利用者さんの口腔ケアは、汚れを綺麗にするだけでなく、味覚を保ったり病気を予防するためにも必要なケアになります。今回の記事では、口腔ケアを行うステップ1~6について解説していきます。
前回の記事では、口腔ケアの事前準備としてステップ1~3の(道具・同意を得る・身体の角度調整)を解説していますので、ご参考にしてください。
ステップ1 口腔内を観察する
口のなかの観察するポイントはこちらです。

- 歯の状態
- 虫歯、歯の揺れはないか(グラグラしている歯)、欠損がないか、取れそうな差し歯はないか
- 乾燥の程度
- 口唇、口角、口腔内が乾燥していないか
- 口臭・出血
- 口臭や出血がないか
- 歯垢、歯石
- 歯はどのような状態か、汚れはないか
- 義歯の有無や不具合
- 義歯があれば、不具合がないか
- 歯肉の状態(炎症、腫脹)
- 腫瘍や炎症が起こって腫れたり、赤くなっていないか、傷はないか
- 舌の状態(色、汚れ)・開口状態など
- 乾燥、舌苔がないか、口がどこまで開くのか
ステップ2 清掃する前に保湿する
口腔内が乾燥していると、汚れが口腔内にこびりついてしまう場合があるため、水分や保湿剤を含ませたスポンジブラシやガーゼで口腔内を湿らせます。

このとき、スポンジブラシやガーゼは水を含んだらよく絞ってから口に入れてください。絞らず口に入れてしまうと、水が流れ出ることによって誤嚥してしまうことがあるので注意しましょう。このように口腔内の粘膜を刺激することで、唾液分泌を促す効果もあります。
唾液の分泌量が減る原因
口内の細菌は、唾液の自浄作用によって繁殖が抑えられています。しかし、下記が原因で、唾液の分泌量は減ってしまうことがあります。
ステップ3 舌などの粘膜を清掃する
粘膜ケアでは、頬の内側、上顎、舌などの部分をケアしていきます。
粘膜にこびりついている汚れは、湿潤させることで剥がれやすくなるので、乾燥している状態のまま無理にこすったり、剥がしたりしないようにしましょう。
口腔内は粘膜に覆われている敏感な部位です。特に口腔内の乾燥がひどい方は、粘膜が少しの刺激で出血を起こしやすくなっています。そのため、粘膜に優しいスポンジブラシを使用し、粘膜の汚れを取り除きます。
また、奥に入れ過ぎてしまうと嘔吐反射(口腔内に異物を入れられて吐き気を催すこと)を誘発させてしまうので、無理のない範囲で行いましょう。
舌のケアには、専用の舌ブラシやスポンジブラシで行います。舌の表面にある舌苔には、食べかすや細菌などが混じっているので口臭の原因にもなります。

舌のケアに歯ブラシを使用する方が多く見られますが、舌が傷ついたり、出血したりすることでさらに細菌を発生させてしまう恐れがあるので注意しましょう。
もし舌の乾燥が見られた場合、ケア後に保湿剤を塗布し乾燥を防ぎましょう。
スポンジブラシを使用する場合は、水や薬液などを含ませ、水分をしっかり切るよう注意しましょう。
ステップ4 歯の清掃する
歯磨きをするときには、汚れやすい部位を中心にケアを実施しましょう。

汚れやすい部位を確認しよう
汚れやすい部位は下記のとおりです。
歯ブラシの持ち方
歯ブラシを使用して磨くときはペンを持つように持ちます。この持ち方は余計な力が入らないので、歯や歯肉を傷つける心配がありません。
奥歯の磨き方
奥歯は磨きにくく、汚れが除去しにくい部位です。歯ブラシが届きにくい一番奥にある歯を磨くときには、歯ブラシの先端部分を使って磨きましょう。

頬側を磨くときには、口を大きく開けるのではなく、すこし口を閉じると磨きやすくなります。また、舌側は、歯面と並行になるように歯ブラシを当てて磨きます。
歯のブラッシング方法
ブラッシングの方法には、スクラッピング法、バス法、フォーンズ法、ローリング法の4つの方法があります。

まだ口腔ケアに慣れていない方は、毛先を使うスクラッピング法がおすすめです。歯の外側は歯ブラシの毛先を直角に当てて前後に細かく小刻みに磨いていきます。この方法はブラッシング効果が高く、汚れを除去しやすいといわれています。
フォーンズ法は歯面に対して歯ブラシの毛先を垂直に当てて、円を描くようにクルクルと移動しながら磨きます。細かな動作が困難な方に向いています。しかし歯周ポケットの部分まで行き届いていないので、仕上げ磨きもしくはバス法を併用しながら行います。
バス法は歯垢、歯石になりやすい歯周ポケットの部分を磨く方法です。歯ブラシは歯面に対して45°の角度で当てて細かく振動させるように磨きます。
ローリング法は歯ブラシの脇を歯面と並行になるようにあてて、そのまま歯の先端に向かってクルッと回転させ歯垢を除去します。マッサージ効果が高く歯肉の弱い人に適しています。
ステップ5 口腔内を洗浄する
ブラッシングや粘膜のケアの後にうがいを行い、口腔内の汚れを洗い流します。
その際、顔を上にあげてしまうと誤嚥する恐れがあるので、頭を前傾させるようにして少なめの水でブクブクうがいをするように促します。
ベッド上で行うときはガーグルベースンを使用します。下唇の部分を隙間がないように当てて、静かに吐き出してもらいます。
ステップ6 最後に保湿ケアをする
口腔内の乾燥を防ぐためにケア後に保湿剤を使用して口腔粘膜に薄く擦り込むようにして塗っていきます。
保湿剤を塗り過ぎると、汚れや誤嚥の原因につながります。
また、口腔内の乾燥が強い方は、保湿剤がかさぶたのような状態になってしまうことがあるので、新たに塗り直す場合には古い保湿剤を除去してから塗ります。
入れ歯の付け外しや洗浄方法、口腔内のケアについてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてみてください。
著者/ 中澤真弥
監修/飯田良平
イラスト/アライヨウコ
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