看取り介護加算とは? 単位数やターミナルケア加算との違いを解説

看取り介護加算(看取り加算)は、特別養護老人ホーム、グループホーム、特定施設入居者生活介護での看取りに対して算定できる加算制度です。利用者さんが人生の最期を自分らしく送れるように支援することを目的として、2006年に創設されました。

回復が見込まれないと医師が判断した場合に、ご本人やご家族の希望を尊重したうえで、医師や看護師、ケアマネジャー、介護職が連携して24時間体制で看取りを行います。

2021年度介護報酬改定では、看取り対応をより適切に評価するために、看取り介護加算の対象期間を伸ばし、死亡日以前45日から31日の区分が新設されました。

職員の精神的な負担軽減や研修制度の充実、人生会議などの本人の意思をなるべく尊重するための取り組みが社会的に広がることが期待されています。

看取り介護加算の概要

看取り介護加算(看取り加算)とは、死が避けられないとみなされた方に対して、身体的かつ精神的苦痛を緩和・軽減しながら生活支援を行う介護事業者に対して算定される加算のことです。

看取り介護加算は、特別養護老人ホーム・グループホーム・特定施設入居者生活介護の3つの事業者に算定が認められています。

しかし、将来的に病床の削減が進み、在宅や介護施設での看取りが増えれば、看取り介護加算の対象範囲の拡大は必至です。

まずは、介護現場で働くすべての人が知っておくべき看取り介護加算の目的と背景、ターミナルケアとの違いについて解説します。

看取り介護加算ができた目的・背景

出典:『令和3年度介護報酬改定における改定事項について』(厚生労働省)よりWe介護編集部で作成

看取り介護加算の目的は、人生最期の時までご本人・ご家族の意向に沿った生活支援を行うことにあります。

日本では2007年より超高齢社会を迎え、2040年には多死社会が訪れると言われています。
その根拠として、医療技術の発展による長寿化に伴い、団塊世代が平均寿命に達して年間死亡者数がピークを迎えることが挙げられます。

「人生の最期は住み慣れた家で看取られたい」という思いとは裏腹に、生涯未婚率の上昇による単独世帯の増加によって、自宅で最期を迎える方は2割に満たないのが現状です。

人間は誰しも時間と共に年老いてやがて死を迎えます。人生の終末期までにどう生きたいか、どういう死を迎えたいかをあらかじめ確認しておくことが、ご本人やご家族の意向に沿った看取りケアを行ううえで重要です。

看取り介護加算とターミナルケア加算の違い

看取り介護加算とターミナルケア加算とでは、支援において重きを置くポイントが異なります。

看取り介護では終末期の高齢者に対して介護職が生活全般の支援を行い、看護師は健康状態の管理を行います。

最大の違いは延命治療を行わない点で、看取り介護では身体的・精神的苦痛を緩和しながら生活支援を行なうことを目的とします。

例えば口腔摂取が困難になった高齢者に対して、胃ろうなどの経管栄養手術は行ないません。看取り介護加算の考え方は延命措置よりも個人の尊厳を重視するためです。

対してターミナルケアでは、医療と介護が連携して支援を行う点では同じですが、看護師による医療的ケアが中心となります。

具体的には、生命を維持するために必要な痰吸引や経管栄養注入などが含まれます。

2021年度介護報酬改定による変更点

看取り介護加算に関して、2021年の介護報酬改定で以下の変更が行われています。

出典:『令和3年度介護報酬改定における改定事項について』、『「第189回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料」』(いずれも厚生労働省)よりWe介護編集部で作成

「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスにガイドライン」の推進

今後の看取り介護は、この「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスにガイドライン」に基づいて行われることが求められます。

多死社会の加速化に伴い、患者が終末期の医療ケアについて医療従事者とあらかじめ話し合うことが重視されるようになりました。

ポイントは以下の3点です。

  1. 本人や家族と十分に話し合い、意思を尊重すること
  2. 本人の意思は身心の状態に応じて変化するものなので、日頃からケアの方針を話し合うこと。それらを文書にまとめ、共有すること
  3. 本人が自ら意思を伝えられなくなる可能性を考慮し、本人以外に信頼できる家族など(親しい友人など)を予め決めておくこと

算定期間の延長

従来の算定期間(死亡日の30日前まで)に新たな区分が追加されました。

  • 死亡日31日前~45日前 1日につき72単位

算定期間延長の理由としては、ほとんどの事業所が30日以上前から看取り介護を行っている実態があるため、それに合わせる形に区分が追加されました。

この算定期間の延長により、事業所の看取り介護加算が得やすくなりました。

看護職員の配置による報酬上乗せ

新たな加算として、看取り期に夜勤または宿直で看護職員を配置した場合に報酬単位が上乗せされることになりました。

背景には、患者の療養生活に伴うニーズへの対応を強化する観点から、充実したサービス提供体制の事業所を評価する意図があります。

居宅介護費の算定要件変更

居宅介護支援員の取扱件数による基本報酬の引き上げが行われました。

今回の改定により、一定のICTを活用している居宅介護事業所は居宅介護支援費加算(Ⅱ)が新たに算定可能となっています。

背景には、感染防止と他職種連携を促進したいという狙いがあります。

訪問介護でも看取りを評価する仕組みの検討

現状、看取り介護加算の対象は特別養護老人ホーム・グループホーム・特定施設入居者生活介護の3つの事業所に限定されていますが、訪問介護事業所も導入対象にする検討が行われています。

背景としては、日常的な状態観察に加えて、患者の状態変化について医療サイドに随時、情報連携を行う訪問介護員の業務負担に報いるという点が挙げられます。

看取り加算の対象事業者

前述しましたが、看取り介護加算は以下の3つの事業者で算定可能となっています。

  • 特別養護老人ホーム
  • グループホーム
  • 特定施設入居者生活介護

それでは、各施設形態の特徴を紹介します。

特別養護老人ホーム

特別養護老人ホームは公的な介護保険が利用でき、長期入所が可能な介護施設です。
病院に入ることなく、最期を迎える方が多いことから「終の棲家」と呼ばれます。
介護職は個室・ユニット型個室で過ごされている入居者の方に入浴・排泄介助などのサービスを行います。2015年の制度改正により、要介護度3以上であることが入所条件として追加されました。
看取り期には家族、看護師、介護職、生活相談員などで看取りの方向性について話し合いを行います。

グループホーム

グループホームは、施設というより家庭に近い環境で少人数の入居者と職員が共同生活を行う場所です。入居者は全員、認知症の診断を受けています。
入居者と職員が一緒に過ごす時間が長い特徴があり、お元気な方は食事準備や掃除などを職員と協力して行います。
しかし、看取り介護加算が追加されて以降、入居者が重度化するケースが増えています。その場合、一般の介護施設と比べると設備や人員配置の点が懸念材料となります。

特定施設入居者生活介護(特定施設)

特定施設入居者生活介護とは、厚生労働省が定めた基準を満たす施設で受けることができる介護保険サービスを指します。
特定施設で提供するのは、訪問介護、訪問看護、訪問入浴介護、通所介護、訪問リハビリ、通所リハビリ、福祉用具レンタルなどのサービスです。
特定施設には以下の4つの施設があります。

  • 介護付有料老人ホーム
  • ケアハウス(介護付)
  • 養護老人ホーム
  • 介護型のサービス付き高齢者向け住宅

看取り介護加算Ⅰの算定要件と単位数

看取り介護加算Ⅰに必要な算定要件と単位数を解説します。

看取り介護加算Ⅰの算定要件

看取り介護加算Ⅰに必要な算定要件は次の5つです。

  1. 当該施設の看護職員、病院または診療所、指定訪問看護ステーションのいずれかの看護職員との連携で24時間連絡できる体制をとること
  2. 看取りに関する指針を定め、施設入所の際に入所者とご家族に看取りに関する定めた指針について内容の説明を行い、同意を得ること
  3. 医師、看護職員、ケアマネジャー、介護職員、生活相談員などが当該施設においての看取りについての協議を行い、指針について適宜見直すこと
  4. 看取りに関しての職員研修を行うこと
  5. 看取りケアは個室または静養室などを利用し、本人、ご家族、周囲の入所者に配慮すること

看取り介護加算Ⅰの単位数

看取り介護加算Ⅰは、ご家族から看取りの同意を受けた後に下記の単位数が加算されます。

算定期間 単位数
死亡日31日前~45日前 1日につき72単位
死亡日4日前~30日前 1日につき144単位
死亡の前日および前々日 1日につき680単位
死亡日 1日につき1,280単位

出典:『令和3年度介護報酬改定における改定事項について』(厚生労働省)よりWe介護編集部で作成

看取り介護加算Ⅱの算定要件と単位数

看取り介護加算Ⅱを満たす算定要件と単位数を解説します(看取り介護加算Ⅱの対象は地域密着型施設を含む特別養護老人ホームのみ)。

看取り介護加算Ⅱの算定要件

看取り介護加算Ⅱに必要な算定要件は次の5つです。

  1. 加算Ⅰの要件を満たしていること
  2. 入所者に関し、配置医師と施設間で下記2点の具体的な取り決めがあること
    ・緊急事態が起きた場合の注意点や情報連携の方法
    ・曜日、時間帯別の連絡手段や診察依頼時間
  3. 複数名の配置医師がいる、または協力関係にある医療機関の医師が必要な際に24時間対応できること
  4. 要件の②、③について、書面にして届け出ていること
  5. 看護体制加算Ⅱを算定していること

看取り介護加算Ⅱの単位数

看取り介護加算Ⅱは、ご家族から看取りの同意を受けた後に下記の単位数が加算されます。

算定期間 単位数
死亡日31日前~45日前 1日につき72単位
死亡日4日前~30日前 1日につき144単位
死亡の前日および前々日 1日につき780単位
死亡日 1日につき1,580単位

出典:『令和3年度介護報酬改定における改定事項について』(厚生労働省)よりWe介護編集部で作成

看取り介護の課題

看取り介護が重視される一方で、加算の対象となる事業者側の課題は少なくありません。

職員の身体的・精神的負担の増加に加え、以前から危惧されている介護職の人材不足は深刻な問題です。

介護職はさまざまな課題を抱えながら「死」と向き合うことが求められます。想定される代表的な課題を以下のような点です。

  • 職員の精神的負担
  • スタッフの不足

それぞれ解説していきます。

職員の精神的負担

看取りを初めて経験した際、ショックと辛さと後悔が入り混じった感情を抱く職員の割合が大半を占めることが調査からわかっています。

出典:『長期療養高齢者の看取りの実態に関する横断調査事業 報告書』(みずほ情報総研株式会社)よりWe介護編集部で作成

元気だった入居者が衰弱していく姿を見ながらケアを続けるのは、介護職にとって精神的負担が大きく、なす術がないことから無力感に苛まれているかもしれません。

施設側も介護職員の精神的負担を分かっていながら、メンタル面のケアやサポートが不十分と考えていることがわかっています。

中には看取り経験を積み重ねて自身の介護観や人生観に変化が生じ、介護職として成長する職員もいるでしょう。

しかし看取りに不慣れな職員や夜勤に不安を感じる職員に対しては、周囲のケアやサポートが不可欠なのは紛れもない事実です。

スタッフの不足

人員不足も深刻な問題です。

特に夜間帯は職員の数も少なく、通常の夜勤業務があります。勤務中にもしものことがあったらと思うと、心配で気が気でないでしょう。

万一に備えて、利用者のご家族などの緊急連絡先をあらかじめ確認しておくことが大切です。

看取りケア研修の充実と人生会議の広がり

職員の精神的負担のサポートには、看取りケア研修の充実が必要不可欠です。また、生きている誰しもが自分の人生をどう終えたいかを考えておくことで、より多くの人が自分の望む終末期を過ごすことができます。介護職は、エンディングノートや人生会議を積極的に学び、社会全体を引っ張っていく存在になることが期待されています。

職員向けの看取りケア研修

看取り介護加算の算定条件として、研修の実施が必須となっています。

研修を受けることで看取りケアにおける心構えや考え方を深め、その意義について学ぶことができます。

このコロナ禍では、職員の代表者がオンライン研修を受けて全体にシェアすることが現実的な対応です。研修を受けることで精神的負担の軽減にもつながります。

研修内容としては以下のような内容が挙げられます。

  • 生きることの意味
  • 逝くことについて
  • 事業所の看取りについての考えかた
  • 本人や家族とのコミュニケーション
  • 身体機能低下プロセスと変化への対応
  • 急変時の対応と連絡方法

エンディングノートや人生会議の広がりへの期待

エンディングノートとは、もしものときに自分の情報や家族などへ伝えたいことを生前に記しておくノートのことです。

もしものときはいつ訪れるかわかりませんし、エンディングノートは決して高齢者だけのものではありません。そういった意味で人生会議も同じ目的を持っています。

人生会議とは、厚生労働省が掲げている、「もしものときのために自らが望む医療やケアを伝えるための話し合いや取り組み」のことです。

出典:『「人生会議」してみませんか』(厚生労働省)

介護業務を続けるうえで、看取り介護は避けて通れません。

エンディングノートや人生会議の意義を理解し、人生の終末期を迎えた方に対して、残された時間をいかに有意義に過ごしてもらい、自分らしく過ごしてもらうかを考えることが重要です。

高齢化が進む日本で、介護職が看取り介護の知識・経験を身に付けることは必要不可欠で、果たす役割も非常に大きいと言えます。

著者/サトシーサー
監修者/鈴木亘

(参考)
令和3年度介護報酬改定における改定事項について』(厚生労働省)
第189回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料』(厚生労働省)
長期療養高齢者の看取りの実態に関する横断調査事業 報告書』(みずほ情報総研株式会社)
「人生会議」してみませんか』(厚生労働省)

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