”機能する”事故防止マニュアルの作り方 職員みんなで作ることが大切です|事故防止編(第20回)

”機能する”事故防止マニュアルのつくり方 職員みんなで取り組むことが大切です | 事故防止編(第20回)

会議で終わりにせずに、ここまで学んだことをマニュアル化して現場に戻しましょう。え、事業所に事故防止マニュアルがない? ではそのつくり方から解説しますね。注意点もあります!

マニュアルづくりのポイントを解説

ケース検討会議で事故防止対策がまとまったら、現場の職員が共有できるように事故防止マニュアルに入れ込みます

しかしこれは、すでに各施設で作成した事故防止マニュアルがあることが大前提です。現時点で事故防止マニュアルがない施設は、まず各施設の業務内容に即した事故防止マニュアルをつくったうえで、その中に追加する形になります。

では、事故防止マニュアルはどのようにつくればいいのでしょうか。重要なポイントをまとめましたので、つくるときの参考にしてください。

【事故防止マニュアルの作り方】現在行っている安全確認の手順を全て書き出す:現在の動作や声掛けの手順を全て書き出し、安全のための手順以外を消します。声掛けは上手なスタッフを参考にします。→現在の手順が適切か確認する。:「現在行っている確認動作や声掛けで、漏れが内科」と「現在の方法が本当に適切か」の2点を話し合いながら確認する。→実行してみて全員の意見を聞く:マニュアルのたたき台ができたら、どこかの職場で実行して、足りない部分や詰め込みすぎがないかをチェックします。それと同時にスタッフ全員に配布して意見をもらいましょう。

マニュアルづくりの「悪い例」とは

マニュアルづくりには、「悪い例」があります。以下の5つのポイントに気を付けてくださいね。

  1. ほかの施設のマニュアルをそのまま持ってきたので、その施設で行われている手順に即していない
  2. 現場の職員が参加しないで作成したため、できないことがたくさん載っている
  3. 「注意して○○する」「適切であることを確認する」などの漠然とした表現が多い
  4. 文字が細かくて、読みにくい
  5. ページ数が多すぎて、読む気にならない

全職員を巻き込んでつくることが大切

作成する際のコツは、「危険を避けるために、どのような確認動作や声かけをするべきか」を意識しながら文章にまとめることです。

たとえばちょっとした段差を上る介助のときに、「階段なので気をつけてください」という声かけよりも、「階段を3段上りますよ。はい1段、2段、3段」と具体的に声をかけるほうが、事故防止効果は上がります。「気をつける」「注意する」といった漠然とした表現ではなく、「気をつける」にはどのような安全確認をすればいいのか明確にするのがマニュアル化です。

【ケース検討会議の結果をマニュアルに入れ込む(一例)】1)車イスのストッパーの安全点検。×:ストッパーが壊れていないか確認する。△:ストッパーがきちんときくか、実際にかけて確認する。◯:ストッパーをかけて車イスを押し、動かないことを確認する。◎:タイヤの状態を確認する。人を載せた状態でストッパーをかけ、押しても動かないことを確認する。2)入浴前のチェック。×:脱衣所の床が濡れていないかチェックする。◯:脱衣所の床を乾いたモップで一度ふいてから入浴介助を始める。3)浴室での注意。×:浴室に職員が誰もいない状態を作らない。◯:職員が浴室から出る場合はほかの職員に「浴室から出るので、〇〇様の見守りをお願いします」と声をかける。他の職員がイなければ浴室を出ない。4)車イスの座位をチェック:×:車イスの↑での座位が適切かチェックする。◯:車イスのフットサポートが上がり、かかとが床についているかを確認する。5)乗車・降車時の注意:×:乗降介助の際は、利用者の頭をぶつけないように注意する。◯:「頭をぶつけないようきをつけてくださいね」と声をかけ、職員は片手で利用者の頭部上方を守る。

また、マニュアルをつくる際には全職員を巻き込むようにしましょう。現場の職員は毎日忙しいので、突然マニュアルを渡されても対応できないものです。

そこで、作成段階で全職員に意見を出してもらい「みんなで決めた私たちのマニュアル」という感覚を持ってもらえれば、職員も当事者意識を持って取り組むようになります

著者/山田滋
監修/三好春樹、下山名月
編集協力/東田勉
イラスト/松本剛

※本連載は『完全図解 介護リスクマネジメント 事故防止編』(講談社)の内容より一部を抜粋して掲載しています

書籍紹介

完全図解 介護リスクマネジメント 事故防止編

介護リスクマネジメント 事故防止編

出版社: 講談社

山田滋(著)、三好春樹(監修)、下山名月(監修)、東田勉(編集協力)
「事故ゼロ」を目標設定にするのではなく、「プロとして防ぐべき事故」をなくす対策を! 介護リスクマネジメントのプロである筆者が、実際の事例をもとに、正しい事故防止活動を紹介する介護職必読の一冊です。

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  • 山田滋
    株式会社安全な介護 代表

    早稲田大学法学部卒業と同時に現あいおいニッセイ同和損害保険入社。支店勤務の後2000年4月より介護事業者のリスクマネジメント企画立案に携わる。2006年7月よりインターリスク総研主席コンサルタント、2013年5月末あいおいニッセイ同和損保を退社。2014年4月より現職。

    ホームページ |株式会社安全な介護 公式サイト

    山田滋のプロフィール

  • 三好春樹
    生活とリハビリ研究所 代表

    1974年から特別養護老人ホームに生活指導員として勤務後、九州リハビリテーション大学校卒業。ふたたび特別養護老人ホームで理学療法士としてリハビリの現場に復帰。年間150回を超える講演、実技指導で絶大な支持を得ている。

    Facebook | 三好春樹
    ホームページ | 生活とリハビリ研究所

    三好春樹のプロフィール

  • 下山名月
    生活とリハビリ研究所 研究員/安全介護☆実技講座 講師

    老人病院、民間デイサービス「生活リハビリクラブ」を経て、現在は「安全な介護☆実技講座」のメイン講師を務める他、講演、介護講座、施設の介護アドバイザーなどで全国を忙しく飛び回る。普通に食事、普通に排泄、普通に入浴と、“当たり前”の生活を支える「自立支援の介護」を提唱し、人間学に基づく精度の高い理論と方法は「介護シーン」を大きく変えている。

    ホームページ|安全な介護☆事務局通信

    下山名月のプロフィール

  • 東田勉

    1952年鹿児島市生まれ。國學院大學文学部国語学科卒業。コピーライターとして制作会社数社に勤務した後、フリーライターとなる。2005年から2007年まで介護雑誌『ほっとくる』(主婦の友社、現在は休刊)の編集を担当した。医療、福祉、介護分野の取材や執筆多数。

    ホームページ |フリーライターの憂鬱

    東田勉のプロフィール

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