【見本つき】ヒヤリハットシートの書き方を解説 「項目は少なめで、シンプルに」がコツです|事故防止編(第12回)

【見本つき】ヒヤリハットシートの書き方を解説「項目は少なめで、シンプルに」がコツです | 事故防止編(第12回)

今回は、ヒヤリハットシートの書き方について大切なポイントを解説します。安全対策につながる書き方を学んでいただき、再発防止の検討を行ってください!

「フリーで記入できる書式」にしよう

ヒヤリハットシートをうまく活用するためには、現場の職員がどんどん書いてくれるものにする必要があります

ですから、ヒヤリハットシートを作成する際は、「利用者の既往症」「身体機能」「認知症の有無」「利用している福祉用具」といった、調べないと書けないような項目は必要ありません。「調べないと書けないこと」とは、「必要ならあとで調べれば誰でもわかること」にすぎないからです。

項目はなるべく少なくシンプルにして、フリーで記入できるような書式にしましょう。発生状況がわかると原因が究明しやすくなるので、特に発生状況の記入欄は広くとって、図や絵なども描き込めるようにしておくといいでしょう

【ヒヤリハットシートの書式と記入方法の一例】項目:記入しやすい書式:記入方法の指導。発生日時:年、月、曜日、時、分:発生時間が不明な場合は、発生した日時を記入。発生場所:後で集計しやすいように、フロア名などの項目を作る:発生時点が得的できるように、詳しく記入する。「3階廊下」などの大雑把な記述は不可。利用者名:利用者名、性別、年齢:姓だけでなく名前も記入。報告者:氏名、職種:報告者のほかに確認者の項目を設ける施設もある。ショート・入所の別:集計に必要になる、フロアで区別できる場合は不要:わかりきったこととせず、必ず記入する。事故携帯:集計しやすいように、「転倒・転落・誤えん・衝突・その他」などの選択式にする:判断に迷う場合は「その他」に◯をして状況を記入。発生状況:枠を広くとって、フリー記入。場所の様子などを図示できるようなスペースを取っておく:発生状況がわからないときは、発見時の状況をできる限り詳しく記入。発見者は必ず関係職員などに聞き取りを行って記入すること。受傷部位:図示と文章で記入:発見時の状況でよい。応急処置:処置内容と、その後の治癒経過などをわけている場合もある:「誰の指示で、誰がどのような応急処置を行ったのか」と「誰がどのような手配を行ったのか」を明記。その後の対応:応急処置以降の対応を記入:治療の経過や、医師の意見などを記入しておく。連絡:ご家族への連絡状況:家族に対する連絡、対応の状況を「いつ・誰が・どのように」と記入。原因:「原因」とすると断定的なので「原因として考えられること」にする:報告者の主観でいいので必ず考えて記入させる。最低5つくらいは挙げてほしい。対応策:フリー記入:報告者が考え得る対応策を記入する。受傷部位、応急処置、その後の対応、連絡の項目は、ヒヤリハットと事故報告書を兼ねている場合に設けたい項目です。

ヒヤリハット活動を効果的に行う方法は?

ここからは、シートの記入を通じて、ヒヤリハット活動を効果的に行う具体的な方法について、2つの実例を挙げて説明していきます。

【実例1】「記入の仕方」を大切に

【安全対策】に繋がる書き方にしよう

ヒヤリハットシートをどのような書式にしようかと悩んでいる施設はたくさんあります。しかし、書式より書き方が大切です。

たとえば発生状況の欄に「Aさんが車イスから急に立ち上がろうとして転倒した」と書かれただけだと、あまりに大雑把すぎて原因と対策が見えてきません。

  • Aさんは立ち上がろうとする直前はどうだったか
  • 身体機能や認知症の程度は以前と比べてどうか
  • 職員は何をしていたか
  • 立ち上がりそうな兆候はあったか

……など、安全対策につながる書き方にしたいものです。

【実例2】ケース検討会議を”すぐに”やる

活動することでなく「事故を減らすこと」を目標に

ヒヤリハット活動が大きな成果を上げたある特養では、ヒヤリハットが発生してから2日以内にケース検討会議を行っています

ケース検討会議にはその利用者に関わる職員が最低3名集まって、「とりあえずの再発防止策の検討」を行うそうです。その再発防止策を一定期間試したあとで、あらためて全体で再発防止のケース検討会議を開きます。

この施設の素晴らしいところは、「ヒヤリハット活動を行うことが目的ではなく、再発防止策を講じて事故を減らすことが目的である」という姿勢が徹底しているところです。

著者/山田滋
監修/三好春樹、下山名月
編集協力/東田勉
イラスト/松本剛

※本連載は『完全図解 介護リスクマネジメント 事故防止編』(講談社)の内容より一部を抜粋して掲載しています

書籍紹介

完全図解 介護リスクマネジメント 事故防止編

介護リスクマネジメント 事故防止編

出版社: 講談社

山田滋(著)、三好春樹(監修)、下山名月(監修)、東田勉(編集協力)
「事故ゼロ」を目標設定にするのではなく、「プロとして防ぐべき事故」をなくす対策を! 介護リスクマネジメントのプロである筆者が、実際の事例をもとに、正しい事故防止活動を紹介する介護職必読の一冊です。

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  • 山田滋
    株式会社安全な介護 代表

    早稲田大学法学部卒業と同時に現あいおいニッセイ同和損害保険入社。支店勤務の後2000年4月より介護事業者のリスクマネジメント企画立案に携わる。2006年7月よりインターリスク総研主席コンサルタント、2013年5月末あいおいニッセイ同和損保を退社。2014年4月より現職。

    ホームページ |株式会社安全な介護 公式サイト

    山田滋のプロフィール

  • 三好春樹
    生活とリハビリ研究所 代表

    1974年から特別養護老人ホームに生活指導員として勤務後、九州リハビリテーション大学校卒業。ふたたび特別養護老人ホームで理学療法士としてリハビリの現場に復帰。年間150回を超える講演、実技指導で絶大な支持を得ている。

    Facebook | 三好春樹
    ホームページ | 生活とリハビリ研究所

    三好春樹のプロフィール

  • 下山名月
    生活とリハビリ研究所 研究員/安全介護☆実技講座 講師

    老人病院、民間デイサービス「生活リハビリクラブ」を経て、現在は「安全な介護☆実技講座」のメイン講師を務める他、講演、介護講座、施設の介護アドバイザーなどで全国を忙しく飛び回る。普通に食事、普通に排泄、普通に入浴と、“当たり前”の生活を支える「自立支援の介護」を提唱し、人間学に基づく精度の高い理論と方法は「介護シーン」を大きく変えている。

    ホームページ|安全な介護☆事務局通信

    下山名月のプロフィール

  • 東田勉

    1952年鹿児島市生まれ。國學院大學文学部国語学科卒業。コピーライターとして制作会社数社に勤務した後、フリーライターとなる。2005年から2007年まで介護雑誌『ほっとくる』(主婦の友社、現在は休刊)の編集を担当した。医療、福祉、介護分野の取材や執筆多数。

    ホームページ |フリーライターの憂鬱

    東田勉のプロフィール

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