寝たきりの方の口腔ケアの方法 | 誤嚥を防ぐための注意点を解説

寝たきりの方は、口腔機能や免疫力などが低下しやすくなるため、日々の口腔ケアを適切に実施することによって誤嚥や感染症を予防することが重要になります。今回は寝たきりの方に行う口腔ケアの方法について詳しく解説します。

寝たきりの方の姿勢を調整する

口腔ケアを安全に行うためにも、まずは利用者さんの状態に合わせて体位を整えます。口腔ケアを実施すると、汚れや唾液が出て誤嚥しやすくなるため、誤嚥を予防しやすい姿勢でケアを行うようにします。

口腔ケアは、座位の姿勢が最も推奨されています。しかし、下記のような事情により、座位になるのが難しい方もいます。

  • 脊椎・背骨に異常があり座位の保持が難しい
  • 体の筋力の低下により座位の保持が難しい
  • 座位になると血圧が下がってしまう

このような事情がある場合、姿勢が安定する位置まで少しずつベッドの背を倒していきます。重要なのは、できるだけ体を起こしている状態のほうがよいということです。

口腔ケアを行うとき、口腔内を観察しやすくするため、介助者が必要以上にベッドの背を倒してしまうケースがあります。

しかし、口腔ケアを仰臥位やそれに近い姿勢で実施するのは、誤嚥などのリスクを高めてしまうため推奨されていません。

ベッドの背を倒すのは、姿勢が安定するところで留めるようにしましょう。

利用者さんの顎が上がると誤嚥しやすい姿勢になるため、ベッドの背を倒したあとは、枕などで顎を引いた状態になるようにします。また、起こした体がずり落ちないように、クッションを使って足先や膝を支えましょう。

寝たきりの方の口腔ケアの注意点

口腔内を観察する、保湿する、歯を磨く、歯磨き剤や汚れをふき取るときに、それぞれ注意するポイントをまとめました。

口腔内を観察するときの注意点

歯磨きをする前に、口の中が痛くないか、義歯がぐらぐらと動いていないか、入れ歯を外したときに食べ物がくっついていないかなどを確認しましょう。

入れ歯に食べ物がくっついている場合、口腔内の筋力が低下していることが考えられます。口腔ケアの実施時、入れ歯は外して綺麗に洗浄するようにしましょう。

保湿するときの注意点

歯磨きの前には口唇や口腔内を湿潤させます。

とくに寝たきりの方は口腔内が乾燥していることが多く、ひび割れや出血、痛みの原因となります。湿潤させることによって、粘膜に固まっている汚れが除去しやすくなります。

その場合、スポンジブラシやガーゼなどを使って口腔内の汚れを一緒に除去しながら湿らします。スポンジブラシ、ガーゼは水に浸したあと、十分に絞ります。水分を多く含んだままの状態だと誤嚥につながる恐れがあります。

歯を磨くときの注意点

歯がある方の場合は、基本的に歯ブラシでブラッシングを行います。

寝たきりの方の場合、歯磨き剤は利用者さんの希望や必要に応じて少量にします。量が多いと泡立ってしまい、口腔内を観察しづらくなり、歯磨き剤が残らないようすすぎ(ふき取り)を何度も行う必要があります。

歯ブラシは鉛筆を持つようにして軽く握ります。歯を磨く順番を決めながら行うと、磨き残しを防げます。

歯は一本ずつ磨きますが、歯だけではなく歯と歯肉の間もマッサージするように磨きましょう。

寝たきりの方は口腔乾燥から歯肉や粘膜の損傷が起こる場合があるので、口腔内の状態によって歯ブラシのかたさを変える必要があります。

ふき取るときの注意点

寝たきりの方は誤嚥リスクが高いので、口腔内を水で湿らせて、固く絞ったガーゼでふき取ります。その場合、奥から手前に向かって拭い取るようにします。歯だけではなく、口腔粘膜や舌も一緒にふき取りましょう。

寝たきりの方は、特に口腔機能の低下が見られるため、誤嚥を起こしやすい状態です。唾液やケアによって排出される汚れなどを誤嚥しないように注意しましょう。

口腔ケアの手順としては、こちらの記事『【歯科医監修】口腔ケアの手順 | イラストでわかりやすく解説』もぜひ参考にしてください。

著者/中澤真弥
監修者/菊谷武
イラスト/アライヨウコ

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