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誤嚥性肺炎のサインとは?チェックシートで確認しよう|第3回「誤嚥性肺炎を防ぐ安心ごはん」

誤嚥性肺炎の予防には早めの気づきが肝心です。連載第3回は『誤嚥性肺炎を防ぐ安心ごはん』(女子栄養大学出版部)から、誤嚥しやすい人の特徴や、誤嚥性肺炎になりやすい人のサインをお伝えします。

むせだけでなく他のサインにも注意

誤嚥性肺炎を防ぐには、その原因となる摂食嚥下機能(食べる機能)の低下に早めに気づいて、対策を講じることが肝要です。

しかし、機能の低下は徐々に進むので、本人も周囲の人も気づきにくいものです。また、気づいたとしても、「たいしたことはない」と軽視してしまうこともよくあります。

そこで、摂食嚥下機能が低下してきた場合に見られやすい様子を図にまとめました高齢のかたご本人はもちろん、家族や介護スタッフなど周囲の人々もみんなで、日ごろから注意してみてください。

もしも、このチェックリストに当てはまる様子が継続して見られる場合は、食事の工夫や口腔ケアなどを心がけてみましょう。

むせやせき込みは誤嚥の防御反応

むせやせき込みを無理に抑えようとする人がいますが、逆に誤嚥するおそれがあるので気をつけましょう。

むせやせき込みは誤嚥を防ぐ防衛反応であり、しっかりできるのは誤嚥防衛機能がよく働いている証拠でもあります。

周囲の人も、むせやせき込みばかりを警戒するのではなく、上記のチェックリストに示したような全体の様子を見ることが大切です。

菊谷先生から一言

嚥下機能が落ちてくると、不顕性誤嚥といって、誤嚥をしていてもむせなどの症状が出ない場合もあります。夜寝ている間に唾液を誤嚥することもあり、その際に侵入した細菌によって肺炎を起こすこともあります。発見が遅れないよう、様子の変化に注意しましょう。

誤嚥性肺炎発症のサインにも気をつけて

誤嚥性肺炎をもし発症しても、発熱やせきなど肺炎の特徴的な症状があまり見られない場合もあります。以下のようないつもと違う様子があれば、早めに内科を受診してください。

気になる様子は専門医に相談を

むせやすいなど、気がかりな様子が複数ある場合や、症状が進んでいると感じられるような場合は、かかりつけの内科や歯科、耳鼻咽喉科などに相談することをおすすめします。

最近は、「摂食嚥下障害外来」を開設している医療機関も増えてきています。また、症状によっては、歯科診療所において口腔機能低下についての検査や指導を、保険適用で受けることができます。

こうした症状に加えて、下記の様子が見られる場合は、誤嚥性肺炎にかかるリスクも高いので、より注意が必要になります。

  • やせて栄養不良ぎみ
  • 体力がない
  • 虫歯や歯槽膿漏(しそうのうろう)など口の中に問題がある
  • 喫煙歴が長く(現在は禁煙中でも)呼吸器官が弱い
  • 認知機能の低下がある
  • パーキンソン病である
  • 筋肉や神経の病気がある

誤嚥しにくい栄養充実レシピ|とんぺい焼き

誤嚥しにくい栄養充実レシピとして、身近な材料で手軽に作れて食べやすい「とんぺい焼き」のレシピを掲載します

※ここで紹介している料理は、食べる機能の低下がまだ軽い、初期の人を対象としています。上記のチェックリストで気になる症状が複数ある場合は、専門医に診てもらい、どのような食事の形態が適切か、指導を受けてください

豚肉とキャベツを合わせて電子レンジ加熱するとしっとりします。卵で包み焼きにするとまろやかなうま味が加わり、栄養も豊かな一皿になります

エネルギー:336kcal
たんぱく質13.9g
食塩相当量1.4g

材料(1人分)

  • 豚ばら肉またはこま切れ肉……40g
  • キャベツ(せん切り市販品でも)……50g
  • 塩・こしょう……各少量
  • ……1個
  • 塩……少量
  • サラダ油……少量
  • A(マヨネーズ・お好み焼き用ソース・ 削りガツオ・青のり…各適量)

作り方

  1. 豚肉はせん切りにして塩、こしょうをふる。
  2. 耐熱皿にキャベツと豚肉を混ぜて広げ、ラップをかけて電子レンジ(600W)で約2分、肉に火が通るまで加熱する。
  3. ボールに卵を割り、ほぐして塩を混ぜる。
  4. フライパンに油を中火で熱し、卵液を流し入れてざっとかき混ぜ、下が少しかたまったら中央に②をこんもりとのせる。両側の卵をかぶせて形を整え、合わせ目を下にして器に盛り、Aをかける。

誤嚥性肺炎予防のためになにより大切なのは、毎日の食事を誤嚥しないように食べて、栄養を充分にとることです。噛みやすく、飲み込みやすいように工夫した食事作りを意識してみてくださいね。

監修/菊谷武
栄養・料理指導/尾関麻衣子、大場泉

※本連載は『誤嚥性肺炎を防ぐ安心ごはん(食事療法はじめの一歩シリーズ)』(女子栄養大学出版部/2021年3月発売)の内容より一部を抜粋して掲載しています。

書籍紹介

誤嚥性肺炎を防ぐ安心ごはん(食事療法はじめの一歩シリーズ)

出版社: 女子栄養大学出版部

菊谷武(監修)、尾関麻衣子、大場泉(栄養・料理指導)
毎年正月になると、もちなどの食べ物によって窒息死する高齢者は7000人前後にものぼります。
こうした食べ物による窒息も、食べる機能の低下が一因です。
年を重ねるとともに足腰が弱るといった「傾き」のなかで、食べる機能も衰えてきます。食べる機能の衰えとともに、食べ物や唾液を誤嚥し、窒息や誤嚥性肺炎を起こす危険が高くなります。
本書は、誤嚥性肺炎にならないように、生涯おいしく食べ続けるためにはどんな「工夫」をすればよいかをお教えします。

→Amazonで購入

  • 菊谷武

    takeshi-kikuta

    日本歯科大学大学院生命歯学研究科臨床口腔機能学教授。東京医科大学兼任教授、広島大学客員教授、岡山大学、北海道大学、日本大学松戸歯学部非常勤講師。1988年に日本歯科大学歯学部卒業後、2001年10月より日本歯科大学附属病院口腔介護・リハビリテーションセンターでセンター長を務める。同大学で2005年4月より助教授、2010年6月に大学院生命歯学研究科臨床口腔機能学教授、2012年1月東京医科大学兼任教授に就任。2012年10月から口腔リハビリテーション多摩クリニック院長。

    ホームページ|日本歯科大学 口腔リハビリテーション多摩クリニック
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    菊谷武のプロフィール

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