実務者研修(正式名称:介護福祉士実務者研修)とはどのような資格なのでしょうか。詳しく知らない方のために、実務者研修の概要、受講するメリット、修了までの流れ、初任者研修との違いについて解説します。

実務者研修とは

実務者研修とは、質の高いケアを提供するために、実践に活かせる知識や介護技術を学ぶことができる資格です。介護のスタート資格である初任者研修の上位資格として位置づけられています。

実務者研修を受講する人の多くは、初任者研修を修了した後のキャリアアップや、国家資格である介護福祉士の取得要件を満たすことを目的としています。

日々のケアに活かせるのはもちろんのこと、給料アップにもつながったり、転職時のアピールポイントになります。

通学(スクーリング)または通信と通学を組み合わせて合計450時間のカリキュラムを受講することで修了できます。

実務者研修と初任者研修はどっちを取るべき?

実務者研修と初任者研修のどちらを受講するか迷っている方も多いかもしれません。結論から言うと、まずは初任者研修を修了してから実務者研修を受講する流れが一般的です。

どちらも受講資格はなく、誰でも受講できます。ただし、実務者研修の内容は実務経験がある人を前提としているため、未経験の場合は初任者研修から取得するのがおすすめです。

初任者研修を修了していれば、実務者研修の受講科目20科目のうち9科目が免除されるというメリットもあるため、まずは初任者研修の受講を検討してみてください。

※初任者研修について詳しくはこちら→『初任者研修とは?取得の方法やメリットを解説

実務者研修を取るメリット

実務者研修を修了すると具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。

実務者研修を修了するメリットを5つ紹介します。

介護福祉士国家試験の受験に必須

実務者研修を修了すると、介護福祉士国家試験の受験資格の1つを満たすことができます。

介護福祉士国家試験の受験資格は下記の2つです(実務経験ルートの場合)。

  • 実務経験3年以上
  • 実務者研修の修了
  • ※実務経験ルート以外にも、養成施設ルート、福祉系高校ルート、経済連携協定(EPA)ルートがあります。

※介護福祉士ついて詳しくはこちら→『介護福祉士とは?資格を取ると仕事内容・給料はどう変わる?

資格手当で給料アップ

実務者研修を修了すると、ほとんどの事業所で資格手当を得ることができ、実務者研修の資格手当の目安額は5,000円~8,000円となっています。

資格名 資格手当の相場
実務者研修 5,000円~8,000円
初任者研修 3,000円~5,000円
介護福祉士 5,000円~8,000円

※We介護転職に掲載している求人情報より算出

さらに、基本給も上がる可能性があるので、給料アップが期待できます。

次に、厚生労働省が発表した保有資格別の月給相場を紹介します。実務者研修を修了していると、保有資格なしの無資格者に比べて約3万5,000円、初任者研修に比べて約7,000円も月給が高くなります。

出典:『令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果』(厚生労働省)よりWe介護編集部で作成

働きながら取得できる

実務者研修は、介護施設や訪問介護事業所などに勤務しながら受講することが可能です。

初任者研修を修了している人は約450時間のうち約130時間分が免除になるので、修了までの期間は働きながらでも2ヵ月〜4ヵ月程度が目安。仮に無資格から実務者研修を受講する場合の受講期間は最短で約半年程度です。

キャリアアドバイザー
キャリアアドバイザーから一言

受講期間はかなり忙しい日々になることが予想されますが、実際に多くの人が働きながら実務者研修を修了しているので、職場の先輩などに、どのようなスケジュールで受講したのかを聞いてみましょう。

活躍の場が広がる、転職に有利

実務者研修を修了すると、主任やリーダー、サービス提供責任者のポジションに就ける可能性もあり、活躍の場が広がります。

施設や事業所によって異なりますが、リーダーなどの役職者の条件を実務者研修以上の資格保有者としていることもあります。

キャリアアドバイザー
キャリアアドバイザーから一言

一定以上の介護に関する知識や経験、介護技術があることを証明することができるため、特別養護老人ホームや介護老人保健施設など、利用者さんの介護度が高い施設でも即戦力として採用される可能性も高くなります。

喀痰吸引等研修の基本研修が免除となる

実務者研修では、介護職でも実施可能な医療行為である喀痰吸引や経管栄養についても学ぶことができます。

実際に喀痰吸引や経管栄養を実施するためには、別に喀痰吸引等研修を受講する必要がありますが、基本研修と実地研修のうち、基本研修が免除されます。

経管栄養(胃ろう)やたん吸引が必要な利用者さんも多いので、これらの医療行為についての知識やスキルがあると現場で活かすことができます。

経管栄養(胃ろう)やたん吸引に限らず、病気や薬についての知識を身に着けている介護職は、施設にとって貴重な人材なので、転職にも有利に働きます。

実務者研修の受講方法とカリキュラム

ここからは、実際に実務者研修を受講したいと考えている方向けに、実務者研修の受講方法とカリキュラムを紹介します。

まず、実務者研修を受講するためには、全国各地にある認定スクールに通う必要があります。すべての科目を通学で受講することも可能ですし、通学と通信を組み合わせることもできます。

実務者研修のカリキュラム

実務者研修の各科目と時間数、受講方法を一覧表にまとめました。

出典:『実務者研修認定ガイドライン』(厚生労働省)よりWe介護編集部で作成

実務者研修の受講科目は全部で20科目。そのうち、18科目は通信と通学のどちらでも受講することが可能で、介護過程Ⅲと医療的ケアの2科目については必ず通学(スクーリング)で受講する必要があります。

なお、通学が必要な日数の目安は7~8日程度です。

実務者研修の難易度と費用

実務者研修の難易度と費用についてそれぞれ解説します。

実務者研修の難易度

実務者研修の難易度は高くありません。

研修の最後に理解度チェックとして修了試験がありますが、しっかり学習すればほとんどの人が問題なく合格できる内容です。

修了試験があるとなるとハードルが高いと感じるかもしれませんが、あくまでも理解度をチェックすることが目的で、受講者を振るいにかけるためのものではありません。

キャリアアドバイザー
人物名

仮に不合格になってしまったとしても追試や再試験を受けられるので、安心してください。ただし、スクールによっては追試や再試験に別途料金がかかる場合もあるので、スクール選びの際に確認しておきましょう。

実務者研修の費用と取得支援制度

実務者研修の取得にかかる費用は無資格者で15万円程度、初任者研修修了者で10万円程度、介護職員基礎研修修了者で5万円程度です。

これらの金額はスクールによって異なるので、各スクールのホームページなどで確認しておくようにしましょう。

多くの施設や事業所では、実務者研修や初任者研修、介護福祉士の資格に対して資格取得支援制度を設けています。その場合は実質的な負担がほとんどないこともあるので、費用の面ではそれほど心配する必要はありません。

キャリアアドバイザー
キャリアアドバイザーから一言

採用する施設や事業所にとっても、働く職員が資格を取得することは前向きに捉えています。

資格取得を通してケアの質向上につながることはもちろん、リーダーなどの役職を任せられたり、職員に占める介護福祉士の比率が上がれば加算を得られるので、経営の面でもメリットがあります。

資格取得支援制度がある場合は求人票に記載されていることが多いので確認してみましょう。

まとめ

実務者研修について解説してきましたが、みなさんの疑問は解消されたでしょうか。

実務者研修は、現場でのケアに活かせるのはもちろんのこと、より専門性の高い介護職として活躍するための知識や考え方を学ぶことができます。

働きながら取得するには一定期間、忙しい日々を覚悟しなければなりません。しかし、資格取得支援制度などを活かせば金銭的な負担は軽くすることができますし、取得後は資格手当を得て給料アップも可能です。

介護業界は資格と経験年数によって給料が決まることがほとんどなので、ぜひ積極的に資格取得を目指すことをおすすめします。

参考
令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果』(厚生労働省)
実務者研修認定ガイドライン』(厚生労働省)