- 座っている姿勢(座位)から立つ姿勢(立位)への介助を学びます
- 必ず安定して座っている状態から開始してください(「正しい姿勢(90度ルール)」参照)
- 介助を開始する前に、ご利用者の状態を確認してください。
(1)麻痺・尖足・拘縮の状態
麻痺の有無・筋力・拘縮の有無・尖足(足首の拘縮)・膝の状態など、体重をかけることができるかどうかを確認します。
(2)緊張や痛みの有無
不随意運動による筋緊張や痛みの有無(動きの制限や速さの制限)。
起立介助をする前の注意点
起立介助をする前に、ベッド(椅子)を安定する高さに設定してください。
ベッド・椅子などの高さの設定
立位の準備(立位のメカニズム)
- 座る位置(臀部)を浅くする
- 足を手前に引く
- 前かがみ(前傾姿勢)になる
立位の準備
ワンポイントレッスン
椅子に深く腰をかけた時と、浅く腰をかけた時と、どちらが立ち上がりやすいですか?
立つ前には必ず浅く座りましょう‼
また、頭を下げずに立つことができますか?
必ず頭を下げるようにしましょう(前傾姿勢)‼
座位を浅くする方法
チェックポイント
ご利用者が前傾姿勢になっていた場合は、横にもたれてもらっても臀部は浮きにくく、重心が足にかかっているため、動きにくい。
このような場合は、ご利用者の上半身をやや後ろにもたれてもらうように起こし、上半身全体で手すり(アームサポート)にもたれるように横に倒すことにより、しっかり臀部が浮き、骨盤が回転しやすくなる。
ワンポイントレッスン
自分で実際に動いて確認してみましょう‼
重心を片方へ傾け、軽くなって浮いたほうのお尻を前に出して移動してみてください(通称「お尻歩き」と言われています)。それが人間の自然な動きです。
重心をコントロールして行いましょう‼
立位のための手すりの使い方
立位用の縦手すり(長さ60cm以上)を設置する意味は、立位時には手すりの低い位置を持って立ち、立位のあと、姿勢を安定させるために、手すりの高い位置を持ち直すためです。
ワンポイントレッスン
手すりを持って立つ時、高いところを持った時と、低いところを持った時では、どちらが立ちやすいですか?
手すりは低いところを持って立つようにしましょう‼
起立介助のポイント
「立位の準備」までを行ってから必ず実施してください。
両手引きでの介助(片麻痺はないが、上手に重心移動ができない場合)
立位のメカニズムに沿って、前かがみになって足に体重が乗るようにする。
麻痺などがある場合は、横に転倒する可能性があるので、「片麻痺の方への介助」を活用してください。
<起立介助のポイント>手の支え方
介助者が上からご利用者の腕をつかむか、下から支えるかによって、行動の主体が変化します。それに加えて、介助者の手のひらが上を向くか下を向くかによって脇の開き具合が変わり、出せる力の大きさが変わります。
片麻痺の方への立位介助
チェックポイント
立位および座位の介助で、ゆっくり安定して動作するポイントは、上半身のコントロールにあります。認知症やパーキンソン病などでそれらがコントロールできなくなっているご利用者に対しては、ご利用者の胸のあたりに介助者は腕を差し出して、それにもたれてきてもらうようにすると前傾姿勢へのコントロールはしやすくなります。
ご利用者の側面に介助者が位置することで、ご利用者は十分に前傾姿勢をとることができ、重心移動(「立位の準備」参照)が可能になります(前から密着すると前傾姿勢を阻害してしまい、上半身のコントロールが困難になります)。
上に引き上げるのではなく、頭を下げてもらうイメージで、足に体重が乗るように誘導します。ズボンなどをつかまないように注意します。
座位への介助
ワンポイントレッスン
立位から座位の介助を実施してみましょう。座る時は、介助者も一緒に座るイメージで後ろへ引いていきます。最後まで上半身は引きつけておくようにしましょう。
筆者/高山彰彦
※本記事は『あなたのための介護技術 基本編』(文芸社/2018年2月15日発売)の内容より一部を抜粋・再編集して掲載しています