ヒヤリハットを使って効率的な事故防止活動を行う方法として、事故事例検討会をヒヤリハットの段階で行う「ケース検討会議」を紹介します。その効果は必見です!
「ケース検討会議」は、事故事例検討会のヒヤリハット版
ここまで、ヒヤリハット活動を行ううえで注意すべき点を整理してきました。ヒヤリハットシートの書き方や活用の仕方のイメージが摑めてきたのではないでしょうか(第9回、第10回、第11回、第12回)。
ここからは、ヒヤリハット活動をさらに効率的な事故防止につなげるために行う「ケース検討会議」について紹介します。
利用者の骨折などの重大事故が起こった場合、多くの施設ではその事故についての反省会を行っているはずです。私たちは、こうした「すでに起こってしまった事故」を振り返って再発防止につなげる会議を「事故事例検討会」と呼んでいます。このような本格的な振り返りを、ヒヤリハットの段階で行うのが「ケース検討会議」です。
ヒヤリハットシートは、細かいものまで入れると莫大な数になります。その一枚一枚に対して 「原因は」「再発防止策は」と会議を行うわけにはいきません。ですから、「ケース検討会議を開くにふさわしいヒヤリハット事例」を選んで行います。
ケース検討会議の課題シートはどうやって選ぶ?
ケース検討会議を開いて内容を深く検討するには、事故防止効果が高い事例を選びます。
まずは「これが事故につながったら、施設に賠償責任が発生するであろう事例」をいくつか選ぶことがポイントです。賠償責任が発生するであろう事例とは、施設の過失が大きいうえに、正しい対策を講じれば防げるはずの事故のことを指します。
過失の大きい事故をある程度絞ることができたら、その中から「利用者に対する損害の大きさ」や「発生頻度」を見て課題シートを決定します。下の図を参考に、優先順位をつけるといいでしょう。
数あるヒヤリハットシートの中から、代表として深く考察する課題シートなので、現場の職員の意識が高まり理解が深まるような、適切なものを選ぶよう心がけましょう。
ケース検討会議の流れを説明
課題シートを選んだら、次はそのヒヤリハットの原因究明です。さまざまな角度から、今回のヒヤリハットが起こってしまった原因について考えます。
原因が究明できたら、今度は再発防止策の検討です。それぞれの事故原因に対して、どうしたら再発を防ぐことができるのかを広い視点で考えます。
最後が、事故防止対策のマニュアル化です。
ケース検討会議で理解が深まった事故防止対策については、共有化するためにしっかりとマニュアルにまとめておきましょう。
著者/山田滋
監修/三好春樹、下山名月
編集協力/東田勉
イラスト/松本剛
※本連載は『完全図解 介護リスクマネジメント 事故防止編』(講談社)の内容より一部を抜粋して掲載しています