サービス提供責任者は、訪問介護事業所でサービスを運用するためのマネジメント業務を行う役職です。この記事では、サービス提供責任者の仕事内容や1日のスケジュールの流れ、必要な資格(要件)、大変なこと、やりがいなどを紹介していきます。

サービス提供責任者(サ責)とは

サービス提供責任者とは訪問介護事業所に配置される役職のことで、利用者さんとご家族に適した訪問介護計画を立てたり、良いサービスを提供できるようにヘルパーに指導・管理などを行います

次の項目で、サービス提供責任者の具体的な仕事内容について解説していきます。

サービス提供責任者の仕事内容

サービス提供責任者の仕事内容は、主に3つあります。

サービス提供責任者の仕事内容

1.訪問介護サービスを提供する土台作り

サービス提供責任者は、新規利用者に訪問介護サービスの提供を開始するまでの一連の業務を担います。

  1. 利用者さんとご家族のアセスメント
  2. サービス担当者会議に出席
  3. 訪問介護計画書を作成
  4. モニタリング

①利用者さんとご家族のアセスメント

ケアマネジャーから新規利用者の訪問介護サービスについて依頼を受けたら、サービス提供責任者はケアマネジャーやかかりつけ医から情報収集を行い、利用者さんやご家族の状況を踏まえてどんなサービスが最適なのかを検討します。

②サービス担当者会議に出席

ケアマネジャーが作成したケアプランの原案をもとに、サービス担当者会議が開催されます。サービス提供責任者のほかに、必要に応じてヘルパー、訪問看護師、理学療法士、福祉用具専門相談員、かかりつけ医なども出席します。

③訪問介護計画書を作成

サービス提供責任者会議でケアプランの内容が確定したら、サービス提供責任者は訪問介護計画書を作成します

訪問介護計画書とは、訪問介護の長期・短期目標や、担当するヘルパーの氏名、訪問する曜日や所要時間などを記載するものです。この訪問介護計画書を作成し、利用者さんやご家族に同意を得ることができたら訪問介護サービスがスタートします。

④モニタリング

訪問介護計画書はケアプランと同様、サービスを継続していくなかで利用者さんの状態に応じて修正・変更します。

常に最適なサービスを利用者さんに提供できるよう、ケアマネジャーと連携しながら利用者さんをモニタリングするのもサービス提供責任者の仕事です。

2.ヘルパー業務

サービス提供責任者は、ヘルパーとしての業務も併せて行います。複数の利用者さんを担当しながら、ヘルパーが急にお休みになったときに、代理として担当していない利用者さんに訪問することも多いようです

参考までに、サービス提供責任者が担当する利用者さんの人数をみていきましょう。三菱総合研究所の2015年の調査によると、「21~40人」が40.0%、「11~20人」が 18.5%、「1~10人」が16.3%と続き、平均は22.2 人でした。

このことからも、サービス提供責任者としての業務だけでなく、ヘルパー業務もしっかりこなしていることがわかります。

3.サービス提供のための管理業務

サービス提供責任者は、サービス利用日時の変更、介護報酬の請求、集金、緊急時対応、クレーム対応など、訪問介護サービスを運用するために必要な管理業務を行います。

そのほかにも、事業所に在籍するヘルパーの労務管理も大切な業務です。

利用者さんの担当ヘルパーを誰にするか、訪問先の立地や利用者さんとの相性などを踏まえて決定します。それから、ヘルパーの勤務表を作成し、ヘルパーが初めて利用者さんのご自宅に向かうときには、同行訪問をします。

また、ヘルパーのスキルアップのために研修を実施したり、ヘルパーが抱える悩みに助言をすることでサービスの質を向上させるように努めます。

サービス提供責任者の1日の流れ

サービス提供責任者の1日の仕事の流れをみてきましょう。

サービス提供責任者の仕事の1日の流れ

事業所で事務作業を行う以外にも、利用者さんのご自宅でヘルパー業務を行ったり、会議に出席したりと、1日のなかでも場所を移動することが多いようです。

そのうえ、緊急時対応などの差し込みの仕事も入ってくることがあるため、臨機応変な対応が求められます。

ケアマネジャーとの違い

ケアマネジャーとサービス提供責任者の業務内容の違いについてみていきましょう。

ケアマネジャーは訪問介護に限らず、利用者さんが必要とするすべての介護サービスを提供するための調整役です。一方、サービス提供責任者は、介護サービスのなかでも訪問介護を提供するための調整役です。

ケアマネジャー

ケアマネジャーは、利用者さんのケアプラン(介護サービス計画書)を作成するのが主な業務です。

利用者さんが活用する介護サービスは、訪問介護や訪問看護、デイサービス、介護用品のレンタルなど多岐に渡ります。そのためケアマネジャーは、必要に応じて複数の介護サービス事業所と連携を取って、必要なサービスを提供できるように調整します。

サービス提供責任者

サービス提供責任者は、ケアプランに訪問介護が組み込まれていた場合に、訪問介護サービスを円滑に提供できるように調整するのが主な業務です。

ケアプランをもとに、どのヘルパーが何曜日の何時に訪問するのかなどの詳細を決め、訪問介護計画書を作成します。

ケアマネジャーとサービス提供責任者は、適切な訪問介護サービスを提供できるように常に連携しています。

実際に、訪問介護サービスを提供する流れをみてみましょう。

このように、サービス提供責任者とケアマネジャーは、サービスを提供開始前から開始後まで、しっかり連携を取っていることがわかります。

サービス提供責任者になる方法(必要な資格)

サービス提供責任者は資格ではなく、訪問介護事業所に配置される役職の1つです。サービス提供責任者になるには、下記のいずれかの資格を取得している必要があります

  • 介護福祉士
  • 介護福祉士実務者研修
  • ヘルパー1級(旧)

なお、2018年の1月に資格要件が改定され、初任者研修(旧ヘルパー2級)ではサービス提供責任者として働けないことになりました。

また、訪問介護事業所の多くは、介護福祉士の資格がある方をサービス提供責任者として配置しています。

それは、実務経験が5年以下の実務者研修修了者、ヘルパー1級修了者よりも、介護福祉士の資格がある方のほうが事業所が加算を受けやすくなるからです。

サービス提供責任者を目指す方は、介護福祉士を取得しておくことを検討しても良いでしょう。

サービス提供責任者として働くには

訪問介護事業所には、サービス提供責任者の配置が義務づけられています

そのため、訪問介護事業所でサービス提供責任者が不足している場合、資格要件を満たしているヘルパーに「サービス提供責任者をやりませんか」といった打診があるケースも少なくありません。

一方で、資格は持っているのに、勤め先の訪問介護事業所でなかなかサービス提供責任者のポジションが空かない……という理由から、別の訪問介護事業所に転職する方もいます。

具体的なサービス提供責任者の配置基準は以下の通りです。

利用者の数(直近3ヵ月) サービス提供責任者の配置
40人以下 常勤で1人以上
41人~80人 常勤で2人以上
81人~120人 常勤で2人以上

上記の図からもわかるように、何人のサービス提供責任者を配置しなければならないのかは、利用者さんの数によって異なります。

直近3ヵ月の利用者さんの平均人数が40名増えるごとに、配置すべき人数は増えていきます。

ただし、下記3つの要件を満たしていれば、利用者さん50人に対してサービス提供責任者は1人でOKという基準も設けられています。

①常勤のサービス提供責任者を3名以上配置している
②サービス提供責任者の業務に主として従事する者を1人以上配置している
③サービス提供責任者が行う業務が効率的に行われている場合

サービス提供責任者の配置基準について

サービス提供責任者の給料

気になるサービス提供責任者の給料について詳しく見ていきましょう

※令和3年度介護従事者処遇状況等調査、令和3年度介護労働実態調査、令和2年賃金構造基本統計調査、We介護転職の求人情報などをもとに編集部にて算出しています。

サービス提供責任者の平均年収

サービス提供責任者の年収相場
※経験年数や保有資格、雇用形態、地域などによって異なります

平均的な年収相場は、約330万円~480万円になります。

ヘルパーを取りまとめるリーダー的な立ち位置であることから、給料相場は高い傾向です。

具体的には、ヘルパーが約220万円~410万円、ケアマネジャーが約340万円~510万円となりますので、キャリアアップを考えるときの目安にしてみてくださいね。

それでは、サービス提供責任者2年目の方の給与のモデルケースをみていきましょう。

サービス提供責任者の月給モデルケース(給料)

このモデルケースでは、サービス提供責任者2年目で、「総支給額」が30万1,000円、手取りにあたる「差し引き支給額」が24万9,000円となっています。

介護福祉士などの資格手当のほかに、サービス提供責任者としての職種に手当がつくこともあります。

サービス提供責任者と事業所の管理者を兼任する事業所の場合、給与がよりアップする傾向です。

サービス提供責任者って大変なの?

「キャリアアップにサービス提供責任者を考えているけど、なんだか大変そう」と不安に感じているヘルパーもいるのではないでしょうか。

サービス提供責任者が大変だと感じる点は、主に「業務量が多い」「人間関係に疲れる」の2つです。

1.業務量が多い

サービス提供責任者は、事業所によって任されている業務の内容が異なります。そのため、事業所によっては業務量が多く、苦労しているサービス提供責任者も少なくありません。

特に業務量が多いのは、サービス提供責任者が事業所の管理職と兼務している事業所です。こういった職場では、事業所の収支の管理や、人材の確保や人事業務なども行うことが求められるため、サービス提供責任者の業務量は多くなります。

また、人手不足の事業所では、シフトが埋めるためにサービス提供責任者としての業務以外のヘルパー業務が増えてしまうケースも。

業務量が多すぎる場合、ほかのサービス提供責任者や管理職に相談することによって業務を再分配してもらったり、効率をあげるための方法を一緒に考えてもらうようにしましょう。

2.人間関係に疲れる

サービス提供責任者の大変なこと。クレームのイラスト

サービス提供責任者は、訪問介護サービスを提供するためにさまざまな人をつなぐ役割を担います。そのため、利用者さんやご家族からのクレーム対応をしたり、ヘルパーの指導がうまくいかない場合など、人間関係に疲れてしまうケースも多いようです。

利用者さんやご家族のなかには、介護保険の範囲を超えた要望をしたり、何度もクレームを入れる方もいます。そういったときの対処に骨が折れて、疲れてしまうサービス提供責任者も少なくありません。

また、ヘルパーが指示・指導に従ってくれず、ケアマネジャーを通じて利用者さんから苦情がくるという場合もあります。こういった場合、ケアマネジャーとヘルパーの間に挟まれるジレンマに陥ってしまうことがあります。

サービス提供責任者は、ヘルパーのまとめ役として厳しいことを言わなければならないこともあるので、孤立する立場にもなりやすいです。困りごとは出てくるものですが、日頃から事業所の内外でしっかりと信頼関係を築くコミュニケーションを心がけましょう

サービス提供責任者のやりがい

サービス提供責任者のやりがいは、「頼りにされること」「チームで取り組めること」です。

頼りにされること

サービス提供責任者は、ヘルパーが手際よく仕事を行えるようにサポートしたり、緊急時に駆けつけて対応をする役割であることから、ヘルパーにとって非常に頼りになる存在です。

また、サービス提供責任者が利用者さんの変化やニーズをしっかり把握し、ヘルパーにしっかり共有できれば、利用者さんは安心して訪問介護サービスを受けることができます。

利用者さんやヘルパーさんへの働きかけ次第でサービスの質を向上させることができるため、利用者さんからの感謝の言葉がやりがいになるというサービス提供責任者も少なくありません。

チームで取り組めること

ほかのサービス提供責任者やヘルパー、ケアマネジャーなとみんなで協力して良いサービスを作り上げていく点にやりがいを感じるサービス提供責任者もたくさんいます。

チーム連携で取り組むことから、喜びも共有できることも大きなやりがいと言えるでしょう。

サービス提供責任者に向いている人

訪問介護サービスのキーパーソンとなるサービス提供責任者には、どんな人が向いているのでしょうか?

サービス提供責任者に向いている人

コミュニケーションを取るのが好き

サービス提供責任者は、利用者さんやケアマネジャー、ヘルパー、ほかの介護サービス事業者など、常にたくさんの人とコミュニケーションを取りながら仕事を進めます

そのため、コミュニケーションが好きな人、積極的に他者にアプローチできる人は、サービス提供責任者に向いているでしょう。

マネジメントスキルを身につけたい

訪問介護サービスの品質管理やヘルパーの労務管理など、さまざまな管理業務を担うサービス提供責任者は、マネジメント経験がある方にとってスキルを発揮するチャンスです。

また、これからマネジメントスキルを身につけていきたい方にとっても、サービス提供責任者の業務はやりがいがある仕事だといえるでしょう。

サービス提供責任者は未経験採用の求人が少なく、経験者が歓迎されるので、自分の市場価値をアップさせることにもつながります。経験できる機会がある方は、せっかくなのでチャレンジしてみるのも良いでしょう。

ケアマネジャーを目指したい

サービス提供責任者は、ケアマネジャーと密に連携しながら利用者さんをサポートするポジションです。

そのため、サービス提供責任者を経験しておくことでケアマネジャーやほかの介護サービス事業者と人脈を作ることができますし、いざケアマネジャーとなったときに役立つ知識を身につけることができるでしょう。

まとめ

サービス提供責任者は、ここまで紹介してきたとおり訪問介護サービスを提供するキーパーソンです。サービス提供をするために関係者をつなぐ役割を担う分、大変ですがやりがいも大きな仕事です。

サービス提供責任者の事業所の配置人数は決められているため、現職でサービス提供責任者になりたくても機会が回ってこない方、いきなりキャリアアップとして薦められる方など、チャンスの有無はタイミング次第というケースも多くあります。

もしサービス提供責任者に興味を持った場合、現職の事業所の上司に相談をしてみたり、転職も視野に入れて検討するとよいでしょう。

参考)
訪問介護におけるサービス提供責任者のあり方に関する調査研究事業』(三菱総合研究所)
令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果』(厚生労働省)
令和3年度介護労働実態調査 介護労働者の就業実態と就業意識調査結果報告書』(公益財団法人介護労働安定センター)
令和2年賃金構造基本統計調査による職種別平均賃金(時給換算)』(厚生労働省)