グループホームで働く介護職の仕事内容や必要な資格、やりがいや大変なことを解説します。認知症の利用者さんのみを受け入れているグループホームならではの特徴を掴んでください。
グループホームってどんな施設?
グループホームは認知症の利用者さん限定で入所できる施設です。正式には認知症対応型共同生活介護といいます。
ほとんどのグループホームの定員は18名となっており、5~9名の利用者さんを1ユニットとして最大2ユニットです。
そのため、特別養護老人ホーム(以下、特養)や介護老人保健施設(以下、老健)に比べると少人数ケアに特化した施設形態だと言えます。
グループホームの利用者さんの特徴としては以下の点が挙げられます。

グループホームは、認知症の利用者さん同士で共同生活を送る場所です。
日常生活における掃除、洗濯、料理などの基本的な家事については利用者さん自身で行うため、介護職は必要に応じてサポートに入ったり、一緒に家事を行います。
グループホームで働く介護職の仕事内容
グループホームの仕事内容は主に身体介助、生活援助、レクリエーション、バイタルチェック(健康管理)、服薬管理、そして夜勤業務です。それぞれ解説します。

身体介助
グループホームの利用者さんは要支援2〜要介護5と幅広いですが、身体介助の必要度合いは比較的軽い傾向にあります。そのため、利用者さんの動作サポートが基本的な身体介助となります。
認知症の症状が進んでいる方も多いので、しっかりとした声掛けを行い、コミュニケーションを取りながら入浴、移乗、服の着脱、排泄などのサポートを行います。
生活援助
グループホームでは、料理や買い物、洗濯、掃除などの日常的な家事全般を基本的に利用者さんが行います。しかし、認知症の症状などでうまく家事ができなかったり、動作そのものを忘れてしまう利用者さんもいます。
そのため、ていねいに繰り返し説明をしたり、隣で一緒に作業を行ったりすることで、利用者さんの能力を最大限に活かしながらサポートします。
レクリエーション
グループホームでは、認知症の進行を遅らせたり、運動不足の解消や気分転換のためにレクリエーション(以下、レク)を実施します。
認知症で認知機能が弱くなっている利用者さんもいるため、複雑なルールのレクは理解することができない可能性もあります。
利用者さんの状態を見極めながら、認知機能を鍛えられるレクの企画が重要です。また、利用者さん同士で楽しめるような工夫をすることも意識しましょう。
バイタルチェック(健康管理)
グループホームでは、基本的に介護職が利用者さんのバイタルチェックを行います。
体温や血圧、脈拍、呼吸の状態をチェックし、異常があればかかりつけ医や提携している病院に連絡を取ります。
グループホームでは看護師の配置が義務付けられていないため、なにか異常があった際の対応は事前に確認しておく必要があります。
服薬管理
グループホームに限らずですが、介護職は利用者さんの服薬管理も行います。グループホームは認知症の利用者さんへの対応が基本となるため、より注意深く服薬管理を行うことが求められます。
施設ごとに取り組みはさまざまですが、お薬カレンダーを活用して毎食ごとに必要な分だけ利用者さんに手渡したり、問題なく服薬できているかを複数の職員でチェックしたりします。
施設によっては、薬剤師と連携を取り、適切な服薬ができているかを確認する体制を取っていることもあります。
夜勤業務
グループホームは入所施設なので、介護職には夜勤があります。
ほかの施設形態と夜勤業務は変わらず、利用者さんの安全のための見回りや、必要に応じてトイレ誘導、書類作成業務を行います。
グループホームの1日のスケジュール
グループホームの1日を、日勤のスケジュールと夜勤のスケジュールそれぞれに紹介します。
日勤は一般的に9時頃から17時頃まで、夜勤は17時頃から翌朝9時頃までの勤務です。

日勤は、まず出勤時にバイタルチェックを行い、夜勤職員から夜間と早朝の利用者さんの状態を確認します。
その後は散歩や買い物、昼食、入浴、レクリエーションなどを行い、利用者さんがなるべくご自身の力を活かしながら日常を過ごせるようにサポートします。
夕方になったら、出勤してきた夜勤職員への申し送りを行い、退勤します。
次に、夜勤職員のスケジュール例を見ていきます。

夜勤職員は出勤後、日勤職員から利用者さんの状態について申し送りを受け、夕食の準備や食事介助を行います。
20時頃を目安に利用者さんの就寝を手伝い、その後は基本的には見回りを実施したり、ナースコールで呼び出しがあれば対応します。
翌朝は朝食準備や起床のサポート、食事介助を済ませ、日勤職員へ申し送りを行って退勤します。
なお、夜勤帯は職員の数が少なくなるため、施設によっては準夜勤の職員が配置されることもあります。
グループホームで働くために必要な資格・スキル
グループホームで働くために必要な資格やスキルを解説します。
グループホームで必要な資格
グループホームは無資格でも働くことができます。
実際の採用においても、無資格・未経験でも採用されるケースが多くあります。
初任者研修や実務者研修、介護福祉士などの資格があると転職にかなり有利なので、可能であれば資格を取っておくといいでしょう。
グループホームで必要なスキル
グループホームで働くためのスキルで代表的なのは、家事スキルと傾聴力です。
グループホームでは利用者さんに掃除、洗濯、料理などの生活全般の家事をやってもらうため、介護職はそのサポートに入ります。そのため、高いレベルである必要はありませんが、一般的な家事については、一通りできる状態での入職が求められます。
また、傾聴力が求められます。グループホームの利用者さんは全員が認知症なので、過去や直近の記憶がほとんどない方もいます。
認知症の知識を初めから深く知っている必要はありませんが、会話が上手く成立しない利用者さんとも粘り強くコミュニケーションを取ることが求められます。
グループホームで働く介護職のやりがい
グループホームで働く介護職のやりがいとして代表的なのは、挙げられるのは、以下の3つです。

1人ひとりに寄り添う介護ができる
グループホームは、5~9名の利用者さんを1ユニットとする少人数ケアをしているので、1人ひとりに寄り添う介護が可能です。
また、身体介助などの介助業務は比較的少なく、利用者さんと一緒に家事をしたり、レクなどを通してコミュニケーションを取る時間が多くあるので、1人ひとりとしっかり向き合いたいという人にとってはやりがいを感じられます。
認知症で理解力が衰えている利用者さんとのコミュニケーションは大変なことも多いですが、ていねいに説明して理解してもらえたときや、通じ合えたときの喜びも大きいでしょう。
家事経験で得たスキルが活かせる
グループホームは、家事経験を大いに活かすことが可能です。
利用者さんに家事全般をやってもらううえで、自分のこれまでの経験から、上手く家事をこなす工夫やポイントなどを利用者さんに伝えられたときのやりがいは大きいでしょう。
未経験からでも認知症ケアのスキルを磨ける
グループホームで働くことで、未経験からでも認知症ケアのスキルを学ぶことができます。
特養や老健などの介護施設にも認知症の利用者さんはいますが、グループホームではすべての利用者さんが認知症の診断を受けており、認知症ケアを学ぶことに適しています。

採用(入職)の段階で認知症の知識やスキルをいきなり求められるケースは多くありません。
知識やスキルについては入職後に身につけていけば問題ないので、履歴書の志望動機や面接では、認知症ケアについての興味や学ぶ姿勢をアピールしましょう。
グループホームで働く介護職の大変なこと
グループホームで働くうえで大変なことを3つ紹介します。

夜勤は1人での勤務が多い
グループホームの夜勤は、1ユニットにつき介護職1人の配置が一般的です。
利用者さんの状態やナースコールで呼び出される回数などによって忙しさは日々異なりますが、かなりハードな日がどうしても出てきてしまいます。
夜勤を任されるようになるまでに、先輩職員がどのように夜勤業務を効率よく進めているのかを教えてもらうようにしましょう。
利用者さんとの意思疎通が難しい
認知症の利用者さんとのコミュニケーションにおいては、意思疎通がうまくいかないことも頻繁に起こり得ます。
グループホームで働くためには、認知症の方の特徴や症状についての理解を深め、コミュニケーションがうまくいかなくても辛抱強く対応する忍耐力と対応力が重要になります。
介助スキルを磨きづらい
グループホームでの業務は、介助スキルを磨きづらいと言われています。その理由は、グループホームの利用者さんは、認知症ではあるもののある程度の生活動作は自分自身でできるという方も多くいるからです。
積極的な介助をする機会が少なく、生活動作のサポートやお手伝いがメインとなる可能性が高いので、介助スキルを磨きたい場合は、特養や老健などを選択肢に入れましょう。
グループホームで働く介護職のやりがいでも述べたような、家事スキルを活かしたり、傾聴力を磨くといった点についてはグループホームでも十分身につけられます。どんな強みを持った介護職を目指したいかを考えて、どの施設形態の介護施設で働くかを決めましょう。
まとめ
グループホームで働く介護職の仕事内容ややりがい、大変なことを紹介しました。
認知症の利用者さんが、可能な限り自立した生活を送り続けられるようにサポートをすることがグループホームで働く介護職の役割です。
認知症の症状によって、コミュニケーションをうまく取ることができなかったり、繰り返し説明をしても理解できない利用者さんもいます。ただし、少人数ケアがグループホームの特徴なので、1人ひとりとじっくり向き合うことができます。
この記事を読んでグループホームで働いてみたいと感じた方は、ぜひ転職先として検討してみてください。
参考
『令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果』(厚生労働省)
『実務者研修認定ガイドライン』(厚生労働省)