2021年度介護報酬改定で無資格者を対象に義務化された認知症介護基礎研修とは。対象者や研修の内容を解説。

認知症介護基礎研修とは | 義務化の対象者や研修内容、受講方法を解説

2021年度介護報酬改定で、現場で認知症介護を行う無資格や未経験の職員に対して、認知症介護基礎研修が義務付けられました。ただし、3年の経過措置があるので、未受講でも今すぐ働けなくなってしまうわけではありません。

認知症介護基礎研修では、認知症に関する基本的な知識やスキルを学ぶことができます。試験などはなく、講習と演習を受講すれば受講証明書が発行されるので難易度は決して高くありません。また、受講費は自治体によって異なりますが、無料~5,000円程度です。

2025年には、65歳以上の高齢者の5人に1人は認知症になると予測されています(『認知症施策の総合的な推進について』厚生労働省)。職員の認知症介護に関する知識やスキルを向上させることで、サービスの質を高めたり、認知症の利用者さんへの不適切な対応の防止が期待されます。

認知症介護基礎研修とは

認知症介護基礎研修は、無資格者や未経験者が、認知症に関する基礎知識やスキルを講習と演習を通じて学ぶための研修です。

出典:『令和3年度介護報酬改定に関する審議報告』(厚生労働省)、『認知症介護基礎研修シラバス』(認知症介護研究・研修センター)よりWe介護編集部で作成

実際、日々現場で認知症のご利用者と接していると、「どうしてこういう行動をとるのだろう」「こんなときにはどのように対処するのが適切なのか」と、不安や疑問に思う場面があるはずです。

「研修」と聞くと、何やらとても難しそうに感じがちですが、日頃現場で身につけた経験を理論的に裏付けしてもらえたり、日々の介護のなかで抱えていた疑問を解消してもらえる機会と考え、スキルアップや資格取得に向けてのステップアップの機会と捉えてください。

研修の義務化は2021年4月から

認知症介護基礎研修の義務化は、既に2021年4月からスタートしています。ただし、施行から3年間は経過措置が設けられているため、4月以降も研修を終了するまで現場で働けなくなるわけではありません。

また、無資格の介護職員に対して直接的に研修の義務が課せられているわけではなく、事業者に対し、該当する職員が研修を受けるために必要な措置をすることが義務付けられています。そのため、無資格の介護職員が研修を受けるために必要な配慮をしなかった場合には、事業者は行政の指導対象となります。

認知症ケアの重要性

こうした制度が導入された背景には、介護業界全体の、認知症介護に対するサービスの質を向上させる狙いがあります。

従来行われていた介護職員のための認知症ケアの研修には、「認知症介護実践者研修」があります。しかしこの研修の受講対象者は、認知症介護2年以上の経験者とされています。そのため、基礎の基礎を固める研修の必要性が以前から指摘されていました。

認知症介護の難しさは、現場の経験者であれば誰もが知るところです。十分な知識やスキルがないままにケアを行うことで、残念ながら施設利用者に対し、好ましくない態度で接する職員の姿が報道されることがあるほか、介護職員による介護家族のケアの不足も要因の一つとなり、在宅介護で追い詰められた家族が極端な選択をする例も残念ながら散見されます。

こうしたこと不幸な出来事を防ぐ意味でも、介護職員には認知症介護に対するより専門性の高い知識の習得が、社会的ニーズとしても求められているのです。

認知症介護基礎研修の内容

認知症ケアに関する基礎の基礎を学ぶ研修とされる認知症介護基礎研修ですが、具体的な研修の中身は、どのようなものなのでしょうか? ここでは気になる研修の中身について、具体的に紹介していきます。

認知症介護基礎研修で学べるスキル・内容

研修の第一の目的は、認知症介護を行ううえで必ず必要となる知識や技術、考え方を無資格の介護職員に身に付けてもらうことにあります。

カリキュラムは講義と演習で組み立てられており、時間はトータルで6時間です。主な研修内容には、次のようなものがあります。

出典:『認知症介護基礎研修シラバス』(認知症介護研究・研修センター)

認知症介護基礎研修の難易度

認知症介護基礎研修にテストや修了試験はなく、受講すれば受講証明書が発行されるので難易度は高くありません。

そもそもこの研修が導入された目的は、無資格や未経験の介護職員に対し、認知症ケアの基本を身につけてもらう点にあります。そのため研修内容も認知症ケアの基礎的な知識がわかりやすく身に付くものです。

さらに全科目を受講すれば研修は修了となり、参加者全員に受講証明書が交付されます。修了認定試験や論文提出などは求められないので、その意味でも難易度は低いといえます。

認知症介護基礎研修の対象外となる職員

認知症介護基礎研修の義務化対象は、無資格の介護職員です。そのため以下のような資格を有している職員は、研修の対象外になります。

なお、訪問入浴介護以外の訪問系、居宅介護支援、福祉用具貸与(販売)事業者については、無資格で働く介護職が配置されていないため、今回の認知症介護基礎研修におけるルール見直しの対象からは外れています。

認知症介護基礎研修の受講料

認知症介護基礎研修は、自治体が主催しているケースと、民間等の団体に委託しているケースがあります。

受講料については、自治体ごとにばらつきがあります。自治体主催の場合でも、受講料無料の自治体もあれば有料の自治体もあります。

一方、自治体からの委託を受けて民間団体が研修を行っている場合には、テキスト代と受講料で5,000円程度が平均的な費用となっています。

認知症介護基礎研修と介護職員初任者研修は何が違うの?

これまで介護職員のためのいわば入門編としての研修には、「介護職員初任者研修」がありました。ではこの研修と認知症介護基礎研修には、どのような違いがあるのでしょうか?

2つの研修の大きな違いは、研修目的にあります。介護職員初任者研修の場合には、認知症対応に限定せず、介護職員として働くために必要な基礎的な知識や技術を身につけることを目的としています。そのため学習内容も幅広く、受講期間も最短で1ヵ月と、かなり長期に及びます。

介護職員初任者研修を修了すれば、訪問介護でヘルパー業務が行えます。さらに介護福祉士の受験資格となる実務者研修を受ける場合には、必要な科目時間数を削減することができます。

一方、認知症介護基礎研修は研修期間も半日程度と短く、研修内容も介護職員として働くために必要な認知症に関する基礎的な知識やスキルの習得に特化されており、この点が2つの研修の違いとなっています。

認知症介護基礎研修の受講方法

受講料の部分でも触れましたが、認知症介護基礎研修は自治体により受講システムが異なります。現在は新型コロナウイルスの影響などもあり、座学で学べる講義の部分については、eラーニングで学べる自治体もあるようです。

また研修実施回数についても、東京のように年に20回程度行っている自治体から、年に4回程度の実施にとどまる自治体まであるので、詳細は自身が実際に研修を受ける自治体に確認してください。

ここでは、いくつかの自治体の例をピックアップして紹介します。

自治体 受講形態
富山県 主催団体:一般社団法人富山県介護福祉士会 受講費用:5,000円(別途テキスト代1,000円) 開催形態:集合(1回50名、年3回)
千葉県 主催団体:千葉県(実施機関は社会福祉法人・千葉市社会福祉協議会) 受講費用:1,000円(別途テキスト代) 開催形態:集合(1回24名、年4回)
北海道 主催団体:北海道が指定する法人(2021年度は5法人) 受講費用:各法人により異なる(例/北海道デイサービスセンター協議会の場合には会員資格等により5,000〜1万円) 開催内容:開催回数等は各運営法人により異なる(例/上記協議会の場合には年2回の集合研修で各回50名ほど

各自治体の実施状況や受講料については、ホームページや社会福祉協議会、委託を受けた事業者のサイトで確認することができます。認知症介護基礎研修の関連情報が掲載されている自治体や社会福祉協議会のサイトをいくつかご紹介します。

東京都:東京都福祉保健局ホームページ(外部サイト)
神奈川県:神奈川県社会福祉事業団研修センター(外部サイト)
福岡県:福岡県庁ホームページ(外部サイト)
富山県:富山県介護福祉士会(外部サイト)
千葉市:千葉市ホームページ(外部サイト)

お住まいの自治体の情報を知りたい方は、「認知症介護基礎研修 自治体名」で検索してみてください。

認知症介護基礎研修の修了後のキャリア

現在、介護の世界には、さまざまな資格があります。こうした資格の取得を目指して学習することは、自分のキャリアアップや給与にダイレクトに反映されるだけではなく、日々の介護の中で必ず役に立ちます。

そこでここでは、認知症介護基礎研修を修了後に取り組んでみたい、3つの資格や研修について紹介します。

  • 認知症介護実践研修(実践者研修・実践リーダー研修)
  • 認知症介護指導者養成研修
  • 認知症ケア専門士

それぞれの資格、研修の概要や受講対象、受講料について解説していきます。

認知症介護実践研修(実践者研修・実践リーダー研修)

認知症介護基礎研修の次の段階の研修として存在するのが「認知症介護実践者研修」です。この研修は質の高い認知症介護を行う専門職員の養成を目的地して実施されています。

この研修の主催団体は、基本的に各自治体です。そのため実施回数や内容、受講資格などは各自治体により内容が異なります。例えば東京都の場合、以下のような受講資格が設けられています。

認知症介護実践者研修(東京都の場合)
  • 介護福祉士と同程度の身体介護に関する知識や技術を持っている
  • 認知症高齢者の介護実務経験が2年程度以上
  • 各施設、事業所において介護、看護のチームリーダー(主任/副主任/ユニットリーダーなど)の立場にあるか、近い将来具体的に予定されている

つまり、認知症介護基礎研修が個人のスキルの研鑽に主眼を置いているのに対し、認知症介護実践研修では、認知症介護にあたる職員のリーダーとなるべき人材の育成に主眼を置いています。

同じく東京都の例では、講義と演習が6日間、職場実習が2週間設けられており、最終日には実習内容をまとめたレポートの発表があります。

現在、グループホームや小規模多機能型居宅介護などでは、認知症介護実践者研修の修了者を配置する義務が求められています。さらに施設側ではこの研修を修了した職員がいると認知症加算が取れるため、この研修を修了しておけば、就職や転職に有利になるので、キャリアアップを目指すうえでぜひ受講しておきたい研修です。

気になる受講費用ですが、自治体によりかなりばらつきがあり、目安となるのは2万5,000円程度です。

認知症介護指導者養成研修

これまで紹介した研修が、主に現場で実際の介護をする際に役立つものだったのに対し、「認知症介護指導者養成研修」は指導する立場の職員向けの研修です。

自治体が主催する認知症介護基礎研修や、認知症介護実践研修の研修内容を企画および立案し、実際に講義や演習などを指導する立場に立てるだけの知識やスキルを身につけることが目的です。2001年から導入されました。

この研修の修了者は、介護職員に対してだけではなく、地域住民に対する研修や、認知症に対する理解ある地域作りのための活動などにも携わることが可能になります。

この研修を受けるためには、都道府県、政令指定都市、または介護保険事業者のトップから推薦を受ける必要があります。

さらに、受講には以下の条件をクリアしている必要があります。

認知症介護指導者養成研修(東京都の場合)
  • 医師や看護師、社会福祉士、介護福祉士もしくは精神保健福祉士の資格があること
  • 実際に福祉系大学や民間企業で介護に関する指導者的立場にある者
  • 地域ケアを推進する役割を担うことが見込まれている者

研修は施設における研修(前期/後期)と職場における研修が必要となります。受講費用は2021年実績で東京都の場合、23万円です。

認知症ケア専門士

出典:認知症ケア専門士 公式サイトよりWe介護編集部で作成

認知症ケア専門士は、一般社団法人日本認知症ケア学会が主催する、5年ごとの更新制の民間資格です。認知症ケアに対する高い専門性を有していることを示す資格だけに、合格率は概ね50%程度です。

認知症ケア専門士の受験資格
  • 認知症ケアに関する施設や機関で過去10年以内に3年以上の認知症ケアの実務経験がある

この資格の過去の取得者の内訳を見ると、やはり介護福祉士の取得率が高いものの、現場で役立つ知識が身につけられるため、医師や看護師などの医療関係者が取得を目指すケースも増えています。

試験は1次試験と2次試験に分かれており、1次試験は4分野あり各分野50問で合計200問、解答はマークシート式の5肢択一形式です。2次試験は論述試験となっています。

合格には各分野で70%以上の正答率が必要で、4分野すべて合格しないと1次試験合格になりませんが、各分野の合格有効期間が5年間設けられています。

これまでの実績では、試験は年に一度、全国5つの会場で行われ、受験料は1次試験が1分野3,000円、計4分野1万2,000円、2次試験は8,000円です。

著者/別当律子
監修者/斉藤正行

(参考)
認知症施策の総合的な推進について』(厚生労働省)
令和3年度介護報酬改定に関する審議報告』(厚生労働省)
認知症介護基礎研修シラバス』(認知症介護研究・研修センター)
認知症ケア専門士 公式サイト

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