クレーム対応の優先順位を間違えると、結果としてお客様に満足してもらえません。ここではクレームを2つのステージにわけ、各段階でどういった対応をすべきか、くわしく解説をしていきます。
クレームに潜む2種類の要望
クレームを申し立てる人の中には、しっかり考えが整理されていない状態で話す人が少なくありません。その結果、状況や不満、要望などの主張が混在しがちですが、実は多くのクレームは、下図のような2つのステージに分かれているのです。ですからクレームを受ける人は、申立者の話を聞きながら要望を区分する必要があります。
2つのステージの1つ目は「現在抱えている問題を解決してほしい」という要望、2つ目は「今後このような間違いが起こらないように、業務改善をしてほしい」という要望です。
どちらも重要度は同じくらいですが、緊急度が違います。急いで解決すべきは、差し迫った問題である第1ステージです。
対応の流れもステージごとに異なる
クレームの対応は、各ステージで分けて対応することが大切です。まずは上記のチャートを参考に、緊急性が高い第1ステージの対応を行いましょう。
適切にクレームを受け付けたら(第68回参照)、次は管理者への報告です。報告を受けた管理者は、お客様が直面している問題を解決するための対応方針を決定します。
こうして第1ステージであるお客様の問題解決と並行して、第2ステージに取りかかります。第2ステージでは、「なぜクレームが申し立てられるような事態になったのか」の原因を探り、再発防止策を検討します。それによってあらためてクレーム申立者に対して、再発防止策の説明や謝罪が行えれば十分合格点です。
それに加えて、「お客様の申し立てによって業務上の問題点に気づくことができました」という感謝の気持ちを伝えられれば理想的だと言えます。
【第1ステージの対応ポイント】ニーズの把握と期待以上の動き
介護施設のクレーム対応における、第1ステージでの4つの対応ポイントを説明します。
ポイント1:お客様のニーズを復唱して確認する
お客様が現在直面している問題について正しく記録するためには、復唱することが大切です。復唱することで、内容が正しければお客様は「わかってもらえた」と感じて安心します。もし間違いや追加事項があれば、その場で訂正してもらえますし、すれ違いが起こりにくく効率的です。
ポイント2:管理者が対応方針を決定し、指示する
クレーム受付者から報告を受けた管理者は、施設としての対応方針を決定します。職員の動きを決めるポイントは、「お客様が直面している問題をなるべく早く解決するにはどう動けばいいか」です。
ポイント3:お客様の期待以上の動きをする
対応方針が決まったら、できるだけ早く実際の行動に移しましょう。お客様の感情面を考慮すると、受けたクレームに対しては、なるべくその日のうちに解決に向けて動き始めたいものです。
ポイント4:後日、フォローの電話をする
クレームを申し立てたあとも、多くの場合お客様は施設の利用を続けます。今後の関係を円滑にするには、後日のフォローが大切です。数日以内に、お客様の様子をうかがう電話を入れるようルール化しましょう。
【第2ステージの対応ポイント】原因究明とお客様への説明、謝罪
お客様が直面している問題への対応と並行して、再発防止のための原因究明に着手しましょう。なぜこのクレームが申し立てられる事態になったのかを関係者複数人で検討し、特定できなかったとしても、「考えられる原因」を挙げて改善を図ることが大切です。
クレーム申し立てから1週間後を目安に、原因の説明と謝罪の場をあらためて設けます。その場で、併せて「今回のクレームが業務改善のきっかけとなったこと」に対して、報告とお礼ができればいいでしょう。
適切な対応でお客様の信頼を取り戻す
『【第1ステージの対応ポイント】ニーズの把握と期待以上の動き』では、各ステージにおける対応の具体的なポイントを解説しました。たいていのクレームは、ポイント1でお客様のニーズをしっかりとらえて、ポイント2でそれに対してしっかり対応を行えば、それだけで解決してしまいます。
しかし、クレーム内容が解決した段階では、あくまでお客様の施設に対する信頼がマイナスからゼロに戻っただけの状態です。決して施設側が満足していい関係ではありません。
そこで、ポイント3の期待以上の動きと、ポイント4のアフターフォローで、お客様の信頼をゼロから正常な関係に持っていくことを目指します。それに加えて第2ステージの謝罪とお礼までできれば、お客様に今後も安心して利用していただけるようになるはずです。
著者/山田滋
監修/三好春樹、下山名月
編集協力/東田勉
イラスト/松本剛
※本連載は『完全図解 介護リスクマネジメント トラブル対策編』(講談社)の内容より一部を抜粋して掲載しています