認知症の方に口腔ケアを拒否されてしまい、困っていませんか？当記事では、認知症の方に口腔ケアをする目的や、拒否されたときの対応方法などを解説していきます。
認知症になると口腔ケアが難しくなる理由
認知症になると、下記のさまざまな理由から歯磨きや口腔ケアを実施するのが難しくなります。
①自分で歯磨きできなくなる
②口腔ケアを理解できなくなる
③痛みなどを伝えられない
１．自分で歯磨きできなくなる
認知症の方は、順序立てながら物事を進めていくことが難しくなる傾向があります（この状態を実行機能障害と言います）。
歯磨きには、歯ブラシを握る、歯磨き粉のフタを開け閉めする、歯を磨く、うがいをする…など、磨き終わるまでに多くの工程があります。認知症になると、それらの工程を一人でこなすのが難しくなるケースがあります。
ご自身で歯磨きするのを介護者がサポートする場合には、隣で一緒に歯磨きをする、もしくは次の動作を説明していくなどの工夫が必要でしょう。
２．口腔ケアを理解できなくなる
認知症になると、「歯磨きをする」という行為そのものを理解できなかったり、歯ブラシがどんなものかを認識できなくなったりすることがあります。
口はご本人にとって非常に敏感な部位です。そのため、口腔ケアが理解できなくなった状態で口元に触れられる口腔ケアに、恐怖を感じる方も少なくありません。
３．痛みなどを伝えられない
入れ歯によって歯肉が傷ついていたり、口内炎があったりするといった口腔内のトラブルがあっても、認知症の症状があるとうまく伝えることができないケースもあります。そのため、虫歯などの発見が遅れる可能性があります。
また、口腔内に痛みがある場合、口腔ケアを実施しようとすると強く拒否してしまう認知症の方もいるため、口腔ケアを実施するのが困難になることもあります。
認知症の方の口腔ケアの目的
認知症の方はセルフケアをする力が徐々に低下していくため、根気よく現状を維持していくことが大切です。
口腔ケアを実施できないことが続くと、口腔内が不潔の状態が続き、それがやがて虫歯や歯周病の悪化などにつながる恐れがあります。
また、こうした汚れた唾液を誤嚥してしまうことで誤嚥性肺炎にもなるケースもあります。
口腔内のトラブルを予防するためにも、できる限り口腔ケアを実施することが大切です。
前述したとおり、認知症がある方は、口腔内に痛みや違和感などがあっても上手く伝えることができない場合があります。
それを周囲が気づかないまま放置してしまうと、利用者さんの食欲が低下したり、興奮になったりすることがあります。
日々、口腔内を観察することが異常の早期発見につながり、重症化を予防することができます。そのため、日々の観察を継続し、口腔の健康を維持していきましょう。
口腔ケアを拒否されたときの対応方法
ここからは、認知症の方に口腔ケアを拒否されてしまったときの対応方法について解説します。
１．ご本人の好きな会話から始めてみよう
口腔ケアを実施する際、いきなり口腔ケアについて説明するのではなく、相手の好きな会話から始めてみるとよいでしょう。事前によい雰囲気を作って、それから「次は歯磨きをしてみましょうか」と口腔ケアを促してみましょう。
２．説明は進める度に行おう
口腔ケアを実施するとき、一度に多くの情報を伝えてしまうと、ご本人を混乱させてしまうことがあります。そのため、一つずつ行動を見守り、その度に説明をしながら進めるようにしましょう。
３．歯磨きの動作を混じえて説明しよう
口頭の説明だけではなく、歯ブラシを見せながら歯磨きの動作をするなど、歯磨きの動作を連想できるような仕草も織り交ぜてみましょう。
４．ときには時間を空けたり、日を改めよう
日によっては、どうしてもご本人に受け入れられないこともあります。その場合は、時間を空けてみたり、翌日に実施してみるなど、いったん改めましょう。
長期的に、諦めずに何度でも口腔ケアを実施できるように声掛けをしていくことが大切です。
５．声掛けを工夫しよう
利用者さんが口を開いてくれないときは、無理やり行うのではなく、声掛けをしてみましょう。
例えば、「10秒だけ頑張りましょう」と伝えて、実際に数えながら、受け入れる様子をうかがいつつ進めるようにしましょう。
著者／中澤真弥
監修者／菊谷武
イラスト／アライヨウコ
