排泄介助を行った服で食事介助をしていませんか? ちょっと体調が悪くても、無理をして出勤していませんか? 職員の衛生管理には、正しい知識と、意識の高い行動が必要です。
職員の感染症はゼロにはできない
介護施設の職員は、家族も含めて通常の社会生活を送っています。そのため、感染症のリスクを完全にゼロにすることはできません。日常生活の中でできる限り感染リスクを減らし、感染したと思ったら出勤を控えましょう。職員が感染源となることだけは、何としても避けなければなりません。
「生活の場」である介護施設の感染症対策としてまず必要なことは、特定の感染者が出ていない平常時に標準的な衛生管理を行うことです。そのためには、職員の衛生行動の習慣化や研修などによる正しい知識の習得が欠かせません。
職員が正しい知識を持つと、利用者に不必要かつ過剰な生活制限をする必要がなくなります。
日常の社会生活における注意点は?
介護職員は日常生活において、次のようなポイントに気を付けてください。
流行期は行動に気をつける

インフルエンザなどが流行している時期は、居酒屋などの人ごみを避けたほうが賢明です。感染リスクの高い場所へは出向かないよう申し合わせましょう。
日常の衛生行動を徹底する

手洗いやうがいを徹底的に行いましょう。薬用石鹸は殺菌力が優れているわけではないので、ふつうの石鹸を使って「ていねいに汚れを洗い流す」という手洗いの基本を守ってください。
感染症への特別な配慮を

子どもの学校で感染症が流行したら、感染リスクが迫っています。体調が悪いのに無理して出勤しないよう、通常の有給休暇のほかに特別休暇を設けている施設もあります。
治癒後すぐに出勤しない

感染症は、症状が回復して本人が治癒したと思っても、感染の危険が残っている時期があります。感染症ごとに決められた感染期間は、出勤を控えなければなりません。
職員が感染源となることを防ぐ6つのポイント
職員が感染源になることを防ぐためにはどうすればいいのでしょうか。衛生管理を実施する際に、次の6つの基本を押さえておくといいでしょう。
職員にワクチン接種を行う

ワクチン接種によって予防が可能な一般的な感染症に対しては、職員のワクチン接種が望まれます。ただし、体質の問題などがあるため、強制すべきではありません。
感染症の知識を身につける

介護施設の職員は、平常時から介護施設で問題となる感染症の初期症状や感染経路などの知識を身につける必要があります。そうすることで、発症の兆候に素早く気づけます。
手洗いと消毒を使い分ける

1ケアごとの手洗いが理想的ですが、時間の制限などで難しいものです。連続したケアではアルコール系手指消毒剤を使い、ひと区切りついたら入念な手洗いをしましょう。
うがいによる感染症防止

インフルエンザは上気道から体内に侵入するため、うがいの効果が高いと言われます。水だけでも十分な効果があるので、職員は常にうがいをするよう心がけましょう。
排泄介助後は必ず消毒を

石鹸で入念に手洗いをしたあと、アルコール系消毒剤で手指を消毒しましょう。排泄の失敗でトイレが汚染したら、清掃後に次亜塩素酸ナトリウム溶液などでトイレを消毒します。
食事介助の服装と手洗い

排泄介助で汚染されたエプロンを着けたまま食事介助をしてはいけません。必ず食事介助用のきれいなエプロンに替え、入念な手洗いをしてから食事介助を行いましょう。
著者/山田滋
監修/三好春樹、下山名月
編集協力/東田勉
イラスト/松本剛
※本連載は『完全図解 介護リスクマネジメント トラブル対策編』(講談社/2018年2月14日発売)の内容より一部を抜粋して掲載しています