が通りにくくなり、健側の喉頭から食べ物が通りやすくなるため、利用者さんがより嚥下しやすくなります。
片麻痺の方には、より注意して口腔ケアをしよう
片麻痺の方は、口腔内の麻痺側に食べ物が残りやすくなります。そのままにすると、虫歯や歯周病、肺炎などさまざまな病気のリスクになります。
片麻痺の方の口腔ケアは、麻痺側に注意して行うように心がけましょう。
片麻痺の方の食事介助を円滑に行うポイント
食事介助を円滑に行うためのポイントをまとめました
食事の環境を整える
食事介助の準備では、利用者さんが食事の時間を楽しみ、集中できるように環境を整えます。
配膳がスムーズにできるよう、テーブルの上を拭いたり、片づけたりして食事スペースを確保しておきます。
排泄を済ませておく
食事前に排泄の意思を確認します。食事中にトイレに行きたくなってしまうと食事に集中できなくなってしまったり、一度中断しなければならない場合があります。ポータブルトイレを使用するときは、部屋に臭いが残ってしまうので、食事の直前ではなく前もって排泄を済ませておきましょう。
手洗いをする
食事前の手洗いは手を清潔にするだけではなく、生活習慣としてメリハリをつけるために実施します。
うがいをする
食事の前に含嗽(がんそう。うがい・口をゆすぐこと)を行うことで、口腔内をきれいに洗い流し、唾液の分泌を促すので食べ物がまとまり飲み込みやすくなります。
食べ物を運ぶ順番に気をつける
食事をはじめるときは、まずお茶、汁物から先に摂取します。そうすることで口腔内が湿潤するので、嚥下がスムーズになり誤嚥予防になります。
口に運ぶ量に気をつける
食事を口に運ぶときの量には気をつけましょう。一口の量が多すぎると、飲み込みづらくて誤嚥したり、窒息したりする恐れがあります。目安としてはスプーン3分の2程度の量がいいでしょう(ティースプーン1杯程度)。
また、一口量が少なすぎる場合は嚥下反射が起こりにくいと言われています(嚥下反射。食べ物をのどから食道まで一気に運ぶときの運動のこと)。
利用者さんの顔を上に向けない
食事介助を行う際、顔が上を向いた状態では喉頭がひろがり、気管に入りやすくなることで誤嚥を起こす恐れがあります。そのため、やや顔を下向きにするようにしましょう。
そうすることで喉頭が狭くなり、喉頭蓋がしっかり蓋をして、飲み込んだときに気管へ行かないようにしてくれます。ただし、顎を引き過ぎると嚥下しづらくなってしまうので、利用者さんに飲み込みやすさを確認しながら調整しましょう。
著者/中澤真弥
監修者/菊谷武
イラスト/アライヨウコ