介護職の給料アップは実現した? 処遇改善加算/特定処遇改善加算のいま

処遇改善加算・特定処遇改善加算とは? 介護職の給料アップは実現したのか

処遇改善加算・特定処遇改善加算は、どちらも介護職の給与アップを図るために、通常の介護報酬に上乗せして支払われる加算制度です。

この2つの加算の大きな違いは対象職種の違いです。処遇改善加算は介護職員全般を対象としているのに対し、特定処遇改善加算は主に勤続年数が長く、経験や技量に優れた職員を対象にしています。

2021年度介護報酬改定では、特定処遇改善加算の配分ルールが緩和され、より多くの事業者が加算を取得しやすいようになりました。その一方、処遇改善加算・特定処遇改善加算ともに職場環境等要件が厳格化され、毎年度で取り組むべき内容が示されました。

介護職の処遇改善は人材確保の面でも重要です。その切り札となるのが処遇改善加算と特定処遇改善加算。他産業との平均年収の差が約100万円あると言われているなか、加算を取得できる施設が増え、職員の給与アップ実現が望まれます。

特定処遇改善加算とは?

特定処遇改善加算とは、経験や資格のある介護職員の給料を月額で8万円アップさせるために導入された加算制度です。その仕組みやポイントについて解説します。

特定処遇改善ってなに?

「特定処遇改善加算」は、2019年の改定で新設された、従来の処遇改善加算にさらに加算を上乗せする制度です。

特定処遇改善加算とは、経験や技能に長けた介護福祉士の処遇改善を目的に、処遇回線加算に上乗せする形で創設。処遇改善加算(Ⅰ)月額3.7万円相当、処遇改善加算(Ⅱ)月額2.7万円相当、処遇改善加算(Ⅲ)月額1.5万円相当プラス特定処遇改善加算(Ⅰ)・特定処遇改善加算(Ⅱ)。目標は勤続10年以上の介護福祉士の月給役8万円アップ。

介護の現場では、以前から離職率の高さが大きな問題になっていました。その背景にあるのが処遇の問題で、キャリアのある職員の離職を防ぐ目的に、スキルと経験、そして資格を有する職員を対象に介護報酬をさらに加算して支給する制度です。

制度設計の基本となっているのが、「勤続年数10年以上の介護福祉士について月額平均8万円相当の処遇改善を行う」というものです。

処遇改善と何が違う?

処遇改善加算と特定処遇改善加算の違いは、加算の対象となる職員の要件です。

処遇改善加算は介護職員全般を対象としており、特定処遇改善加算は経験やスキルの高い職員を対象としています。

処遇改善加算と特定処遇改善加算の対象職員の違い。処遇改善加算:従事するすべての職員。※施設管理者やケアマネージャーは対象外。特定処遇改善加算:経験と技量に優れた介護職員(勤続10年以上の介護福祉士)※配分ルールに基づいてその他の職員への配分もOK

介護の現場では深刻な人手不足、そして離職率の高さが常に問題になっています。2018年に厚生労働省が発表した「介護労働実態調査の結果」によると、介護職の離職率は15.4%で、同年に同じく厚生労働省が発表した「雇用動向調査結果の概況」で発表された全職種の離職率14.6%と比較しても、介護職の離職率が高いことがわかります。

そのためまず導入されたのが、介護職全般の処遇改善を目指した「処遇改善加算」です。

その後、キャリアやスキル、そして介護福祉士としての資格を有する職員に対し、そのキャリアに見合った待遇に改善されるために設けられたのが「特定処遇改善加算」です。

算定要件は? 対象となる施設・職員は?

特定処遇改善加算の支給対象には「経験・技能のある介護職員」「他の介護職員」「その他の職種」の3つの区分が設けられており、この中で「経験・技能のある介護職員」については、「勤続10年以上の介護福祉士」であることが基本となります。

ただし、この「勤続10年」の捉え方については必ずしも該当施設での勤続年数ではなく、他の施設での勤続年数も通算して考えてよいなど、各事業所の裁量によって柔軟に設定することが可能です。

そして「勤続10年以上の介護福祉士」に対して支給された資金は、一定のルールの中で事業所の裁量で「他の介護職員」や「その他の職種」に配分されることが認められています。

事情所として加算要件を満たすためには、月額8万円の処遇改善となる人、または年収440万円以上となる人がいることが求められます。

サービスごとの加算率・手当額は?

特定処遇改善加算の取得要件には、以下のような規定が設けられています。

  • 処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅲ)までを取得していること

  • 処遇改善加算の職場環境等要件の中で「資質の向上」「労働環境・処遇の改善」「その他」の各区分で1つ以上の取り組みを行っていること

  • 処遇改善加算に基づく取り組みについて、ホームページへの掲載等を通じた見える化を行っていること
サービス区分 介護職員等特定処遇改善加算(Ⅰ) 介護職員等特定処遇改善加算(Ⅱ)
訪問介護 6.30% 4.20%
夜間対応型訪問介護 6.30% 4.20%
定期巡回・随時対応型訪問介護看護 6.30% 4.20%
(介護予防)訪問入浴介護 2.10% 1.50%
通所介護 1.20% 1.00%
地域密着型通所介護 1.20% 1.00%
(介護予防)通所リハビリテーション 2.00% 1.70%
(介護予防)特定施設入居者生活介護 1.80% 1.20%
地域密着型特定施設入居者生活介護 1.80% 1.20%
(介護予防)認知症対応型通所介護 3.10% 2.40%
(介護予防)小規模多機能型居宅介護 1.50% 1.20%
看護小規模多機能型居宅介護 1.50% 1.20%
(介護予防)認知症対応型共同生活介護 3.10% 2.30%
介護福祉施設サービス 2.70% 2.30%
地域密着型介護老人福祉施設 2.70% 2.30%
(介護予防)短期入所生活介護 2.70% 2.30%
介護保健施設サービス 2.10% 1.70%
(介護予防)短期入所療養介護 2.10% 1.70%
介護療養施設サービス 1.50% 1.10%
(介護予防)短期入所療養介護 1.50% 1.10%
(病院等(老健以外)) 1.50% 0.011%
介護医療院サービス 1.50% 0.011%
(介護予防)短期入所療養介護(医療院) 1.50% 0.011%
加算算定非対象サービス
(介護予防)訪問看護、(介護予防)訪問リハビリテーション、(介護予防)福祉用具貸与、特定(介護予防)福祉用具販売、(介護予防)居宅療養管理指導、居宅介護支援、介護予防支援

出典:『令和3(2021)年度介護職員処遇改善加算及び介護職員特定処遇改善加算の届出について』(宮崎県小林市ホームページ)よりWe介護編集部で作成

事業所内での配分ルールは?

特定処遇改善加算では、職員を以下の3つに分類します。

(A)経験と技量に優れた介護福祉士

(B)その他の介護職員

(C)それ以外のスタッフ

当初は「AはBの2倍以上」「CはBの2分の1を上回らない」というルールでしたが、2021年度の介護報酬改定によって「AはBより多く」と変更されました。

「その他の介護職員」と「それ以外のスタッフ」との財源配分は現行の「1対0.5」、さらに「リーダー級介護職員の中に1人以上は月8万円以上の賃上げ、もしくは年収440万円超となる人を設ける」という現行ルールに変更はありません。

極端に言えばCよりBが、BよりAの配分が上回ればよく、その際にCはBの2分の1を上回らないことが決められているだけで、事業所の配分裁量がより大きくなっています。

配分ルールを緩和した背景は、処遇改善加算については9割を超える介護職が加算を受けているのに対し、特定処遇改善加算の算定率は2020年6月時点で65.6%にとどまっている状況が挙げられます。

一部のベテラン職員だけの賃金を上げるのでは職場の理解が得られなかったり、チームワークに悪影響が出てしまうため、経営者のなかには特定処遇改善加算の取得をあえてしないケースもありました。

そのため、その他の介護職員の賃金も上げやすい配分ルールに変更し、より使い勝手の良い制度に変更されました。

そもそも処遇改善加算とは?

次に特定処遇改善加算の土台ともなっている、処遇改善加算の仕組みについて解説します。

処遇改善加算も今回の改定で取り組み区分が変更になっています。すでに9割を超える介護職員が取得している加算だけに、改定により混乱が起きないよう、基本的な仕組みについて今一度チェックしておきましょう。

処遇改善加算とは?

広く介護業界で働く人材を対象に、給与水準を向上させることで人材の定着率アップを目指して導入されたのが「介護職員処遇改善加算」です。

処遇改善加算とは、介護職の採用強化と人材定着を目指して2012年に創設。
出典:『令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要(案)』(厚生労働省)よりWe介護編集部で作成

この制度は2011年まで実施されていた介護職員処遇改善交付金を引き継ぐ形で2012年に運用が開始されたもので、この制度を活用して加算を取得した事業所は、加算額に相当する賃金改善を実施しなければならないと規定されています。

今回の改定前の5区分ベースの金額になりますが、今回の改定でも残る上位3各区分別の介護職員1人当たりの加算額は以下のようになります。

  • 加算(Ⅰ):37,000円
  • 加算(Ⅱ):27,000円
  • 加算(Ⅲ):15,000円

算定要件は? 対象となる施設・職員は?

特定処遇改善加算と異なり、介護職員処遇改善加算の対象は幅広く、介護サービスに従事する介護職員はすべて対象となります。

ただし、サービス提供責任者は加算の対象に含まれますが、管理者やサービス管理責任者、ケアマネジャーは加算の対象外になっています。

そして介護職員処遇改善加算は、雇用形態や資格の有無に関係なく対象職員になることができます。そのためパートや派遣社員といった非正規職員であっても対象職員に含まれます。

なお、事業者が処遇改善加算を得るための算定要件には、「キャリアパス要件」と「職場環境要件」があり、以下の要件を満たしていることが求められます。

キャリアパス要件

  1. 職位・職責・職務内容に応じた任用要件と賃金体系の整備をすること
  2. 資質向上のための計画を策定して、研修の実施または研修の機会を設けること
  3. 経験もしくは資格等に応じて昇給する仕組み、または一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組みを設けること

職場環境等要件

賃金改善以外の処遇改善(職場環境の改善など)の取り組みを実施すること

サービスごとの加算率・手当額は?

加算率と算定要件は、以下のようになっています。

サービス区分 介護職員処遇改善加算(Ⅰ) 介護職員処遇改善加算(Ⅱ) 介護職員処遇改善加算(Ⅱ)
訪問介護 13.7% 10.0% 5.5%
夜間対応型訪問介護 13.7% 10.0% 5.5%
定期巡回・随時対応型訪問介護看護 13.7% 10.0% 5.5%
(介護予防)訪問入浴介護 5.8% 4.2% 2.3%
通所介護 5.9% 4.3% 2.3%
地域密着型通所介護 5.9% 4.3% 2.3%
(介護予防)通所リハビリテーション 4.7% 3.4% 1.9%
(介護予防)特定施設入居者生活介護 8.2% 6.0% 3.3%
地域密着型特定施設入居者生活介護 8.2% 6.0% 3.3%
(介護予防)認知症対応型通所介護 10.4% 7.6% 4.2%
(介護予防)小規模多機能型居宅介護 10.2% 7.4% 4.1%
看護小規模多機能型居宅介護 10.2% 7.4% 4.1%
(介護予防)認知症対応型共同生活介護 11.1% 8.1% 4.5%
介護福祉施設サービス 8.3% 6.0% 3.3%
地域密着型介護老人福祉施設 8.3% 6.0% 3.3%
(介護予防)短期入所生活介護 8.3% 6.0% 3.3%
介護保健施設サービス 3.9% 2.9% 1.6%
(介護予防)短期入所療養介護 3.9% 2.9% 1.6%
介護療養施設サービス 2.6% 1.9% 1.0%
(介護予防)短期入所療養介護 2.6% 1.9% 1.0%
(病院等(老健以外)) 2.6% 1.9% 1.0%
介護医療院サービス 2.6% 1.9% 1.0%
(介護予防)短期入所療養介護(医療院) 2.6% 1.9% 1.0%
加算算定非対象サービス
(介護予防)訪問看護、(介護予防)訪問リハビリテーション、(介護予防)福祉用具貸与、特定(介護予防)福祉用具販売、(介護予防)居宅療養管理指導、居宅介護支援、介護予防支援

出典:『令和3(2021)年度介護職員処遇改善加算及び介護職員特定処遇改善加算の届出について』(宮崎県小林市ホームページより)We介護編集部で作成

事業所内で配分ルールは?

特定処遇改善加算については、事業所内での配分方法について規定が設けられていることをこれまで説明してきました。

一方、処遇改善加算に関しては、配分に関してそこまで厳格なルールは設けられておらず、加算対象ではない職員に対して配分するための規定は存在しません。

そのため加算分を事業所内で誰に支給するのか、配分の割合はどうするのかいった裁量は事業所に委ねられています。

ただし、支給された金額はすべて介護職員に還元することが定められています。

2021年度介護報酬改定で処遇改善加算・特定処遇改善加算はどう変わるか

今年2021年4月に、3年に一度行われる介護報酬改定がありました。今改定のポイントは大きく分けて以下の3点です。

  1. 特定処遇改善加算の配分ルールが緩和
  2. 介護職員処遇改善加算の職場環境等要件が厳格化
  3. 処遇改善加算の下位区分(加算IV、V)が廃止

ここではこの3つを中心に、今回の改定のポイントについて解説していきます。

特定処遇改善加算の配分ルールが緩和

特定処遇改善加算の配分ルール(比率)が緩和。職員を経験と技量に優れた介護福祉士(A)、その他の介護職員(B)、それ以外のスタッフ(C)の3つに分類し、平均賃上げ額について、「AはBの2倍以上Cは Bの2分の1以下(2対1対0.5)の範囲に収める」という厳格なルールが設けられています。  このルールが今回改定され、「2対1」が廃止になり、代わりに「より高くする」という表現に改められました。
出典:『令和3年度介護報酬改定の主な事項について』(厚生労働省)よりWe介護編集部で作成

1つ目の変更点は、特定処遇改善加算の配分ルールが緩和された点です。

特定処遇改善加算では、職員を経験と技量に優れた介護福祉士(A)、その他の介護職員(B)、それ以外のスタッフ(C)の3つに分類し、平均賃上げ額について、これまでは「AはBの2倍以上、CはBの2分の1以下(2対1対0.5)の範囲に収める」という厳格なルールが設けられていました。

今回、このルールが改定され「2対1」が廃止になり、代わりに「より高くする」という表現に改められました。

これによって一般の介護職員にも加算が配分されやすくなり、賃金アップが期待できます。

職場環境等要件が厳格化

2つ目は、処遇改善加算、特定処遇改善加算の両方の加算にかかわる「職場環境等要件」が厳格化された点です。

2:職場環境等要件が厳格化。特定処遇改善加算:毎年度それぞれのカテゴリごとに1つ以上の施策を実施することが求められる。※2021年度のみ3つのカテゴリを選択してそれぞれに1つ以上の施策を実施。。処遇改善加算:カテゴリや施策の数に限りなし。1つ以上の施策を実施うることが求められる。以下区分:施策内容。入職促進に向けた取組:理念やケア方針などの明確化 ・幅広い年齢層や、他産業からの採用の仕組み構築 ・介護職員の魅力を向上させる取り組みの実施。資質の向上やキャリアアップに向けた支援:資格取得の支援や研修の実施・メンター制度などの導入。両立支援・多様な働き方の推進:子育てや家族の介護にかかわる休業制度の充実・有給休暇を取得しやすい環境づくり。腰痛を含む心身の健康管理:介護ロボットなどの導入・ストレスチェックなどの実施。生産性向上のための業務改善の取組:ICT活用による業務量の削減・5S活動(整理・整頓・清掃・清潔・躾)の実践。やりがい・働きがいの醸成:職員の気づきを踏まえた勤務環境やケア内容の改善・モチベーション向上につながる地域住民との交流
出典:『介護保険最新情報Vol.935』(厚生労働省)よりWe介護編集部で作成

「職場環境等要件」が今回の改定で6つのカテゴリに区分され、カテゴリごとに取り組むべき施策が複数提示されました。

  • 入職促進に向けた取組
  • 資質の向上やキャリアアップに向けた支援
  • 両立支援・多様な働き方の推進
  • 腰痛を含む心身の健康管理
  • 生産性向上のための業務改善の取組
  • やりがい・働きがいの醸成

それぞれの内容は厚生労働省老健局の介護保険最新情報Vol.935(P19)でご確認ください。

特定処遇改善加算を得るためには、各事業所はこの6つのカテゴリごとに示された複数の施策の中から、各々1つ以上の施策に年度ごとに取り組むことが必須となりました。

ただし、経過措置も設けられており、2021年度に限っては6つのカテゴリの中から3つを選択し、それぞれ1つ以上の施策に取り組めばよいとされています。

そして「処遇改善加算」については、取り組むべき6つのカテゴリと施策は同じですが、いずれか一つを年度ごとに実施すれば良いとされており、取り組む内容は特定処遇改善加算の施策と重複しても問題ありません。

処遇改善加算の下位区分(加算IV、V)が廃止

3つ目は、今回の改定で「加算IV」「加算V」の加算配分が低い2つの区分が廃止されるという点です。

処遇改善加算の下位区分が廃止。処遇改善加算(Ⅳ):取得率0.3%・処遇改善加算(Ⅴ):取得率0.5%の2つが2022年度から改善廃止。※2020年度末時点で算定している事業所のみ経過措置1年
出典:『令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要』(厚生労働省)よりWe介護編集部で作成

この2つの区分の廃止は2018年度に既に決定されており、現在は「経過的に継続」とされている状態でした。廃止の背景には上位加算への移行が進んでいることがあり、正式に廃止が決定されたことで、さらに上位加算への転換が加速されることが見込まれています。

ただし、2021年3月時点で「加算IV」「加算V」加算を算定している介護サービス事業所については、1年の経過措置が設けられています。

処遇改善加算・特定処遇改善加算で介護職の給与アップは実現したのか?

処遇改善加算や特定処遇改善加算は、いずれも介護職に対し、特に給与面での待遇改善をすることで離職に歯止めをかけ、さらには新規の人材が参入することを目的に導入された制度です。

では現状、制度の導入により、介護職の給与アップは実現したのでしょうか?

特定処遇改善加算による給与アップはリーダー職で月額約2万円

特定処遇改善加算は、制度上だけで見れば、対象となる職員は月額平均8万円の賃上げとなるはずです。しかしこれまで解説してきたように、実際には事業者内でその他職員に対して配分される分があるため、実際には加算対象者の給与は、それほど急激に上昇はしていません。

特定処遇改善加算による給与アップの現状。A:経験と技量に優れた介護福祉士:2万1700えんアップ/月。B:その他の介護職員:9339円アップ/月。C:それ以外のスタッフ:4585円アップ/月
出典:『2019年度介護報酬改定₋介護職員等特定処遇改善加算アンケート結果について』(独立行政法人・福祉医療機構)よりWe介護編集部で作成

独立行政法人・福祉医療機構が、介護施設や事業所を運営している4,872法人を対象にした調査を行なった結果、平均的には直接の加算対象者となるリーダー級グループで月額約2万円、その他の介護士グループで約1万円、介護士以外の職種グループで約5,000円の上昇という結果になっています。

介護職の施設形態別の給料

職員の待遇改善のためにさまざまな制度が導入されてきた介護の現場ですが、現在の待遇の実状はどうなっているのでしょうか?

厚生労働省が行っている「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、正規職員の施設形態別の給与実態は次のようになっています。

施設形態 平均給与額(月給) 平均給与額(年収)
特別養護老人ホーム 36万1,890円 434万2,680円
介護老人保険施設 35万0,380円 420万4,560円
介護付有料老人ホーム 33万9,510円 407万4,120円
訪問介護事業所 31万4,440円 377万3,280円
グループホーム 30万3,800円 364万5,600円
通所介護事業所 29万4,980円 353万9,760円
通所リハビリテーション事業所 31万4,020円 378万2,240円
小規模多機能型居宅介護 30万3,760円 368万1,120円
介護療養型医療施設 32万9,850円 395万8,200円
介護医療院 32万3,950円 388万7,400円

出典:『令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果』(厚生労働省)よりWe介護編集部で作成

なお、2020年に介護職で組織する労働組合「UAゼンセン日本介護クラフトユニオン(NCCU)」が発表した「就業意識実態調査」の結果によると、月給で勤める介護職員の昨年の平均年収は359万8,000円となっています。

一方、厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、全産業の昨年の平均年収は463万4,900円なので、介護職員は平均より103万6,900円少ないことになります。

介護職の待遇改善の切り札として登場した処遇改善加算や特定処遇改善加算ですが、事業所内配分の絡みもあり、思いのほか給与が上がっていない現実が浮かび上がってきました。

ただしNCCUの同調査が始まった2009年には、格差は166万3,500円だったため、各種制度の導入により、待遇改善の兆しは見え始めているといえます。

処遇改善加算・特定処遇改善加算以外にも、介護職員の給料アップにつながる施策が実施されています。

  • 2021年度介護報酬改定で報酬全体が+0.7%のプラス改定となった
  • サービス提供体制強化加算の該当するサービスに、介護福祉士の割合や勤続年数の長い職員の割合が高い事業者を評価する区分の創設、訪問介護に勤続年数の長い職員の割合が高い事業者を評価する特定事業所加算(Ⅴ)の創設された
  • 全サービスに人員配置基準や報酬算定における常勤・常勤換算について、週30時間以上の短時間勤務等を行う場合にも「常勤」「常勤換算1」として取り扱うことが可能に変更された。また、育児・介護休業取得の際の非常勤職員による代替職員の常勤換算が可能に変更された

これらの施策に加えて今後さらなる状況改善がなされ、介護の現場が誰もが夢を持って働ける現場になることが望まれます。

著者/別当律子
監修者/鈴木亘

(参考)
介護保険最新情報Vol.935』(厚生労働省)
令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要』(厚生労働省)
令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果』(厚生労働省)
令和3年度介護報酬改定の主な事項について』(厚生労働省)
令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要(案)』(厚生労働省)
令和3(2021)年度介護職員処遇改善加算及び介護職員特定処遇改善加算の届出について』(宮崎県小林市ホームページ)
2019年度介護報酬改定₋介護職員等特定処遇改善加算アンケート結果について』(独立行政法人・福祉医療機構)

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