主任ケアマネジャー(主任介護支援専門員)を目指す方に、主任ケアマネの役割や仕事内容、資格の取得方法、求められる能力について解説していきます。
主任ケアマネジャー(主任介護支援専門員)とは? ケアマネジャーとの違いや役割は?

主任ケアマネジャー(主任介護支援専門員)は、ケアマネジャー(以下、ケアマネ)の上位職として2006年に誕生しました。各地域で働くケアマネのまとめ役として、新人育成や指導、ケアプラン作成の助言などを行う役職です。「主任ケアマネ」省略して呼ばれることもあります。
主任ケアマネになるためには、主任介護支援専門員の資格を取得する必要があります。ケアマネとして5年以上の経験を積み、研修を受講することで主任介護支援専門員の資格を取得できます。
主任ケアマネジャーの受講者数は毎年4,500〜6,000人
厚生労働省の調査では、2017年時点で、全国で累計7万人ほどのケアマネが主任介護支援専門員講座を受講しており、受講者数は毎年4,500〜6,000人程度増えています(『居宅介護支援の管理者要件に係る経過措置及び地域区分について』厚生労働省)。
実際に主任ケアマネとして勤務しているのは約4万人で、その多くは居宅介護支援事業所に勤めています。
2019年度の法律改正によって居宅介護支援事業所の管理者は主任ケアマネの資格を持っていることが必須になりました。現在は経過措置が取られ、猶予されていますが、2027年以降は、各事業所に少なくとも1人は主任ケアマネがいるということになります。
主任ケアマネジャーの勤務場所
主任ケアマネの勤務する場所は主に下記の3つです。
主任ケアマネの配置が義務付けられているのは、居宅介護支援事業所と地域包括支援センターです。
地域包括支援センターの配置基準では「主任ケアマネジャーまたはそれに準ずる人」とされているため、主任介護支援専門員の資格を持っていなくても働ける場合があります。
もちろん、主任ケアマネの資格を持ちながらこれまで通り施設や居宅介護支援事業所でケアマネとして働き続ける方もいます。
主任ケアマネジャーの役割・仕事内容とは

居宅介護支援事業所に勤める主任ケアマネの役割や仕事内容を紹介します。
ここで紹介する業務は、ケアマネとしての通常業務に加えて行う業務であることに留意してください。
1.ケアマネジャーのサポート、育成、マネジメント
主任ケアマネは、ケアマネにとっての相談役のような存在です。ケアプラン作成のフォローを行ったり、まだ経験の浅いケアマネの業務を手伝ったりします。業務に関する相談にのることも多くあります。
地域包括支援センターからサポート役を依頼された場合には、自分が勤める事業所以外のケアマネと同行し、業務手順などを教える役割を担います。
また、地域のケアマネのスキルアップを図るための事例研究会に講師や運営として協力したり、勉強会などを企画することもあります。
2.地域における介護課題の解決
主任ケアマネには、地域全体の介護課題の解決を図ることが求められます。
地域によって課題が異なるため、一口に課題解決といってもなかなかイメージしづらいかもしれません。
例えば、以下のようなものが挙げられます。
- ケアマネジャーが感じている、地域ならではの課題をヒアリングし、それを解決するための勉強会や相談窓口を設置する
- 地域包括支援センターに寄せられる苦情を分析して、再発を防止するための取り組みを実施する
- ケアマネの退職者が多いので、ワークライフバランスを考慮した働き方を事業者の垣根を超えて話し合う
全体として言えることは、1事業所だけでは解決できない問題の解決を図ることが主任ケアマネジャーの役割だということです。
主任ケアマネジャー研修の受講要件、なるための方法は?
実際に主任ケアマネとして働くために必要な、研修の受講要件、研修内容、研修費用などを解説します。
主任ケアマネジャー研修(主任介護支援専門員研修)の受講要件

主任ケアマネになるための「主任介護支援専門員研修」を受講するためには、下記のいずれかの要件を満たす必要があります。
ただし、各都道府県の実情に応じて受講要件を設定することも認められているため、自治体によって要件が異なる場合もあります。お住まいの自治体のホームページで確認してみてください。
主任介護支援専門員研修とは
主任介護支援専門員研修とは、地域包括ケアシステムの構築に向けて地域課題を発見し、その解決に向けた人材の育成や社会資源の開発ができるケアマネの育成のための研修です。
合計70時間の研修となっており、講義と演習の両方が設けられています。
主任介護支援専門員研修の内容
主任介護支援専門員研修は7つの分野に分かれ、合計70時間の講義・演習が実施されます。

研修に参加するにあたっては、事前に事例検討集を準備して提出することが求められます。通常の業務をしながらの作成になるので大変な作業ですが、フォーマットなどは研修の運営者側から指定があるので、それに従って行います。
また、研修中を勤務時間と見なして給料が支払われる事業所とそうでない事業所があるので、事前に職場の管理者に確認しておきましょう。
主任介護支援専門員研修の費用・難易度
主任介護支援専門員研修の費用は各自治体で異なり、最も金額の低い秋田県で2万0,996円、最も金額の高い広島県で6万2,000円とかなりばらつきがあります。全国平均は4万3,960円です(『居宅介護支援の管理者要件に係る経過措置及び地域区分について』厚生労働省)。
資格取得支援制度がある事業所では、資格にかかる費用を払ってくれることもあります。
なお、難易度としては、試験がないのでそこまで高くはありません。研修のみで主任介護支援専門員資格を取得することができます。
主任介護支援専門員研修には更新研修がある
主任介護支援専門員の資格の有効期間は5年間です。そのため、5年ごとに更新研修を受ける必要があります。費用については、どの自治体も主任介護支援専門員研修と比べると約1万円程度低く設定されています。
更新研修にも試験は設けられていないため、難易度は高くありません。
主任ケアマネジャーに向いている人・求められる能力

ケアマネのなかでも主任ケアマネに向いている人はどんな人で、どんな能力が求められるのでしょうか。
1.専門的な知識と応用力がある
主任ケアマネはほかのケアマネにアドバイスをしたりサポートする立場です。そのため、介護保険やケアプランについての高い専門性と経験値が求められます。
また、事例研究会などを実施することも業務の一環としてあるので、難易度の高いケースでも適切なケアプランを作ることのできる応用力も必要です。
自分の経験を人に伝えたい、地域課題を解決するために中心となって動きたいという行動力がある人は主任ケアマネに向いているといえます。
2.高いコミュニケーション能力とマネジメント能力がある
主任ケアマネには高いコミュニケーション能力とマネジメント能力が求められます。
多くのケアマネを束ねて勉強会を実施したり、地域包括支援センターや行政と連携を取る場面が多くあるためです。
地域によって課題も異なるため、自ら積極的にさまざまな話し合いの場を設け、地域のケアマネを一丸にまとめていくことが求められます。
主任ケアマネジャーの給料や働き方の特徴

主任ケアマネの給料や働き方の特徴を紹介します。
ケアマネジャーのときよりも給料がアップしやすい
現場のケアマネに比べると、主任ケアマネの方が給料が高い傾向にあります。それは、居宅介護支援事業所の管理者であるケースが多いためです。管理職としての給与系形態になるので、その分、給料アップが望めます。
なお、「令和3年度介護労働実態調査」では、介護施設や訪問介護、居宅介護支援事業所の管理者の平均月給は37万0,087円となっています。
管理者でない場合も、多くの事業所では主任ケアマネの資格に対して5,000円〜1万5,000円程度の手当がつくことがあります。
専門性の高さが認められ、転職に有利
主任ケアマネの資格は、ケアマネのなかでも高いスキルや経験値があることの証明になります。そのため、転職時にはその専門性の高さが認められて有利に働くことが多いでしょう。
また、居宅介護支援事業所の管理者になるためには必須の資格のため、いま働いている居宅介護支援事業所の次の管理者候補だともいえます。
特に、積極的に新規の居宅介護支援事業所を開設している法人にとっては、主任ケアマネの資格保有者の需要は高いといえます。
主任ケアマネジャーならではの業務ができる
主任ケアマネになると、豊富なケアプラン作成の経験を活かして、ほかのケアマネの業務をサポートすることになります。1人で担当するよりも多くの利用者さんのケアプランに携わることができます。
また、勉強会などの学びの場の中心となって後進の育成を図ることができるので、今までと違ったやりがいに出合えるかもしれません。地域全体のことを視野に入れて活躍する、いわば地域包括ケアシステム構築の柱ともいえる主任ケアマネを、キャリアアップの選択肢として考えてみてはいかがでしょうか。
(参考)
『令和3年度介護労働実態調査 事業所における介護労働実態調査 結果報告書』(介護労働安定センター)
『居宅介護支援の管理者要件に係る経過措置及び地域区分について』(厚生労働省)
『主任介護支援専門員研修ガイドライン』(厚生労働省)