ヒヤリハットの原因分析は「ケース検討会議」で行おう! 事故の予防に効果的な会議です|事故防止編(第13回)

ヒヤリハットの原因分析は「ケース検討会議」で行おう! 事故の予防に効果的な会議です | 事故防止編(第13回)

ヒヤリハットを使って効率的な事故防止活動を行う方法として、事故事例検討会をヒヤリハットの段階で行う「ケース検討会議」を紹介します。その効果は必見です!

「ケース検討会議」は、事故事例検討会のヒヤリハット版

ここまで、ヒヤリハット活動を行ううえで注意すべき点を整理してきました。ヒヤリハットシートの書き方や活用の仕方のイメージが摑めてきたのではないでしょうか(第9回第10回第11回第12回)。

ここからは、ヒヤリハット活動をさらに効率的な事故防止につなげるために行う「ケース検討会議」について紹介します。

利用者の骨折などの重大事故が起こった場合、多くの施設ではその事故についての反省会を行っているはずです。私たちは、こうした「すでに起こってしまった事故」を振り返って再発防止につなげる会議を「事故事例検討会」と呼んでいます。このような本格的な振り返りを、ヒヤリハットの段階で行うのが「ケース検討会議」です。

【ケース検討会議とは】「事故事例検討会」のような本格的な振り返りを、ヒヤリハットの段階で行う。月に1度、職場ごとに行う。

ヒヤリハットシートは、細かいものまで入れると莫大な数になります。その一枚一枚に対して 「原因は」「再発防止策は」と会議を行うわけにはいきません。ですから、「ケース検討会議を開くにふさわしいヒヤリハット事例」を選んで行います

ケース検討会議の課題シートはどうやって選ぶ?

ケース検討会議を開いて内容を深く検討するには、事故防止効果が高い事例を選びます

まずは「これが事故につながったら、施設に賠償責任が発生するであろう事例」をいくつか選ぶことがポイントです。賠償責任が発生するであろう事例とは、施設の過失が大きいうえに、正しい対策を講じれば防げるはずの事故のことを指します。

過失の大きい事故をある程度絞ることができたら、その中から「利用者に対する損害の大きさ」や「発生頻度」を見て課題シートを決定します。下の図を参考に、優先順位をつけるといいでしょう。

【課題シートを選ぶ優先順位を知る】発生頻度と損害の大きさいの2軸で判断。A:頻繁に起こり損害も大きい。B:頻繁では無いが損害は大きい。C:頻繁だが損害は小さい。D:あまり起こらず損害も小さい。課題シートにする優先順位はもちろんA→B→C→Dの順番。頻繁に起こりうる事例で、実際に起こったら利用者の命に関わるような危険をはらむヒヤリハットには、最優先で取り組むようにしましょう。

数あるヒヤリハットシートの中から、代表として深く考察する課題シートなので、現場の職員の意識が高まり理解が深まるような、適切なものを選ぶよう心がけましょう。

ケース検討会議の流れを説明

【ケース検討会の流れ】課題シートを選ぶ→原因を究明する→再発防止策を考える→事故防止策をマニュアルにまとめる

課題シートを選んだら、次はそのヒヤリハットの原因究明です。さまざまな角度から、今回のヒヤリハットが起こってしまった原因について考えます。

原因が究明できたら、今度は再発防止策の検討です。それぞれの事故原因に対して、どうしたら再発を防ぐことができるのかを広い視点で考えます。

最後が、事故防止対策のマニュアル化です。

ケース検討会議で理解が深まった事故防止対策については、共有化するためにしっかりとマニュアルにまとめておきましょう。

著者/山田滋
監修/三好春樹、下山名月
編集協力/東田勉
イラスト/松本剛

※本連載は『完全図解 介護リスクマネジメント 事故防止編』(講談社)の内容より一部を抜粋して掲載しています

書籍紹介

完全図解 介護リスクマネジメント 事故防止編

介護リスクマネジメント 事故防止編

出版社: 講談社

山田滋(著)、三好春樹(監修)、下山名月(監修)、東田勉(編集協力)
「事故ゼロ」を目標設定にするのではなく、「プロとして防ぐべき事故」をなくす対策を! 介護リスクマネジメントのプロである筆者が、実際の事例をもとに、正しい事故防止活動を紹介する介護職必読の一冊です。

→Amazonで購入

  • 山田滋
    株式会社安全な介護 代表

    早稲田大学法学部卒業と同時に現あいおいニッセイ同和損害保険入社。支店勤務の後2000年4月より介護事業者のリスクマネジメント企画立案に携わる。2006年7月よりインターリスク総研主席コンサルタント、2013年5月末あいおいニッセイ同和損保を退社。2014年4月より現職。

    ホームページ |株式会社安全な介護 公式サイト

    山田滋のプロフィール

  • 三好春樹
    生活とリハビリ研究所 代表

    1974年から特別養護老人ホームに生活指導員として勤務後、九州リハビリテーション大学校卒業。ふたたび特別養護老人ホームで理学療法士としてリハビリの現場に復帰。年間150回を超える講演、実技指導で絶大な支持を得ている。

    Facebook | 三好春樹
    ホームページ | 生活とリハビリ研究所

    三好春樹のプロフィール

  • 下山名月
    生活とリハビリ研究所 研究員/安全介護☆実技講座 講師

    老人病院、民間デイサービス「生活リハビリクラブ」を経て、現在は「安全な介護☆実技講座」のメイン講師を務める他、講演、介護講座、施設の介護アドバイザーなどで全国を忙しく飛び回る。普通に食事、普通に排泄、普通に入浴と、“当たり前”の生活を支える「自立支援の介護」を提唱し、人間学に基づく精度の高い理論と方法は「介護シーン」を大きく変えている。

    ホームページ|安全な介護☆事務局通信

    下山名月のプロフィール

  • 東田勉

    1952年鹿児島市生まれ。國學院大學文学部国語学科卒業。コピーライターとして制作会社数社に勤務した後、フリーライターとなる。2005年から2007年まで介護雑誌『ほっとくる』(主婦の友社、現在は休刊)の編集を担当した。医療、福祉、介護分野の取材や執筆多数。

    ホームページ |フリーライターの憂鬱

    東田勉のプロフィール

フォローして最新情報を受け取ろう

We介護

介護に関わるみなさんに役立つ楽しめる様々な情報を発信しています。
よろしければフォローをお願いします。

介護リスクマネジメントの記事一覧