【介護施設の感染症対策】外部からの感染、リスクが高い場面はどこ?|トラブル対策編(第87回)

【介護施設の感染症対策】外部からの感染で、リスクが高い場面はどこか | トラブル対策編(第87回)

外部からの感染で、見落としがちな危険度の高い場面とはどこでしょうか。利用者が施設外で感染する場合、施設外の感染者との接触する場合などケースごとに解説していきます。

利用者を外部の感染から守るには

何度もくり返していますが、大切なことは利用者の生活の自由を束縛せずに、感染症の脅威から守ることです。そのためには、外部との接触ルートは(食事、設備、職員の衛生管理に比べて)、比較的ゆるやかにして、生活上のリスクを甘受していく必要があります。

問題は、その意識を職員間で共有し、家族にも理解してもらうことです。家族がそれを理解して、感染症の流行期間中は自主的に面会を控えてくれるようになると、施設の感染症対策はスムーズになります。

施設の外部からの感染

職員からの感染を除き、施設の外部から感染する可能性がある場合とは、具体的にどんな場合でしょうか、「利用者が施設外で感染する」「施設外の感染者と接触する」という2つの観点から考えていきます。

【1】利用者が施設外で感染する

介護施設利用者が、感染症感染リスクの髙い病院の待合室にいるイラスト

病院の待合室

  • もっとも感染リスクが高い病院の待合室には長時間滞在しないよう、診療受付時に看護師に呼び出しをお願いして、車の中で待機する

外出や外泊

  • 「外出・外泊時の感染防止について」というお知らせを家族に渡す
  • 家族の手による「手洗い・うがいの励行」をお願いする
  • 人ごみや不潔な場所への出入りを避けるよう注意を促す
  • 家族自身にも健康管理に気を配ってもらい、体調が悪い人との接触を避けるようお願いする
  • 食事にはできる限り、生ものや貝類を避けてもらう

【2】施設外の感染者との接触

介護施設利用者が感染症にかかるタイミング。施設に出入りする業者などから感染する可能性もあります

家族や知人の面会

  • あくまでも家族の自主的な節制を促し、強制しない

利用者が接触する外部の関係者

  • ボランティア、居室の清掃係、マッサージ、理美容など直接利用者と接触する可能性

ショートステイ利用者が感染源のケース

  • ショートステイ利用予定の家族には感染症の兆候を伝え、もし感染の可能性があれば利用を控えてもらうよう、事前に通知しておく

「感染症対策検討シート」を活用しよう

下の表は、どの対策を重点的に行えばよいかを導き出すための検討シートです。それぞれの施設で検討し、効率的な対策を行ってください。

介護施設の感染症対策検討シートの見本

「職員負担」「デメリット」「効果」「検討結果」の各項目への記入見本を参考にして、施設内で感染症対策の負担と効果を比較してみましょう。なお、「デメリット」とは、これらの対策で利用者が受ける不利益を言います。

上の「感染症対策検討シート」はこちらからダウンロードしていただけます。

ショートステイの当日キャンセルは要注意

外泊の予定がある利用者家族が、介護施設のショートステイを依頼している様子

ショートステイの利用日が近づくと、家族は利用者の不在時に外泊などの予定を組んでいることがあります。そのため、利用当日の体調不良によるキャンセルは、大きなトラブルになりがちです。利用開始時のバイタルチェックで感染の可能性があっても、受け入れるようにしましょう。

家族が感染症の兆候を察知し、自主的に利用を控えるようであれば、それに越したことはありません。

著者/山田滋
監修/三好春樹、下山名月
編集協力/東田勉
イラスト/松本剛

※本連載は『完全図解 介護リスクマネジメント トラブル対策編』(講談社/2018年2月14日発売)の内容より一部を抜粋して掲載しています

書籍紹介

完全図解 介護リスクマネジメント トラブル対策編

介護リスクマネジメント  トラブル対策編

出版社: 講談社

山田滋(著)、三好春樹(監修)、下山名月(監修)、東田勉(編集協力)
近年、介護事業者と家族のトラブルが増加しています。介護現場は、トラブルになりやすい事故が多いにもかかわらず、対策が未熟な施設が少なくありません。事故が起きた際の適切な対応手順をしっかり学べる一冊です。

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  • 山田滋
    株式会社安全な介護 代表

    早稲田大学法学部卒業と同時に現あいおいニッセイ同和損害保険入社。支店勤務の後2000年4月より介護事業者のリスクマネジメント企画立案に携わる。2006年7月よりインターリスク総研主席コンサルタント、2013年5月末あいおいニッセイ同和損保を退社。2014年4月より現職。

    ホームページ |株式会社安全な介護 公式サイト

    山田滋のプロフィール

  • 三好春樹
    生活とリハビリ研究所 代表

    1974年から特別養護老人ホームに生活指導員として勤務後、九州リハビリテーション大学校卒業。ふたたび特別養護老人ホームで理学療法士としてリハビリの現場に復帰。年間150回を超える講演、実技指導で絶大な支持を得ている。

    Facebook | 三好春樹
    ホームページ | 生活とリハビリ研究所

    三好春樹のプロフィール

  • 下山名月
    生活とリハビリ研究所 研究員/安全介護☆実技講座 講師

    老人病院、民間デイサービス「生活リハビリクラブ」を経て、現在は「安全な介護☆実技講座」のメイン講師を務める他、講演、介護講座、施設の介護アドバイザーなどで全国を忙しく飛び回る。普通に食事、普通に排泄、普通に入浴と、“当たり前”の生活を支える「自立支援の介護」を提唱し、人間学に基づく精度の高い理論と方法は「介護シーン」を大きく変えている。

    ホームページ|安全な介護☆事務局通信

    下山名月のプロフィール

  • 東田勉

    1952年鹿児島市生まれ。國學院大學文学部国語学科卒業。コピーライターとして制作会社数社に勤務した後、フリーライターとなる。2005年から2007年まで介護雑誌『ほっとくる』(主婦の友社、現在は休刊)の編集を担当した。医療、福祉、介護分野の取材や執筆多数。

    ホームページ |フリーライターの憂鬱

    東田勉のプロフィール

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