【介護現場での事故再発防止対策シリーズ】その1「未然防止策」を解説|事故防止編(第17回)

【介護現場での事故再発防止対策シリーズ】その1「未然防止策」を解説 | 事故防止編(第17回)

原因究明ができたら、それらを改善して段階的な再発防止策を立てましょう。シリーズその1は、成功すれば抜群の効果を得られる「未然防止策」を解説します。

再発防止策を時系列で3つに分ける

ヒヤリハットの原因究明でたくさん挙げた中に、真犯人がいくつかいるはずです。内容を検証して、可能性が高そうな原因を絞り込みましょう。

絞り込んだら、今度は対応策の検討です。原因一つひとつに対して、改善策を考えます。

効果的な再発防止策を立てるコツは、3種類の防止対策をバランスよく使い分けることです。対策は、時系列によって「未然防止策」「直前防止策」「損害軽減策」の3種類に分けられます

平常時に事故が起こらないように対策をとるのが「未然防止策」、事故直前に回避するのが「直前防止策」、事故時に被害を最小限に抑えようとするのが「損害軽減策」です。

分かりやすい説明図を作りましたのでご覧ください。

【3種類の再発防止策を使い分ける】平常時:根本的な原因を改善して、事故が起こらないようにする「未然防止策」。事故直前:事故が発生する直前に自己を阻止するために「直前防止策」。事故時:事故が起こったときにけがなどの被害を軽くするための「損害軽減策」。

この3つのうち、まずは「未然防止策」について詳しく紹介していきます。

未然防止策は成功すれば効果が高い

まず、未然防止策の代表例を挙げますので下図をご覧ください。

【代表的な未然防止策(例)】ベッドからの転落:ベッドから降りたくなる原因を究明し、改善する。転倒事故:ふらつきの原因を究明し、それを改善する。認知症の利用者の行方不明:なぜ施設から出たがるのか理由を探って改善する。【車イスからの転落】体格や身体機能に会った車イスに替える。

これを見るとわかるように、未然防止策とは「どうして事故につながるような行動や状況が起きてしまうのか」という根本原因を探り当て、それを改善するものです。

もしこれが成功すれば、そもそもの事故原因が消滅します。再発防止策の中で、もっとも効果的な対策と言えるでしょう。

具体的には、「転倒防止のためにふらつきの原因を調べ、睡眠薬の量を少し減らしたらふらつきがなくなった」などが未然防止策の成功例に当たります。しかし、実際にピタリと改善できる魔法のような方法を見つけるのは難しいものです。

このように未然防止策は発見が難しいものの、発見できた場合は抜群の事故防止効果を発揮します。そのため再発防止策を考えるときには未然防止策を最優先で考え、かつ、なるべく長期的な姿勢で取り組むようにするといいでしょう。

著者/山田滋
監修/三好春樹、下山名月
編集協力/東田勉
イラスト/松本剛

※本連載は『完全図解 介護リスクマネジメント 事故防止編』(講談社)の内容より一部を抜粋して掲載しています

書籍紹介

完全図解 介護リスクマネジメント 事故防止編

介護リスクマネジメント 事故防止編

出版社: 講談社

山田滋(著)、三好春樹(監修)、下山名月(監修)、東田勉(編集協力)
「事故ゼロ」を目標設定にするのではなく、「プロとして防ぐべき事故」をなくす対策を! 介護リスクマネジメントのプロである筆者が、実際の事例をもとに、正しい事故防止活動を紹介する介護職必読の一冊です。

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  • 山田滋
    株式会社安全な介護 代表

    早稲田大学法学部卒業と同時に現あいおいニッセイ同和損害保険入社。支店勤務の後2000年4月より介護事業者のリスクマネジメント企画立案に携わる。2006年7月よりインターリスク総研主席コンサルタント、2013年5月末あいおいニッセイ同和損保を退社。2014年4月より現職。

    ホームページ |株式会社安全な介護 公式サイト

    山田滋のプロフィール

  • 三好春樹
    生活とリハビリ研究所 代表

    1974年から特別養護老人ホームに生活指導員として勤務後、九州リハビリテーション大学校卒業。ふたたび特別養護老人ホームで理学療法士としてリハビリの現場に復帰。年間150回を超える講演、実技指導で絶大な支持を得ている。

    Facebook | 三好春樹
    ホームページ | 生活とリハビリ研究所

    三好春樹のプロフィール

  • 下山名月
    生活とリハビリ研究所 研究員/安全介護☆実技講座 講師

    老人病院、民間デイサービス「生活リハビリクラブ」を経て、現在は「安全な介護☆実技講座」のメイン講師を務める他、講演、介護講座、施設の介護アドバイザーなどで全国を忙しく飛び回る。普通に食事、普通に排泄、普通に入浴と、“当たり前”の生活を支える「自立支援の介護」を提唱し、人間学に基づく精度の高い理論と方法は「介護シーン」を大きく変えている。

    ホームページ|安全な介護☆事務局通信

    下山名月のプロフィール

  • 東田勉

    1952年鹿児島市生まれ。國學院大學文学部国語学科卒業。コピーライターとして制作会社数社に勤務した後、フリーライターとなる。2005年から2007年まで介護雑誌『ほっとくる』(主婦の友社、現在は休刊)の編集を担当した。医療、福祉、介護分野の取材や執筆多数。

    ホームページ |フリーライターの憂鬱

    東田勉のプロフィール

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