円背の方のポジショニング|背中が曲がる高齢者の介助方法

円背の方のポジショニング|背中が曲がる高齢者の介助方法

猫背のように背中がひどく曲がっている「円背」の高齢者の方は多くいます。当記事では、円背の方のポジショニングについて解説します。

円背とは

円背(えんぱい)とは、(姿勢を支える筋肉などが衰えることによって)背中が丸くなる状態のことをいいます。

背中が丸くなる円背姿勢のイラスト

【事例1】座位姿勢が悪いため円背を起こしている

利用者Aさんには円背があり、座位や立位のときもしっかり背を伸ばすことができない状態です。
座位のときには頭を上げにくいので、常に顔が下を向いた状態になっています。

椅子や車椅子が大きいと円背の原因になりうる

骨粗しょう症によって腰椎などの圧迫骨折をされた方の場合、円背が起こりやすい傾向があります。

そのような方が、自分の身体より大きい椅子や車椅子に座っていると、円背が起こる原因になるケースがあります。

【円背の方のNG姿勢】椅子に掛けているとき。椅子が大きすぎて隙間が空いている。奥に腰掛けて頭の重さでより円背になっている。

背もたれと背中に大きな隙間がある状態のまま、背もたれにもたれかかると、腰の部分だけ支えがない状態になります。これだと背中が丸まりやすくなり、円背が起こりやすくなります(図1)。

しかし、この隙間を埋めるために深く腰掛けると、頭の重さでかえって背中が丸まりやすくなってしまいます(図2)。

クッションなどを活用して背中を起こす

円背を少しでも改善するためには、自身の力で無理なく背が起こせるようにポジショニング(この場合は座位調整)をすることが大切です。

まず、足底をしっかり床(もしくは足乗せ台)に設置し、頭がなるべく垂直に近くなるように背中を後方にゆっくり倒していきます

しかし、このままでは腰と背もたれの部分に隙間ができるので、隙間に固めのクッションなどを入れて、腰が後ろへ倒れすぎないように支えます。

【円背の方の正しいポジショニング】頭ができるだけ垂直になるように後ろへゆっくり倒す。背もたれと腰の隙間にクッションかタオルを置く。つま先からかかとまでしっかり床につける。

このようにポジショニングすることで、背中の緊張を軽減し、上体を無理のない範囲で起こせるようになります。

また、しっかり頭が起こせるようになると、食事をするときに腕も使いやすくなります。

車椅子はモジュールタイプがおすすめ

車椅子を使用している方の場合、モジュールタイプという、背もたれの形状が調整できるタイプが適しています

モジュールタイプの車椅子では、背もたれの形状だけでなく、座面の高さや幅を調整することができます。

モジュールタイプの車椅子。背もたれの計上が調整できます。

このタイプの車椅子は、クッションを使用しなくても腰回りや背中をしっかり支えてくれます。

また、奥まで腰を入れられるようになるので、お尻に集中していた重さが太ももに分散でき、褥そうの予防やズレ落ちも防ぎやすくなります。また、左右の傾きも起きにくくなります。

しかし、立ち上がり介助を行うとき、お尻が奥に入っていると、とても立ち上がりにくくなります。そのため、浅く座る状態になるよう前へと促してから行うと、立ち上がり介助も楽に行えます。

円背のある方は腰痛を持っている場合も非常に多いので、どのような介助でもゆっくりと、可能なら自分から動いていただくのが良いでしょう。

【事例2】介助ベッドが円背を起こしている事例

利用者Bさんは自ら寝返りや起き上がりができず、ほとんどのADLにも介助が必要な状態です。褥そう予防のためにエアマットを導入しており、体位変換も2時間ごとに実施しています。Bさんに褥そうはありませんが、最近円背が目立ってきました。

円背の方に柔らかいマットレスはNG

褥そう予防や除圧のためにエアマットや柔らかいマットレスを使用すると、仰向けのときに円背の「く」の字の部分が沈み込んでしまい、さらに円背が進行しやすくなります。

皮膚が弱い・栄養状態が良くないといった方の場合は除いて、円背の部分がさらに沈み込むようなエアマットなどの使用を避けられると良いでしょう。通常のマットレスを使うときには、クッションなどを活用して褥そうを予防します。

柔らかいマットレスは除圧には効果はありますが、柔らかい分だけ安定性が低下します。そのため、筋肉の緊張が高まりやすく拘縮(関節の周囲が変化して関節が動かしにくくなる状態)も起きやすいのです。

ギャッチアップの圧抜きをしっかり行おう

利用者さんの頭部を起こすため、ギャッチアップ(ベッドのリクライニングを使って身体を起こすこと)を行うことがありますよね。

しかし、ギャッチアップを行う場合でも、除圧などに効果が高いマットレスなどを利用すると、円背の「く」の字の部分が通常のマットレスよりも大きく沈み込んでしまいます

通常のマットレスを使用する場合でも、褥そう予防のためにギャッチアップのときには圧抜きを行いますが、除圧効果の高いマットレスは沈み込みが大きくなるため、より一層の圧抜きの対応が必要になります。

【円背の方は圧抜きが重要】マルチグローブなどを使用する。腕を少しずつ利用者さんの肩から下へとずらしていく。

褥そう予防のための圧抜きはギャッチアップだけでなく、頭を下げるギャッチダウンのときにも行ってください。

30度以上のギャッチアップは負荷が大きい

介助ベッドのギャッチアップは、できる限り30度以上は上げないようにしてください。

試しに自分自身で一気に30度以上上げてみるとわかりますが、最後に圧抜きを行っても腰にかなりの負担がかかるのがわかります。

30度より角度を上げると、脊椎の前方(背中側ではなく腹側)にかなりの負荷がかかりますそのため、骨粗しょう症の既往のある高齢者はこれで圧迫骨折を起こすこともあると言われています。

どうしても30度以上ギャッチアップを行わなくてはならない場合は、大変だとは思いますが、15度程あげるたびに圧抜きを行うことで、脊椎への負担が軽減できます。

【事例3】福祉用具の使い方が悪く円背を引き起こしている場合

杖を使用して歩行していますが、最近円背がより強くなってきました。
杖の持ち方が通常の握り方でなく、さらに杖を持つ方の腕の肘の曲がりが、通常より曲がった状態で杖を突いて歩行しています。

杖や歩行器を使用するときの高さ

杖や歩行器を使用するときには、その高さを決める基準がいくつかあります。

  • 肘を曲げたときに30度になる高さ
  • 足の付け根(大腿骨大転子部)の高さ
  • 腕を降ろした時の手首の高さ

上記の中でも一番優先すべきなのは肘屈曲30度です。肘屈曲30度が最も床を突くときに肘関節の安定性が高まるからです。

杖や歩行器が高すぎて肘が30度より曲がった状態になると、肘の安定性が下がってしまうため、上半身を支えることが難しくなり、円背がある方はより円背が強くなる傾向があります。

円背の方はシルバーカーより歩行器がおすすめ

歩行する際によく使われる福祉用具に、シルバーカーがあります。

歩行器は一般的にキャスターが付いておらず、一回一回持ち上げて使います。一方で、シルバーカーは4つのキャスターが付いていますが、基本的に身体を支えるようにはできていません。

シルバーカーは前方に押して歩行を促すものです。そのため円背の方が握るグリップの高さが合っていないと、より円背を強くしてしまいます。

支えがなくては姿勢を保てないような方は歩行器の方を使い、シルバーカーは使わないようにしましょう。

また、シルバーカーの高さは、骨盤にある上前腸骨棘(へそより少し低く、大転子より上の位置あたり)が適切な高さの目安で、円背が強くなることを予防できます。

福祉用具の高さの調整は慎重に行おう

杖や歩行器を新品のときに調整する場合と、既に使用しているときの調整する場合とでは、ちょっとした違いがあります。

円背のある人に調整を行うとき、杖や歩行器を低くするとより円背を進めてしまのではないかと心配し、高めに調整してしまうことが多いようです。

そのため、私自身の経験では、再調整の場合は低くすることはあっても高くしたことはほとんどありません

肘屈曲30度に設定することで腕の支える力が発揮しやすくなり、利用者さん自身で身体を起こしやすくできるからです。

杖や歩行器の高さの調整は、高くても低くても効果は薄れてしまいます。もし行うときには、専門の方(福祉用具相談員など)に相談するか、適切な調整の知識を持ってから行うようにしましょう。

執筆・資料提供/田中義行
イラスト/アライヨウコ

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