ケアマネジャーは介護職としてのキャリアのひとつの到達点ですが、仕事の大変さから「辞めたい」と感じる人もいるようです。ケアマネを辞めたい人によくある理由と、対処法を紹介します。

ケアマネジャーを辞めたい人によくある理由5つ

ケアマネジャー(以下、ケアマネ)は、介護職としての経験だけでなく高度な専門知識が求められる責任ある仕事です。その分、働いている人の苦労も大きいようです。

「ケアマネ辞めたい……」と感じる人のよくある理由を5つ紹介します。

【1】現場業務が多い

体験談:聞いていた以上に現場業務をやらされる(施設ケアマネ・3年目)

ケアマネージャーが本来のケアマネ業務と現場のヘルプに追われています。

年齢が上がるにつれて、夜勤や身体介助がしんどくなるんだろうな……と考えて資格を取得し、ケアマネとして働いています。

最近、介護スタッフの離職が重なったため、ヘルプで現場に入る機会がぐっと増えました。利用者さんのことを考えると現場をどんどん回さなければ、と思うのですが、本来のケアマネ業務が圧迫されてしまい、残業時間で行うしかなくなってきました

腰痛が再発しそうだし、ケアマネ業務に専念できないのであればここではもう働けないかも……と感じています。

身体的な負担を考えて、介護職からケアマネにキャリアアップする人も多いですが、現場と兼務しなければならず身体的な負担が減らないようであれば本末転倒です。

ただ、ケアマネになるためには介護職として5年以上の実務経験が必要なため、困ったときにはケアマネが「現場の即戦力」として捉えられることも少なくありません。

もっと現場の介護職の人員に余裕があるところで働けば、負担も軽減できるかもしれません。

【2】業務量が多い

体験談:業務量が多すぎて辞めたい(居宅ケアマネ・5年目)

ケアマネージャーが携帯電話、電話の対応に追われ、他の方から「手伝ってー」と言われて業務が多く、焦っています。

一人ひとりの利用者さんができるだけ長く快適にご自宅で過ごせるよう、総合的な視点からご支援していきたい……そんなふうに考えてケアマネになりました。

でも現実は、業務をこなすのでいっぱいいっぱいで、利用者さんの希望にきちんと寄り添えているのか不安になることがあります。とくにアセスメントシートなどの書類作成業務は未だに苦手で、新規の利用者さんや急なショートステイの案件が重なると「つらすぎてもう辞めたい……」と思うことがあります。

好きな仕事ではあるのですが、もう少し担当件数を減らして落ち着いて働けたらいいのに、と思う毎日です。

ケアマネの業務は多岐にわたっており、アセスメントシートやケアプランといった書類作成をはじめ、担当者会議に出席したり、多職種連携の調整、利用者さん宅への訪問、さらには緊急時の対応や、介護保険制度が改定した際の情報のアップデートも必要です。

事務処理能力やコミュニケーション能力、リーダーシップなど求められるスキルも多く、常に頑張り続けなければらないことにプレッシャーを感じて、「辞めたい」と思う人もいるのではないでしょうか。

また、ケアマネが少ない施設や事業所では、一人で40件以上の担当を任されるケースも。急に休みを取ることも難しく、体調面での不安から退職を考える人もいるようです。

【3】人間関係が大変

体験談:先輩ケアマネとの関係がうまくいかず辞めたい(施設ケアマネ・1年目)

若いケアマネージャーが先輩ケアマネージャーに「質問なんですけど...」と話しかけていますが、無視されています。

同じ施設で長く働いている先輩ケアマネとの関係で悩んでいて、時々「辞めたい」と思っています。

私は新人、先輩はベテランですが、わからないことがあって質問しても「自分で考えて」と言われてしまい、なかなか相談に乗ってもらえません

質問の仕方が悪いのかと思い、「こう考えているのですが、大丈夫でしょうか?」と確認する聞き方にしてみても、「勝手にすれば」と冷たくあしらわれてしまいます。

幸い、介護職の方たちが優しくしてくれるので今はなんとかやっていけているのですが、今後のことを考えると、転職という選択肢が頭に浮かびます。

ケアマネは利用者さんやご家族はもちろん、介護職、医師、看護師、リハビリ職、役所の担当者、サービス事業者など幅広い人たちと連携しながら働きます

異なる職種同士でも積極的に意見を交換し、利用者さんのためにベストを尽くすのが理想の姿ですが、立場が違っているがゆえになかなかうまくいかないこともあるでしょう。

また、居宅ではケアマネの数が少なく、人間関係の幅が狭くなってしまうことで「辞めたい」と感じる人もいるようです。

さらに、ケアマネは利用者さんの不満を受け止める立場にもなりがちなので、たとえば介護保険制度の改定など、ケアマネ1人の力ではどうすることもできないクレームの対応をしなければならないケースもあります。

そういったストレスから、「辞めたい」と感じても仕方ないのかもしれません。

【4】異動で担当地域が変わった

体験談:通勤が大変な地域に異動。戻れないなら辞めたい(居宅ケアマネ・10年目)

ケアマネージャーが自転車通勤から電車通勤の自宅から遠いエリアに異動になり、(異動で遠くなっちゃった)とため息をついています。

長年勤めている居宅介護事業所が法人にM&Aされたことに伴い、自宅から遠いエリアの事業所に異動になってしまいました。

元々の担当エリアは生活圏内で、10年以上働き続けていたこともあって愛着があります。利用者さんたちはもちろん、医師や外部業者の担当者さんとも顔見知りで、ここでずっと働けると思っていたのに……。

単純に通勤がきつくなったこともあり、1年以内に元の事業所に戻れないのであれば辞めようかな、と考えています。

複数の事業所を持つ法人では異動の可能性があるため、担当エリアや勤務施設が変わることで「もう辞めたい」と考える人もいるようです。

とくに居宅ケアマネの場合、担当エリアが変わることで関係者との人間関係を新たに構築したり、社会資源に関する情報を調べるなどの負担も増えてしまいます。

納得できない異動によって、退職を考えるのも仕方ないことなのかもしれません。

【5】給料が安い

体験談:介護職より安い給料が不満で辞めたい(施設ケアマネ・6年目)

介護職の人達が「給料あがったー!!」と言っています。それを見て、ケアマネージャーは給料が安いので、ガーンとショックを受けています。

施設ケアマネとして働いて6年になりますが、最近、同時期に入職した介護職の人よりも自分の方が給料が低いと知りました。

夜勤をしていないので夜勤手当がなく、介護職員処遇改善加算もつかないとはわかっていたのですが、実際に数字で知るとショックで……。ちなみに相手は夜勤をしているものの、自分は現場兼務で業務量が多いため、残業時間であれば自分の方が長いと思います。

将来が不安なので、今のところは辞めてもっと規模の大きい法人に転職することも考えています。

ケアマネの中には、仕事の大変さに給料が見合っていないと不満を持っている人も少なくないようです。

ケアマネの月給相場23万円~36万円に対し、介護職員は19万円~33万円(厚生労働省や介護労働安定センターのデータをもとにWe介護が相場を算出)。

相場で見るとケアマネのほうが高いですが、施設や経験年数、介護職員処遇改善加算の配分によっては介護職員の方が給料が高いところもあるようです。

せっかくたくさん勉強して難しい試験をクリアし、ケアマネになったのに、介護職として働くよりも給料が低いことを残念に感じ、辞めたい理由のひとつになっているようです。

ケアマネジャーが仕事を辞めたいときの対処法

仕事を辞めたい、と感じたときの対処法を紹介します。

転職をリアルに考えるなら

経験を積み、苦労して取得した資格で働いているケアマネ。辞めたいと思っても簡単に辞めてしまうのはもったいないですよね。

職場への不満を書き出してみよう

まずはどんなことを不満に思っているのか、書き出して整理してみましょう。

具体的に転職を考える場合は、その不満こそが、転職先を探す際の「希望条件」につながります

不満を書き出してみるだけでも、だいぶ頭の中が整理されて、次の行動につなげられるはずです。

たとえば……

  • 現場のヘルプで行う身体介助がきつい
  • 人間関係がつらい
  • 給料が安くてやってられない

など

転職か、残るかでメリット・デメリットを比較しよう

不満を整理してみた上で、転職するほうがよいのか、それとも今の職場でもう少し頑張ったほうがいいのか、メリット・デメリットを比較してみましょう。

たとえば転職するにしてもケアマネを続けるのか、それとも介護職に戻るのかなど、考える方向性はいろいろあります。

また、給料が問題なのであれば夜勤に入れる施設介護職などに戻る方法や、身体的なことが問題なら「ケアマネ業務以外はやらない方向で上司と相談する」という方法もありえます。

自分が今後、どんなふうに働いていきたいのかを踏まえて考えてみましょう。

キャリアアドバイザーから一言

ケアマネの転職は、少し時間がかかってしまう傾向にあります。

施設や居宅介護支援事業所の利用者さんの人数ごとに、必要なケアマネの人数が決められているため、「次の人が見つかるまでは待ってほしい」と引き止められることが多いからです。

転職を考えている場合は、引き継ぎのことも踏まえて、計画的に動くことが大切です。