必要な情報を必要な人に過不足なく伝えるのは、意外と難しいものです。しかしそれを怠ってしまうと、思わぬ事故につながることもあるので気を付けましょう。
訪問介護は他業種との連携を強めていくべき
入所施設であれば、毎日の様子を見ながら各利用者の介護で気をつけるべきポイントなどを徐々に知っていくことができます。あるいは施設であれば、複数の介護職が「あの利用者にはこうするべきだ」などと話し合ってケアの質を高めることもできるでしょう。
しかし、訪問介護の利用者は在宅生活をしているので、変化があってもそれを事業者側が全て把握することはできません。それに、訪問介護のサービス提供責任者が得られる利用者情報は、基本的にケアマネジャーからの情報と、家族からの情報に限られます。
訪問介護は介護に不利な「居宅」という慣れない環境でサービスを提供するだけでなく、得られる情報も十分ではないのが現状です。
より安全な介護を提供するためには、訪問介護事業者は積極的に他業種(デイサービス、訪問看護など)との連携を強める必要があります。
なぜ利用者情報(アセスメント)が不足しやすいのか
訪問介護事業者が、アセスメントが不足しやすい要因はどこにあるのでしょうか。
(1)ケアマネジャー(2)利用者家族(3)サービス提供責任者それぞれの立場で、わかりやすい解説図にまとめたのでご覧ください。
利用者情報(アセスメント)の不足で起こるおもな事故
アセスメントが不足すると、次のような事故が起きやすくなります。
最新情報を知らなかったために起こる事故
利用者が入院したあとなどによく起こる事故です。身体状況や必要な介護内容が変わっているのに、それを知らずに従来どおりの介護を行ったことが原因になります。
家族からの情報収集が不十分だったために起こる事故
利用開始から間もない時期によく起こる事故がこれです。注意すべきBPSDなど、必要な情報を得ていないことに気づかずサービスを行うことが原因です。
ケアマネジャーからの情報伝達が不十分だったために起こる事故
「デイサービスではソフト食に変更したことを知らず、訪問介護で普通食を出して窒息事故」など、ケアマネジャーが情報伝達しきれなかったことが原因となって起こる事故です。
医者からの情報収集が不十分だったために起こる事故
訪問介護は要介護者だけでなく、特定疾病の患者や重度障害者もサービス対象です。医者からの情報提供が不足していると、事故の原因になることもあります。
著者/山田滋
監修/三好春樹、下山名月
編集協力/東田勉
イラスト/松本剛
※本連載は『完全図解 介護リスクマネジメント 事故防止編』(講談社)の内容より一部を抜粋して掲載しています