【介護現場での事故再発防止対策シリーズ】その3「損害軽減策」を解説|事故防止編(第19回

【介護現場での事故再発防止対策シリーズ】その3「損害軽減策」を解説 | 事故防止編(第19回)

事故再発防止対策シリーズのラスト第3回は「損害軽減策」をご紹介します。防ぎきれない事故は、せめて利用者の受ける損害を軽減したいものです

「事故が起きてもケガを防ぐ対策」が必要

事故を起こさずに未然に防ぐことができるなら、それがいちばんです。しかしどうしても防ぐことが難しい場合は、3つ目の再発防止策である「損害軽減策」を考えましょう。

次に挙げるのが、その代表例です。

【代表的な一般的な損害軽減策(一例)】べっどからの転落:転落しても怪我しないようベッドを低くする、転倒事故:転倒いsてもこっせつしないよう保護ベルトをつける。認知症の利用者の行方不明:無断外出になっても捜せるようGPSをつけてもらう。車イスからの転落:転落しても骨折しないよう床にマットを敷く

たとえば、ベッドからの転落を見てみましょう。ひと昔前までは、ベッドからの転落を防ぐには「ベッドを柵で囲んで落ちないように」しました。現在では身体拘束に当たるので、柵で囲むことはできません。

そこで「なぜベッドから降りようとするのか」の原因究明を行う一方で、ベッドの高さを下げて転落したときの衝撃をやわらげるのです。このような「事故が起きてもケガを軽くする」対策を、「損害軽減策」と言います

原因究明と防止対策は幅広く行いましょう

ここまでの流れを、ケース検討会議の事例で登場した利用者Bさん(第15回参照)の場合であらためて考えてみましょう。

もしも、再発防止策の知識がないままヒヤリハット活動をしていたら、Bさんのヒヤリハットの原因は介護職Cのミスということになっていたでしょう。再発防止策として「移乗のときは事故が起きやすいので、もっと注意して行う」と事故報告書に書かれたかもしれません。

しかし、ケース検討会議で原因究明をしたところ、「Bさんが服用している薬の量が多すぎた」「職員の介助方法に問題があった」「車イスの点検ができていなかった」など、たくさん考えられました。

再発防止策は、それに伴い「薬の量を再確認する」「正しい介助方法を研修する」「車イスの安全点検システムをつくる」「転落に備えてマットを敷く」など、多岐にわたって考えられるようになったはずです。

【3つの再発防止策「未然防止策」「直前防止策」「損害軽減策」をバランスよく】介護職C:適切な介助方。Bさん:服薬や体調がしっかりコントロールされていて、ふらつきがない。車イス:しっかり点検されており、利用者の体格にあった車イス。ベッドの下のマット:転落時の衝撃を吸収するマット

「未然防止策」「直前防止策」「損害軽減策」の3つをバランスよく取り入れて、事故再発防止対策を万全にしましょう。

著者/山田滋
監修/三好春樹、下山名月
編集協力/東田勉
イラスト/松本剛

※本連載は『完全図解 介護リスクマネジメント 事故防止編』(講談社)の内容より一部を抜粋して掲載しています

書籍紹介

完全図解 介護リスクマネジメント 事故防止編

介護リスクマネジメント 事故防止編

出版社: 講談社

山田滋(著)、三好春樹(監修)、下山名月(監修)、東田勉(編集協力)
「事故ゼロ」を目標設定にするのではなく、「プロとして防ぐべき事故」をなくす対策を! 介護リスクマネジメントのプロである筆者が、実際の事例をもとに、正しい事故防止活動を紹介する介護職必読の一冊です。

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  • 山田滋
    株式会社安全な介護 代表

    早稲田大学法学部卒業と同時に現あいおいニッセイ同和損害保険入社。支店勤務の後2000年4月より介護事業者のリスクマネジメント企画立案に携わる。2006年7月よりインターリスク総研主席コンサルタント、2013年5月末あいおいニッセイ同和損保を退社。2014年4月より現職。

    ホームページ |株式会社安全な介護 公式サイト

    山田滋のプロフィール

  • 三好春樹
    生活とリハビリ研究所 代表

    1974年から特別養護老人ホームに生活指導員として勤務後、九州リハビリテーション大学校卒業。ふたたび特別養護老人ホームで理学療法士としてリハビリの現場に復帰。年間150回を超える講演、実技指導で絶大な支持を得ている。

    Facebook | 三好春樹
    ホームページ | 生活とリハビリ研究所

    三好春樹のプロフィール

  • 下山名月
    生活とリハビリ研究所 研究員/安全介護☆実技講座 講師

    老人病院、民間デイサービス「生活リハビリクラブ」を経て、現在は「安全な介護☆実技講座」のメイン講師を務める他、講演、介護講座、施設の介護アドバイザーなどで全国を忙しく飛び回る。普通に食事、普通に排泄、普通に入浴と、“当たり前”の生活を支える「自立支援の介護」を提唱し、人間学に基づく精度の高い理論と方法は「介護シーン」を大きく変えている。

    ホームページ|安全な介護☆事務局通信

    下山名月のプロフィール

  • 東田勉

    1952年鹿児島市生まれ。國學院大學文学部国語学科卒業。コピーライターとして制作会社数社に勤務した後、フリーライターとなる。2005年から2007年まで介護雑誌『ほっとくる』(主婦の友社、現在は休刊)の編集を担当した。医療、福祉、介護分野の取材や執筆多数。

    ホームページ |フリーライターの憂鬱

    東田勉のプロフィール

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