- 転倒事故防止に努めます。しかし、歩行をするということは、転倒の危険性が常にあるものです
- 100%の転倒を予防することは不可能です
- 100%の転倒を予防しようとすると、安易に車イスに乗っていただくというような介助になってしまい、本来の「その人らしい生活」から遠ざかります
- 歩行していただきながら、重大なけがにつながるような転倒を予防することが必要です
- そのためには、歩きにくい履物や滑りやすい場所は避け、屋外では最短距離を選ぶよりも安全なルートを選ぶようにします
- 屋内では段差に注意し、障害となる物は取り除くようにします(電気のコードや新聞など、踏むと滑る可能性のあるものは片づけ、絨毯〈じゅうたん〉などはピンで固定するなどを行います)
- 自宅では全てをバリアフリーにすることは困難です。また、日常生活の中では自然な機能訓練にもなるため、適度に障壁(バリア)はあったほうがいいとも言われています
- 段差を乗り越えることができる場合は、はっきりと段差とわかるように、認識できる色のテープを貼りつけ、注意を促すなども有効です。また、段差の横に手すりを設置したり、家具を置いて、持てる場所を作ったりするなどにより、安全に段差を越えるように環境を整備することも必要です
- むしろ最も危険なのは、わずかな段差です。わずかな段差は段差と認識することが難しく、つまずきや転倒などにつながります(5mmあればつまずくと言われており、実際は3mm以上は危険です)
- その際は、色のテープを貼りつけたり、段差と認識できるように工夫することが大切です
- また床材に関しても、車イス移動を考えるとフローリングなどが適していますが、歩行する方にとっては転倒での怪我の予防を考えると畳などのクッション性のあるもののほうが適している場合もあります
- 不必要に家具を片づけてしまうより、伝い歩きなどができるように家具などの位置を連続するように配置することで安全に移動できることもあります
- 手すりの設置や家具の位置などは、ご利用者の動きに合わせて設置するようにすることが重要です。介助者は必ず、最も危険がある場所(想定される場所)に立つようにします
両手引きでの歩行介助
麻痺などがないにもかかわらず歩行ができなくなっている場合には、自分自身で重心コントロールができなくなっている可能性があります。
片麻痺の方への歩行介助
片麻痺がある方への歩行介助について説明します。「平地歩行」「階段昇降(昇り・降り)」「杖をつく位置」をそれぞれ詳しく見ていきましょう。
平地歩行
片麻痺の方の平地歩行で、「麻痺側」「健側」「杖」を出す正しい順番はこちらです。
杖 → 麻痺側 → 健側
杖をつく位置
杖は、健側に充分に重心移動するために体を支えます。そのためには、杖は健足の斜め前、足の延長線上より、20cm程度横につくようにします(「平地歩行」の項を参照)。
杖の先端ゴムなどがすり減っている場合は、転倒などの事故につながりますので、使用前には確認し、必要に応じて先端ゴムの交換をする必要があります。
階段昇降(昇り)
片麻痺の方の階段昇降(昇り)で、「麻痺側」「健側」「杖」を出す正しい順番はこちらです。平地歩行の際とは異なりますので注意してください。
杖 → 健側 → 麻痺側
昇りは体重を持ち上げる動作となります。体重を持ち上げることができる足(健足)から上げなくては昇ることができません。
チェックポイント
介助者が体を近づけると、ご利用者は足を外に抜くことができず、正面に上げることになる。その結果、つま先が上段に引っかかり、つまずく。
階段昇降(降り)
片麻痺の方の階段昇降(降り)で、「麻痺側」「健側」「杖」を出す正しい順番はこちらです。階段昇降(昇り)とは異なりますので注意してください。
杖 → 麻痺側 → 健側
降りは、ゆっくり体を降ろす動作となります。体重をゆっくり降ろすことができる足(健足)を残しておかねばなりません。
介助者は着地点を広く見せるために体を半身にして一段下で介助し、麻痺側の足を外側にステップ(介助者側にステップ)するよう声かけする
事故になる例
介助者の誤った介助位置によって事故が起きる可能性が高くなり、介助者が知らずに事故を誘発していることが多いので、注意が必要です。
著者/高山彰彦
※本記事は『あなたのための介護技術 基本編』(文芸社/2018年2月15日発売)の内容より一部を抜粋・再編集して掲載しています