便が出ない…便秘を改善する方法は?

【医師監修】高齢者の便秘 | 主な原因や改善方法

当記事では、高齢者が便秘になる原因や改善方法について解説していきます。慢性的な便秘になると、「お腹が苦しい」「食欲がない」といった症状が起こるようになります。心当たりがある方や、高齢者を介護されている方はぜひ参考にして下さい。

便秘とは

便秘とは4日以上も排便がなかったり、排便があったとしても量が少ないために残便感(お腹に便が残っている感じがする)がある状態、もしくは直腸内にある糞便を快適に排出できない状態を指します。

内服薬の治療などで改善しない場合には専門の病院などに相談するのが良いでしょう。

高齢者が便秘になる主な原因としては、加齢による腸の機能低下、直腸肛門の便を出す働きの低下、食事、運動不足、ストレスなどが挙げられます。

便秘により生じる症状

便秘の主な症状としては、下記の6つがあります。

  • 下剤や浣腸をしなければ排便がない
  • 便が硬い
  • いきんでもうまく便が出せない
  • お腹が張っている
  • 食欲がなく満腹感がある、もしくは吐き気がある

便秘の種類

長期的に続いてしまう便秘は、大きく2つに分類できます。

  • 器質性便秘……消化管に疾患が見られる
  • 機能性便秘……消化管に疾患が見られなくて、消化管の働きが悪い

消化管に何か疾患がある場合には、その疾患の治療が優先されます。

もし消化管に疾患がない機能性便秘の場合、原因や症状によってさらに3つの種類に分けられます

種類 詳細
大腸通過遅延型便秘 大腸の運動機能が悪く、便が長く大腸に停滞していることで、便が固くなったり便の回数が減少する便秘。規則正しい日常生活、食事、排便、適度な運動などで改善されやすい。慢性的な便秘の原因としては最も多いと言われています
大腸通過正常型便秘 便となる食物が少ないことなどが原因で起こる便秘で、腸の運動機能は正常。食生活などの指導で改善されやすい
便排出障害型便秘 直腸内に便が到達しても、うまく便をだせない便秘。習慣的に便意を我慢し続けることが原因になりやすい

便秘の原因とは

高齢者の方が便秘になるときの主な原因を4つご紹介します。

食生活による便秘

食事の量や繊維分の摂取が少なくなると、便の量も減り、腸の運動も減少するため便秘の原因になります。

便秘になる方に足りない食事の栄養素としては、食物繊維、乳酸菌、ビフィズス菌、オリゴ糖などが挙げられます。

運動量の低下・筋肉量の減少による便秘

人は運動によって腸を伸縮させたり揺さぶったりし、腸のぜん動運動を活性化させています。そのため、運動量が低下すると便秘になりやすくなります。

また、運動量が減ることで、便を排泄するために必要な筋肉も減ってしまうことがあり、それが便秘につながることもあります。

加齢による便秘

加齢によって筋力が低下すると、腹圧も低下します。この腹圧が低下すると、便を押し出すための力が弱まってしまいます。

また、腸のぜん動運動は、交感神経が優位なときには停滞し、副交感神経が優位になると活発になりますが、加齢によって副交感神経の機能が低下すると、腸のぜん動運動の動きも弱くなってしまいます。

浣腸や下剤の習慣

浣腸の使用を習慣化すると、便意を感じにくい状態になってしまうことがあります。

また、下剤を使う場合、どの種類の便秘なのか、便がどこに停滞しているのかによって、効果が高い下剤の種類は異なります。

そのうえ、基礎疾患がある方の場合、使用が適切でない下剤もあります。

こうした理由から、下剤はできるだけ医師の診断を受けてから使用するようにしましょう。

直腸知覚低下

高齢になると、体の感覚が鈍くなりやすく、直腸の知覚が低下する傾向があります。そのため、便意が起こりづらく、便秘につながってしまうことがあります。

便秘って何科を受診すればいいの?

便秘になった場合、専門になるのは「排便機能外来」「便秘外来」です。また、「消化器内科」「胃腸科」「消化器外科」も、消化器官に特化しています。これらの医師に診察してもらうのが難しければ、「内科」でも治療を受けることは可能です。

便秘の対策

ここからは便秘の改善策を解説してきます。高齢の方、または高齢者を介護されている方はぜひ参考にしてください。

適切な排便姿勢にする

排便するときは、『考える人』の像をイメージして姿勢を意識的に変えましょう。前傾姿勢にして踏み台を設置することで、より便が出やすくなります。

排便しやすい姿勢。NG姿勢、OK姿勢(前傾する、台を置いて足裏をつける)

腸をマッサージする

腸のマッサージとして、「の」の字をイメージしてマッサージする方法がよく知られています。

これは食べ物が腸の中を通っていく順番にマッサージするもので、効率的かつ理にかなっている方法になります。

便を運ぶ順。上行結腸→横行結腸→下行結腸→S字結腸

食生活を改善する

便秘になる方に足りない食事の要素としては、食物繊維、乳酸菌、ビフィズス菌、オリゴ糖などが挙げられます。

食物繊維
食物繊維が不足すると、便の量も少なくなり腸の中に便が停滞しやすくなります。
乳酸菌、ビフィズス菌、オリゴ糖
乳酸菌とビフィズス菌は、腸のぜん動運動を助けたり、内の悪玉菌を抑えて腸内環境を整えてくれる役割があります。そしてオリゴ糖は、乳酸菌とビフィズス菌の働きを助けてくれる働きがあります。

体操など適度に運動する

便秘を改善するための体操。ガス抜き体操…両膝を抱えて10秒深呼吸。ひねり体操…両膝を左右交互に3回ずつ倒す

便秘を解消するためには、適度に運動をすることも大切です。ここでは高齢の方でも実施しやすい、寝たまま行える便秘改善の体操を解説します。

ガス抜き体操

①仰向けになり、両膝を抱えます
②お腹と太ももは押し合うようにしっかりくっつけます
③呼吸をゆっくり10回繰り返します。長く息を吐きます

ひねり体操

①両手を上に伸ばし、両膝を立てます
②両膝を右側に倒し、ゆっくり一呼吸おきます
③逆側に倒します
④膝を左右に3回ずつ倒します

まとめ

ここまで、下記の3つの改善方法を紹介させていただきました。

①適切な排便姿勢にする
②食生活を改善する
③体操など適度に運動する

上記を実践しても便秘が改善されない場合は、病院の医師などに相談するようにしましょう。

監修者/前田耕太郎
イラスト/アライヨウコ

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