初動対応を適切に行えば、トラブルを最小限にくい止めることができます。まずはクレームを申し立てるお客様の心情を理解するところからはじめましょう。
我慢がクレームに変わるポイントはここ
お客様は、介護施設に不満があるからといって必ずクレームを申し立てるわけではありません。多少の不満なら「今後利用しにくくなっても困るから」と考え、多くの場合は我慢してやりすごすものです。
もちろんそれを当然としてはいけません。では、「この件については我慢しないで、施設にクレームを申し立てよう」と考える条件とは何でしょう。それが次の2点です。

まず、「自分たちが正しく、施設側に非がある」という思いを持っていることが挙げられます。これだけで十分クレームになりえますが、それに加えて「困った問題になっている」場合は、なおさらクレームへの発展率が上がるようです。
お客様対応のポイントは?
クレーム受付の段階では、お客様は「絶対に自分が正しい」と思っている。その思い込みがあるからこそクレームを申し立てているので、受け付けるときは「お客様が全て正しい」という前提でまずは受け答えをするべし!
口出しをせずに最後まで話を聞くことが大切
クレームを受け付ける際に心に留めておいてほしいのが、「いきなり解決しようと思ってはいけない」ということです。
クレームになっている問題をいきなり解決しようと思うと、つい口を挟みたくなってしまいます。これは、「お客様の誤解を解きたい」「自分たちの正当性を理解してもらって、納得してもらいたい」などと思ってしまうからでしょう。
しかし、クレームを申し立てるお客様の多くは、絶対に自分が正しいと思っているうえに、困っています。その状況の人に施設側の正当性を主張しても、相手の心に響きません。それよりも、まずは相手の話を最後までしっかり聞いて、相手の正当性と、困っているポイントについて、全てを語ってもらうことが先決です。
受付では、必ず相手の立場に寄り添った受け答えに徹し、言い返したり疑問を挟んだりせず、全てを受け入れましょう。
お客様の怒りの火に油を注いでしまう受付対応
適切ではないクレーム対応として、次の3つが挙げられます。
お客様の主張に疑問を呈する

事実確認のつもりでも、受付の段階でお客様の申し立て内容に疑問を挟んではいけません。まずは全てお客様の主張どおりに受け取って、そのままを記録に書き留めます。
クレームの原因を探ろうとする

仮にお客様の主張が納得できないような内容であっても、その部分を問いただすようなことを してはいけません。お客様の感情を害すると、その後の話し合いがより難しくなります。
お客様にも非があると暗に言う

施設側の過失を棚上げした状態で、お客様側の過失を追及してはいけません。特に、それを受付の段階でやってしまっては、施設側の責任逃れととられ、信用を失ってしまいます。
申し立て内容を正確に把握しよう
クレームを受けた場面での対応を次にまとめました。

クレームの電話を受けたら、まずは「相手が正しい」という前提でしっかり謝ることが大切です。これがないと、感情的になっている申立者と話を進めることなどできないでしょう。まずは電話を受けた人が施設側を代表して「相手を困らせたり怒らせたりしている現状」に対して謝罪しましょう。
続いて心がけたいのが、相手の主張やクレーム内容を正確に把握することです。電話が終わったあとに適切に対応するためには、問題の取りこぼしや誤解があってはいけません。この段階での聞き取り内容が不明確だと、その後お互いの主張が何度も行ったり来たりしてしまいます。とにかく正確に書き留めることが大切です。
クレーム受付のポイントはこの2つ
クレームを受け付けた際に、気を付けるべきポイントを2つにまとめました。
電話のたらい回しは絶対にNG!
クレーム受付は職員全員がその場で行うのが大原則です。
クレーム内容をできるだけ正確に書き残すために、オリジナルのクレーム受付簿をつくりましょう。つくる際に、各施設で使いやすいように項目をよく考えて設定すると、誰がクレームを受けても必要な情報が得られるようになります。

クレーム内容にその場で回答はしない!
クレームはその場で回答せず、一度丸ごと引き受けてから折り返します。

クレーム内容を正確に書き留めたら、「責任者に報告し、〇時間後にこちらからお電話させていただきます」と言って一度電話を終了します。その際に、申立者の都合が悪い時間等がないか確認しておくと親切です。
事情がわかる人にそのまま電話を回してはいけない
クレーム内容を正確に書き留めたら、一度電話を終わらせましょう。その場で回答をしたり、事情がわかる人にそのまま電話を回してはいけません。いくら事情がわかるといっても、いきなりクレームを言われて適切な受け答えができるとは限らないからです。
何の予備知識もなしに突然感情的に責められたら、誰でも冷静で適切な対応は望めません。まずはクレーム内容を丸ごと受け取ってから、しっかり時間をかけて対応を考えましょう。相手の主張を一旦お預かりすると考えればいいのです。
申立者に折り返し電話をかける際は、必ずしもクレームを受け付けた職員でなくても構いません。むしろ相談員や施設管理者がかけ直したほうが、相手に誠意が伝わりやすいでしょう。かけ直す際は、相手の都合を優先し、都合の悪い時間にかけないよう気をつけましょう。
著者/山田滋
監修/三好春樹、下山名月
編集協力/東田勉
イラスト/松本剛
※本連載は『完全図解 介護リスクマネジメント トラブル対策編』(講談社)の内容より一部を抜粋して掲載しています