【二次感染の防止策①】1人目の感染者が出たときの対応方法|トラブル対策編(第88回)

【二次感染の防止策①】1人目の感染者が出たときの対応方法 | トラブル対策編(第88回)

介護施設の利用者に、感染症の疑いがある症状を発見した場合の対応方法をご紹介します。感染症の種類によっては届け出義務が発生するので、しっかり診断を受けましょう。

まず二次感染の防止に全力をあげる

介護職が感染症の疑いがある症状を発見したら、看護師への報告と手当ての要請を行い、バイタルチェックなどによって症状を把握します。そこから受診へと進みますが、同時に周囲の利用者への感染防止対策の開始が必要です。その際、利用者を不安にさせないように気をつけなければなりません

併せて、管理者への報告を行いましょう。確定診断が出るまでは、感染症が発生したものとして、全職員で情報を共有することが必要です。

感染症の診断が確定したら、保健所や自治体への報告と連携を行います(1~3類の場合)。 また家族への連絡、感染して潜伏期間にあると考えられる利用者の経過観察を始めます。

感染症の類型および届け出の必要がある感染症についてはこちらをご確認ください
厚生労働省『感染症法に基づく医師の届出のお願い』(外部リンク)

1人目の感染者が出たときの対応方法

施設での対応ポイントをまとめました。大切なのは「受診」「二次感染予防」「情報共有」「報告」です。

  • 感染の疑いがある場合は、速やかに受診すること
  • 発症した場合は主任の指示に従うのではなく、その日の出勤者がマニュアルに沿って対応し、二次感染を予防すること

  • 看護師はマニュアル以外に医師からの指示があった場合は介護職に伝え、対応方法を説明すること。介護職は説明を受けたあと、連絡簿に記入し周知徹底すること
  • 相談員は報告を受けたあと、施設長に報告。保健所・自治体に報告する(自治体へは事故報告書を記入して提出する)

保健所・自治体に報告する基準

  • 食中毒・感染症(「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」に定めるもののうち、原則として1・2・3類とする)

  • そのほか、結核の発生時にも報告する(結核については、サービス提供に関連して発生したと認められる場合は所管課に報告が必要)。

家族への報告について

介護施設の感染症対策で、医師から説明を聞いている介護職員と利用者の家族のイラスト

家族への報告は、感染症の疑いがある段階で連絡し、受診の付き添いを依頼します。看護師も必ず付き添い、施設職員と家族が医師からの説明を聞きましょう。

施設側もていねいに対応し、家族の理解を得るようにしてください。また、不安を抱かせないよう注意することも必要です。日々の状況報告も、完治するまで密に連絡することを心がけましょう。

「感染症対策マニュアル」に目を通しておこう

介護施設の感染症対策では、いざというときのためにふだんから感染症対策マニュアルをしっかり読んでおく必要がある

感染症が発生した際、職員が必要以上に過敏にならないよう、ふだんから感染症対策マニュアルに目を通しておくことが大切です。

職員が過敏になってしまうと、利用者の生活行為を必要以上に制限したり、精神的負担を増大させてしまったりする可能性が高く、生活の質を低下させてしまうおそれがあります。

著者/山田滋
監修/三好春樹、下山名月
編集協力/東田勉
イラスト/松本剛

※本連載は『完全図解 介護リスクマネジメント トラブル対策編』(講談社/2018年2月14日発売)の内容より一部を抜粋して掲載しています

書籍紹介

完全図解 介護リスクマネジメント トラブル対策編

介護リスクマネジメント  トラブル対策編

出版社: 講談社

山田滋(著)、三好春樹(監修)、下山名月(監修)、東田勉(編集協力)
近年、介護事業者と家族のトラブルが増加しています。介護現場は、トラブルになりやすい事故が多いにもかかわらず、対策が未熟な施設が少なくありません。事故が起きた際の適切な対応手順をしっかり学べる一冊です。

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  • 山田滋
    株式会社安全な介護 代表

    早稲田大学法学部卒業と同時に現あいおいニッセイ同和損害保険入社。支店勤務の後2000年4月より介護事業者のリスクマネジメント企画立案に携わる。2006年7月よりインターリスク総研主席コンサルタント、2013年5月末あいおいニッセイ同和損保を退社。2014年4月より現職。

    ホームページ |株式会社安全な介護 公式サイト

    山田滋のプロフィール

  • 三好春樹
    生活とリハビリ研究所 代表

    1974年から特別養護老人ホームに生活指導員として勤務後、九州リハビリテーション大学校卒業。ふたたび特別養護老人ホームで理学療法士としてリハビリの現場に復帰。年間150回を超える講演、実技指導で絶大な支持を得ている。

    Facebook | 三好春樹
    ホームページ | 生活とリハビリ研究所

    三好春樹のプロフィール

  • 下山名月
    生活とリハビリ研究所 研究員/安全介護☆実技講座 講師

    老人病院、民間デイサービス「生活リハビリクラブ」を経て、現在は「安全な介護☆実技講座」のメイン講師を務める他、講演、介護講座、施設の介護アドバイザーなどで全国を忙しく飛び回る。普通に食事、普通に排泄、普通に入浴と、“当たり前”の生活を支える「自立支援の介護」を提唱し、人間学に基づく精度の高い理論と方法は「介護シーン」を大きく変えている。

    ホームページ|安全な介護☆事務局通信

    下山名月のプロフィール

  • 東田勉

    1952年鹿児島市生まれ。國學院大學文学部国語学科卒業。コピーライターとして制作会社数社に勤務した後、フリーライターとなる。2005年から2007年まで介護雑誌『ほっとくる』(主婦の友社、現在は休刊)の編集を担当した。医療、福祉、介護分野の取材や執筆多数。

    ホームページ |フリーライターの憂鬱

    東田勉のプロフィール

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