事故が起こりそうなときに対策を講じる「直前防止策」。これはもっともポピュラーな対策ですが、実は、その効果は高くないのです。
つい頼りがちな直前防止策…でもデメリットも
まずはじめに、こちらをご覧ください。代表的な直前防止策を挙げました。
直前防止策とは、事故が起こりそうなときに回避しようとする対策です。根本原因は解決できていない状態で、事故が起こりそうになったら、その場その場で対処します。これは介護職にかかる負担が大きい割に事故防止効果が低いので、あまりおすすめできる対応策ではありません。
直前防止策は効果が低い方法ですが、実際は再発防止策として広く介護現場で取り入れられている手法です。具体的には「転倒しないように支える」「事故が起こらないように見守りを強化する」などがそれに当たります。ただでさえ人員不足で忙しい介護現場を、より一層大変にしてしまいがちです。
再発防止策としては「最後の手段」に
再発防止策は3種類あること(第17回「未然防止策を解説」参照)や、それぞれの有効性などの知識がないと、つい直前防止策にばかり頼ってしまいます。
「自分たちの手で事故を防ごう」と考える介護現場の努力は素晴らしいのですが、マンパワーにばかり頼る方法ではすぐに限界が来てしまうものです。
実際に転倒防止実験を行ったところ、見守りだけではほとんどの転倒事故を防げないことが実証されています。やはり事故を防ぐためには、事故の根本原因を絶つ未然防止策に力を入れたいものです。
それでも事故を防ぐことが難しい場合は、損害軽減策で、事故が起きてしまったとしても利用者を守れるように努力しましょう。
利用者の状態や現場の状況によって、どうしてもほかに対策がない場合のみ直前防止策を行うと決めておけばいいでしょう。つまり、直前防止策は最後の手段だと言えます。
著者/山田滋
監修/三好春樹、下山名月
編集協力/東田勉
イラスト/松本剛
※本連載は『完全図解 介護リスクマネジメント 事故防止編』(講談社)の内容より一部を抜粋して掲載しています