事故再発防止対策シリーズのラスト第3回は「損害軽減策」をご紹介します。防ぎきれない事故は、せめて利用者の受ける損害を軽減したいものです
「事故が起きてもケガを防ぐ対策」が必要
事故を起こさずに未然に防ぐことができるなら、それがいちばんです。しかしどうしても防ぐことが難しい場合は、3つ目の再発防止策である「損害軽減策」を考えましょう。
次に挙げるのが、その代表例です。
たとえば、ベッドからの転落を見てみましょう。ひと昔前までは、ベッドからの転落を防ぐには「ベッドを柵で囲んで落ちないように」しました。現在では身体拘束に当たるので、柵で囲むことはできません。
そこで「なぜベッドから降りようとするのか」の原因究明を行う一方で、ベッドの高さを下げて転落したときの衝撃をやわらげるのです。このような「事故が起きてもケガを軽くする」対策を、「損害軽減策」と言います。
原因究明と防止対策は幅広く行いましょう
ここまでの流れを、ケース検討会議の事例で登場した利用者Bさん(第15回参照)の場合であらためて考えてみましょう。
もしも、再発防止策の知識がないままヒヤリハット活動をしていたら、Bさんのヒヤリハットの原因は介護職Cのミスということになっていたでしょう。再発防止策として「移乗のときは事故が起きやすいので、もっと注意して行う」と事故報告書に書かれたかもしれません。
しかし、ケース検討会議で原因究明をしたところ、「Bさんが服用している薬の量が多すぎた」「職員の介助方法に問題があった」「車イスの点検ができていなかった」など、たくさん考えられました。
再発防止策は、それに伴い「薬の量を再確認する」「正しい介助方法を研修する」「車イスの安全点検システムをつくる」「転落に備えてマットを敷く」など、多岐にわたって考えられるようになったはずです。
「未然防止策」「直前防止策」「損害軽減策」の3つをバランスよく取り入れて、事故再発防止対策を万全にしましょう。
著者/山田滋
監修/三好春樹、下山名月
編集協力/東田勉
イラスト/松本剛
※本連載は『完全図解 介護リスクマネジメント 事故防止編』(講談社)の内容より一部を抜粋して掲載しています