「介護職ならサービス残業は当たり前」そんな風潮に疑問を感じたことはありませんか? まずは介護職の平均残業時間やサビ残の実態などを知り、職場の残業に関連したチェックポイントを把握しておきましょう。

介護職の平均残業時間は週に1.6時間

介護労働安定センターの調査によると、介護職の1週間の平均残業時間は1.6時間

ひと月=4週間と考えると、単純計算で月に6.4時間の残業をしていることになります。

施設形態別の平均残業時間は以下の通りです。

施設形態別に見てみると、いずれも1週間の平均残業時間は2時間以下、1ヵ月でも6~7時間程度です。

「案外、平均残業時間は少ないんだな」と感じた方もいるのではないでしょうか。

介護職はシフト勤務で仕事を引き継ぐことができるため、基本的にはあまり残業が長くならない職場が多いようです。

キャリアアドバイザーから一言

施設の採用担当者に平均的な残業時間を聞いてみると、「およそ1ヵ月に10時間程度」というところが多いようです。

上記の平均データは、現場で働いている介護職の方の実感値よりかは、少し短めになっているかもしれません。

介護職はサービス残業が当たり前って本当?

「平均データ上の残業時間が短いのは、データにカウントされないサービス残業をしているから」と考えている方もいるのではないでしょうか。

介護職のサービス残業の実態について解説します。

介護職の4人に1人がサービス残業をしている

介護職の4人に1人がサービス残業をしている/サービス残業がある!

※出典:全国労働組合総連合『介護労働実態調査』

全国労働組合総連合の調査によると、残業をしている介護職のうち4人に1人が「サービス残業(不払い残業)をしていると回答しています。

施設によっては「サービス残業が当たり前」という雰囲気で、時間外の残業代を請求できないこともあるようです。

また、1日に数十分の残業を「このくらいならいいか」と申請しなかった結果、積み重なっていって「本当はこれだけの残業代がもらえたはずなのに!」と後悔する人もいるようです。

キャリアアドバイザーから一言

サービス残業をさせることは、もちろん違法です。

施設や事業所が労働者に残業をさせた場合は、きちんと残業代を支払わなくてはなりません。

なお、労働基準法で定められている法定労働時間は、1日8時間、1週間で40時間。それを超えて働かせるためには、施設は職場の代表者と労使協定(36〈さぶろく〉協定)を結び、労働基準監督書に届ける必要があります。

サービス残業をしてしまいがちな業務

入所施設や在宅介護などにもよりますが、介護職がサービス残業をしてしまいがちな業務は以下の5つです。

サービス残業をしてしまいがちな業務/・情報収集、介護記録/ケアの準備・片付け/利用者さんのケア・ご家族などへの対応/ミーティング/委員会・研修

勤務前の情報収集は「前残業」扱いにならず、個人的な準備として残業代がつかないことも多いようです。

また、業務時間中は利用者さんの介助に手を取られて、介護記録はつい後回しになりがち。結局、サービス残業でまかなうことになってしまうことも多いようです。

ケアの準備・片付けや、利用者さんのケア・ご家族などへの対応なども、「この少しの時間くらいなら」と業務時間外でも対応してしまい、結果としてサービス残業になってしまいがちです。

また、ミーティングや委員会、研修は、業務との線引きが曖昧で、結局サービス残業になってしまうことがあるようです。

キャリアアドバイザーから一言

この他、長時間のサービス残業になりがちなのは、急に出勤できなくなったスタッフの穴埋めです。

とくに施設のリーダーや管理者、ケアマネなどに多いようですが、他にサポートに入ってもらえるスタッフが見つからなかった場合は、日勤からそのまま夜勤帯も働き続ける……といったこともあるようです。

これもサービス残業!サビ残によくある状況

自分では「サービス残業」だと気がついていなくても、実はサービス残業をしてしまっていることがあります。自分に当てはまらないか、確認してみてください。

業務開始前・業務終了後の仕事

業務開始前の情報収集や、着替えの時間も本来であれば「勤務時間」にカウントされます。

また、業務終了後に利用者さんのケアの後片付けや、ミーティングや委員会業務がある場合は、それも本来であれば勤務時間。

これらがなんとなくタイムカードを切る前後に行われている場合は、サービス残業に当たる可能性があり、残業代を請求できるかもしれません。

残業時間の端数切り捨て

施設や事業所によっては、勤務時間を1分単位でカウントせず、10分単位、30分単位などで管理していることがあります。

そのため、規定の時間に満たない残業時間は切り捨てられてしまい、結果的にサービス残業が発生していることがあります。

キャリアアドバイザーから一言

転職を考えている人は、サービス残業をさせられないためにも、勤務時間や残業代の管理方法についてしっかり確認しておきましょう。

「着替える前にタイムカードを切れるか」「何分単位で勤務時間を管理しているか」などがわかれば、サービス残業が発生しそうな環境なのか、逆に働いた分はしっかり還元しようと考えている職場なのかが判断できるはずです。

残業代の計算方法は?

「残業代、ちゃんともらえてないかも?」と不安な介護職の方に向けて、残業代の計算方法を紹介します。実際に自分は残業代がいくらもらえるのか、計算してみてください。

残業代っていくらぐらいもらえるの?

大まかな残業代は、以下の式で計算できます。

残業時間の計算方法/1時間あたりの賃金(時給)✕1.25(割増率)✕残業時間

「フルタイム勤務で、月給しかわからない」という人は、ひとまず[時給=月給÷168時間]と考えてみましょう。168時間とは、1日の所定労働時間を8時間、1ヵ月の勤務日数を21日とした場合の労働時間です。

たとえば月給20万円の人が1ヵ月で10時間残業した場合、残業代は1万4,880円となります。

計算式は以下の通りです。

時給[20万円÷168時間]×1.25×10時間

=1,190円×1.25×10時間

=1万4,880円

キャリアアドバイザーから一言

ちなみにそもそも「残業」とは、「週40時間、1日8時間」の法定労働時間を超えて働くことです。

残業に発生する賃金は、1時間あたりの賃金の25%増しが基本ですが、深夜残業の場合や休日出勤の場合など、残業の種類によって割増率が変わります。

未払い残業代は請求できる?

「払ってもらえなかった残業代を取り返したい」と考えている場合、残業代が支払われるはずだった給料日から3年までの間であれば、請求することは可能です。

そのためには、自分が残業した証拠を残しておく必要があります。たとえばタイムカードなどの勤怠記録や、仕事をしていたことを証明できるメールの送受信記録などが該当します。

自分で職場と交渉して残業代を請求するのが一番シンプルな方法ですが、職場が応じてくれないようであれば弁護士などの専門家に頼るのがよいでしょう。

うちの職場は大丈夫?残業関連のチェックポイント

自分の職場で残業に関連した問題がないか、チェックしてみましょう。

「このくらいの残業は仕方ないし……」と思っていても、実は残業のせいで働きにくい職場になってしまっているかもしれません。

残業関連のチェックポイント/・時間外労働の上限規制は守られている?/時間内に終わるように業務スケジュールが組まれている?/残業した分はしっかり支払われている?

時間外労働の上限規制は守られてる?

残業時間の上限は、原則として「月45時間・年360時間」と決められています。それが守られているかを確認してみましょう。

施設が従業員に「月45時間・年360時間」以上の残業をさせたり、そもそも職場の代表者と36協定を結ぶことなく残業させている場合は、労働基準法違反により罰則の対象となります。

時間内に終わるように業務スケジュールが組まれている?

そもそも業務時間内に終わるように仕事のスケジュールが組まれていなければ、残業をするのが当たり前の環境になってしまいます。

介護施設には人手不足のところも多いため、スケジュール調整が難しいこともあるかもしれませんが、施設側に人手不足を解消するための動きがあるかも含めて確認してみましょう。

残業した分はしっかり支払われている?

残業時間が正しく管理され、働いた分だけしっかりと残業代が支払われているかも振り返っておきましょう。

業務開始前・業務終了後の仕事が残業にカウントされなかったり、勤務時間のカウント上切り捨てられてしまう残業時間がある場合は、残業代が正確に支払われていない可能性が高いです。

キャリアアドバイザーから一言

今の職場での残業に不満がある場合は、転職を検討してみるのもよいでしょう。

もし子育てや介護をしていたり、他の仕事と兼業しているなど、どうしても残業ができない場合は、面接などで「残業をするのが難しい」ということを伝えて配慮してもらうようにしましょう。

もし自分でうまく伝える自信がないという人は、ぜひ転職サポートを頼ってみてください。