ヒヤリハットシートで現場の情報共有ができた成功例を紹介|事故防止編(第11回)

ヒヤリハットシートで現場の情報共有ができた成功例を紹介 | 事故防止編(第11回)

大切な情報満載のヒヤリハットシート。現場の職員も閲覧できるようになっていますか? 管理者が判子を押して棚にしまいっぱなし……という施設の方は必読です!

ヒヤリハットシートは「管理者に提出して完了」ではいけない

せっかく現場の職員に書いてもらったヒヤリハットシート、その後どう扱っていますか。

よく聞くのは、職員が提出したヒヤリハットシートに管理者の閲覧印が押され、そのまま施設長のキャビネットの中に保管されているというケースです。これでは、現場の職員は「ヒヤリハットシートは、書いて提出したらOK」という認識になってしまい、その後の介護に活かすことができません

【一方通行型のヒヤリハットシートの流れ】現場:職員が記入→現場リーダーのチェック→各セクションの管理者→ゴール:施設長のキャビネットに保管。現場の職員は「ヒヤリハットシートは、書いて提出したらOK」という認識になってしまい、その後の介護に活かすことができない。

「うちはちゃんと施設長がコメントまで書き込んだうえで、コピーを現場リーダーに返してい ますよ」という施設もあります。

しかし、もしも現場リーダーが自分で読むだけで、そのまま棚の中にしまい込んでいたなら同じことです。

【しまい込み型のヒヤリハットシートの流れ】現場:職員が記入→現場リーダーのチェック→各セクションの管理者→施設長がコメントを記入→ゴール1:原本を施設長のキャビネットに保管。ゴール2:コピーを現場リーダーが保管。現場リーダーが自分で読んで棚の中にしまい込むなら「一方通行型」と同じことに。

秘訣は「現場共有型にして1日1回チェックする」

それでは、集めたヒヤリハットシートはどのように扱えばいいのでしょうか。ある施設では、現場リーダーが機転を利かせたことで素晴らしい事故防止効果を上げることに成功しました。 

そのリーダーは、戻ってきたヒヤリハットシートを棚にしまい込まず、綴ってヘルパーステーションに置いたのです。そして「職員は1日1回、必ず目を通すようにしてください」と指示を出しました。

【現場共有型のヒヤリハットシートの流れ】現場:職員が記入→現場リーダーのチェック→各セクションの管理者→施設長がコメントを記入→ゴール1:コピーを施設長のキャビネットに保管。ゴール2:原本を現場リーダーがヘルパーステーションに起き、職員に1日1回読むように指示する。大きな事故に結びつく原因を発見し、みんなが危機意識を持つことが可能に。

するとどうでしょう。
ほかの職員の書いたヒヤリハットシートには、「そういえば私もこんな経験があった」と気づける情報がたくさんありました。さらに、同じ利用者があちこちでヒヤリハットを起こしていたことも明らかになったのです。「この利用者に何も対策を立てずにいたら、大きな事故に結びつくだろう」と、みんなが危機意識を持つことができました

ヒヤリハットは、「現場共有型」にしたいものです。

著者/山田滋
監修/三好春樹、下山名月
編集協力/東田勉
イラスト/松本剛

※本連載は『完全図解 介護リスクマネジメント 事故防止編』(講談社)の内容より一部を抜粋して掲載しています

書籍紹介

完全図解 介護リスクマネジメント 事故防止編

介護リスクマネジメント 事故防止編

出版社: 講談社

山田滋(著)、三好春樹(監修)、下山名月(監修)、東田勉(編集協力)
「事故ゼロ」を目標設定にするのではなく、「プロとして防ぐべき事故」をなくす対策を! 介護リスクマネジメントのプロである筆者が、実際の事例をもとに、正しい事故防止活動を紹介する介護職必読の一冊です。

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  • 山田滋
    株式会社安全な介護 代表

    早稲田大学法学部卒業と同時に現あいおいニッセイ同和損害保険入社。支店勤務の後2000年4月より介護事業者のリスクマネジメント企画立案に携わる。2006年7月よりインターリスク総研主席コンサルタント、2013年5月末あいおいニッセイ同和損保を退社。2014年4月より現職。

    ホームページ |株式会社安全な介護 公式サイト

    山田滋のプロフィール

  • 三好春樹
    生活とリハビリ研究所 代表

    1974年から特別養護老人ホームに生活指導員として勤務後、九州リハビリテーション大学校卒業。ふたたび特別養護老人ホームで理学療法士としてリハビリの現場に復帰。年間150回を超える講演、実技指導で絶大な支持を得ている。

    Facebook | 三好春樹
    ホームページ | 生活とリハビリ研究所

    三好春樹のプロフィール

  • 下山名月
    生活とリハビリ研究所 研究員/安全介護☆実技講座 講師

    老人病院、民間デイサービス「生活リハビリクラブ」を経て、現在は「安全な介護☆実技講座」のメイン講師を務める他、講演、介護講座、施設の介護アドバイザーなどで全国を忙しく飛び回る。普通に食事、普通に排泄、普通に入浴と、“当たり前”の生活を支える「自立支援の介護」を提唱し、人間学に基づく精度の高い理論と方法は「介護シーン」を大きく変えている。

    ホームページ|安全な介護☆事務局通信

    下山名月のプロフィール

  • 東田勉

    1952年鹿児島市生まれ。國學院大學文学部国語学科卒業。コピーライターとして制作会社数社に勤務した後、フリーライターとなる。2005年から2007年まで介護雑誌『ほっとくる』(主婦の友社、現在は休刊)の編集を担当した。医療、福祉、介護分野の取材や執筆多数。

    ホームページ |フリーライターの憂鬱

    東田勉のプロフィール

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