「ついルールを破ってしまって……」。事故が起きたとき、事情を聴いた職員の中にこのような言葉を口する人がいます。事故防止活動はまず、このルール違反を撲滅することから始めましょう。
初歩的な事故を防ぐのが第一歩
事故防止活動は、「安全規則の順守」から始まります。介護事故にはさまざまなものがありますが、その中でもっとも過失が大きく、また防ぐべきなのは「職員のルール違反によって起きた事故」です。事故防止活動を始めるのであれば、まずはルール違反をする職員をゼロにするところから始めましょう。
では、ここで言う「ルール違反」とはどのようなことを指しているのでしょうか。
ひと言で説明すると、「こうした行為を続けていれば、いつか必ず事故につながる」といった事故誘発の危険性が高い行為を指します。例えるならば、建設現場でヘルメットを着用しないとか、厨房に入るのに手を洗わないとか、そういう種類の行為のことです。
ここからは、「介護現場における、守るべき基本的な安全規則の代表的な例」を、イメージしやすいようにシーンごとにまとめてみました。これらの「規則を破ると起こる事故」と 「安全規則」を見て、どのように感じるでしょうか。
まずは、動作介助における事例です。
次に、車イスの介助の事例をご紹介します。
続いて、食事介助の事例です。
最後は、排泄と入浴の事例になります。
いかがでしたか?
「こんなにレベルの低い事故は、うちでは起こらない」と思われる人もいるかもしれません。こうした基本的なルール違反が絶対に起こらないという自信は、それ自体は素晴らしいことです。
しかし、私が今までセミナーでお会いした管理者の皆さんに話を聞くと、「こんな低レベルの違反はうちでは起きないと思っていたのに、やはり違反者が出てしまいました」と嘆く人が多くいました。ルールとは、わかっていても「ついうっかり」破られてしまうものなのです。
どうしたら確実にルールを守ってもらえるか
安全規則は、明文化されず暗黙の了解になっている施設が多いものです。しかし、暗黙の了解はルールとしては機能しません。こうした体制の甘さが、忙しい現場職員の心に「急いでいるから、まあいいか」という心の隙をつくってしまいます。
安全規則の順守を徹底するためには、「明文化されたルール」と「違反したときの罰則」の2点が絶対に必要です。上に挙げられているような例を参考にしながら、まずは各施設で「安全規則」を作成しましょう。
安全規則ができたら、次は罰則の周知徹底です。もしも施設の規則を破って事故を起こしたとすれば、就業規則違反で懲戒解雇になる可能性があります。場合によっては刑事罰に処されることもあると、介護職は知っておくことが必要です。
著者/山田滋
監修/三好春樹、下山名月
編集協力/東田勉
イラスト/松本剛
※本連載は『完全図解 介護リスクマネジメント 事故防止編』(講談社)の内容より一部を抜粋して掲載しています