【介護現場での事故再発防止対策シリーズ】その2「直前防止策」を解説|事故防止編(第18回)

【介護現場での事故再発防止対策シリーズ】その2「直前防止策」を解説 | 事故防止編(第18回)

事故が起こりそうなときに対策を講じる「直前防止策」。これはもっともポピュラーな対策ですが、実は、その効果は高くないのです。

つい頼りがちな直前防止策…でもデメリットも

まずはじめに、こちらをご覧ください。代表的な直前防止策を挙げました。

【代表的な直前防止策(一例)】ベッドからの転落:見守りを欠かさないようヘルパーステーションの前にベッドを置く。転倒防止:点灯しないように見守りや付添をする。認知症の利用者の行方不明:施設から出ないように見守りを強化する。車イスからの転落:ずり落ちが多い利用者は頻繁に見守りを行う。

直前防止策とは、事故が起こりそうなときに回避しようとする対策です。根本原因は解決できていない状態で、事故が起こりそうになったら、その場その場で対処します。これは介護職にかかる負担が大きい割に事故防止効果が低いので、あまりおすすめできる対応策ではありません

直前防止策は効果が低い方法ですが、実際は再発防止策として広く介護現場で取り入れられている手法です。具体的には「転倒しないように支える」「事故が起こらないように見守りを強化する」などがそれに当たります。ただでさえ人員不足で忙しい介護現場を、より一層大変にしてしまいがちです。

再発防止策としては「最後の手段」に

再発防止策は3種類あること(第17回「未然防止策を解説」参照)や、それぞれの有効性などの知識がないと、つい直前防止策にばかり頼ってしまいます。

「自分たちの手で事故を防ごう」と考える介護現場の努力は素晴らしいのですが、マンパワーにばかり頼る方法ではすぐに限界が来てしまうものです。

直前防止策に頼っていると、職員の負担ばかりが増え、すぐに限界がきてしまう

実際に転倒防止実験を行ったところ、見守りだけではほとんどの転倒事故を防げないことが実証されています。やはり事故を防ぐためには、事故の根本原因を絶つ未然防止策に力を入れたいものです。

それでも事故を防ぐことが難しい場合は、損害軽減策で、事故が起きてしまったとしても利用者を守れるように努力しましょう。

利用者の状態や現場の状況によって、どうしてもほかに対策がない場合のみ直前防止策を行うと決めておけばいいでしょう。つまり、直前防止策は最後の手段だと言えます。

著者/山田滋
監修/三好春樹、下山名月
編集協力/東田勉
イラスト/松本剛

※本連載は『完全図解 介護リスクマネジメント 事故防止編』(講談社)の内容より一部を抜粋して掲載しています

書籍紹介

完全図解 介護リスクマネジメント 事故防止編

介護リスクマネジメント 事故防止編

出版社: 講談社

山田滋(著)、三好春樹(監修)、下山名月(監修)、東田勉(編集協力)
「事故ゼロ」を目標設定にするのではなく、「プロとして防ぐべき事故」をなくす対策を! 介護リスクマネジメントのプロである筆者が、実際の事例をもとに、正しい事故防止活動を紹介する介護職必読の一冊です。

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  • 山田滋
    株式会社安全な介護 代表

    早稲田大学法学部卒業と同時に現あいおいニッセイ同和損害保険入社。支店勤務の後2000年4月より介護事業者のリスクマネジメント企画立案に携わる。2006年7月よりインターリスク総研主席コンサルタント、2013年5月末あいおいニッセイ同和損保を退社。2014年4月より現職。

    ホームページ |株式会社安全な介護 公式サイト

    山田滋のプロフィール

  • 三好春樹
    生活とリハビリ研究所 代表

    1974年から特別養護老人ホームに生活指導員として勤務後、九州リハビリテーション大学校卒業。ふたたび特別養護老人ホームで理学療法士としてリハビリの現場に復帰。年間150回を超える講演、実技指導で絶大な支持を得ている。

    Facebook | 三好春樹
    ホームページ | 生活とリハビリ研究所

    三好春樹のプロフィール

  • 下山名月
    生活とリハビリ研究所 研究員/安全介護☆実技講座 講師

    老人病院、民間デイサービス「生活リハビリクラブ」を経て、現在は「安全な介護☆実技講座」のメイン講師を務める他、講演、介護講座、施設の介護アドバイザーなどで全国を忙しく飛び回る。普通に食事、普通に排泄、普通に入浴と、“当たり前”の生活を支える「自立支援の介護」を提唱し、人間学に基づく精度の高い理論と方法は「介護シーン」を大きく変えている。

    ホームページ|安全な介護☆事務局通信

    下山名月のプロフィール

  • 東田勉

    1952年鹿児島市生まれ。國學院大學文学部国語学科卒業。コピーライターとして制作会社数社に勤務した後、フリーライターとなる。2005年から2007年まで介護雑誌『ほっとくる』(主婦の友社、現在は休刊)の編集を担当した。医療、福祉、介護分野の取材や執筆多数。

    ホームページ |フリーライターの憂鬱

    東田勉のプロフィール

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