設備の清掃は業者任せにせず、職員がルールを決めて行いましょう。居室や廊下などの清掃ルールの一例をご紹介します。また感染防止対策として、施設で家庭用加湿器を使う際のコストについて検証したデータもご紹介します。
【例を紹介】居室などの清掃規則
設備の清掃は業者任せにせず、職員がルールを決めて行いましょう。居室などの清掃規則の一例をご紹介します。
居室の衛生管理(定期清掃)
- 居室床の掃き掃除→毎日
- タンス、整理ボックス、オーバーテーブル、ベッド柵のふき掃除→毎日
- ベッドパッドの乾燥消毒→週1回以上
- マットレスの乾燥消毒→年1回以上
- ポータブルトイレ、尿器→使用の都度洗浄、週1回消毒
- 殺菌灯による居室の消毒→月1回30分程度
- 居室内換気→換気システムを使用し適切な温度と湿度を保つ
- 湯のみ、水のみ、歯ブラシ、コップの消毒→週1回
- 体温計、冷却枕、爪切り、耳かき→使用の都度アルコール綿でふいて消毒
- シーツ、オムツなどのリネン類の交換には、周囲を汚さないようランドリーボックスやバケツを利用する(※便や尿で汚染されたものは、その都度消毒を行う)
居室以外の建物設備の衛生管理
- 廊下、階段の掃き掃除→毎日
- 廊下、階段の手すり、ドアノブなどの清拭消毒→週1回
- 食堂の掃き掃除、備品の清拭消毒→毎日
【危険箇所】トイレと浴室の衛生管理について
外食チェーンのトイレは、3時間おきにアルコール系の洗剤でふき掃除をしたうえ、チェック表に清掃実施者の氏名を書き込むのがルールです。介護施設のトイレ清掃は、どのように管理されているのでしょうか。チェック表が掲示されたトイレは、あまり見かけません。
浴室に循環式浴槽を使っている施設は、レジオネラ属菌が繁殖しないように、保健所から定期検査が義務づけられています。そのため、比較的管理されているものです。しかし、洗い場や入浴用具などの清掃はどうでしょうか。浴室とトイレはノロウイルスの二次感染の危険性が高い場所なので、薄めた次亜塩素酸ナトリウムの使用も視野に入れる必要があります。
介護施設では体調管理のために加湿器を設置していますが、家庭用の加湿器を使用している施設も多いのではないでしょうか。ここでは、家庭用加湿器を施設で使用する際のコストについて考えます。
家庭用加湿器は「コスト倒れ」になる可能性も
従来型の多床室で、家庭用の比較的大きな加湿器を1部屋に1つ、11月から3月まで稼働させている施設があります。家庭用加湿器1台では、多床室の湿度は高くても30%くらいにしかなりませんから、50%の湿度が必要なインフルエンザ予防にはなりません。電気代や給水にかかる職員の人件費は莫大で、コスト倒れの対策と言えます。
インフルエンザウイルスと湿度の関係
季節性インフルエンザが流行する毎年11月~3月には、特別養護老人ホームでは加湿器がフル稼働します。インフルエンザウイルスは、湿度が高くなると生存率が著しく低下することがわかっているからです。
まだ感染者が出ていない介護施設でも、今後感染者が出れば加湿器に頼るかもしれません。このインフルエンザウイルスの性質は過去に論文で発表されており(下の表参照)、これを見ると温度20.5~24°C、湿度50%以上で6時間後の生存率が下がることがわかります。
【検証】家庭用加湿器を施設で使うコストを計算
さて、ここからは実際に特養で家庭用加湿器をフル稼働させた場合に発生するコストをシミュレーションしていきましょう。
【施設の概要】
①特養:入所120名、短期入所15名
②デイサービス42名
③ケアハウス50名
④訪問介護事業所
⑤居宅介護支援事業所:地上5階建て、加湿器稼働期間5ヵ月間(11月~3月)
【家庭用加湿器】
110台(スチーム式80台、ミスト式30台)
給水回数1台1日平均3回
給水と洗浄時間平均5分
①電気代:861,150円(1ヵ月172,230円×5ヵ月)
1ヵ月電気料金:スチーム式1,872円×80台+ミスト式749円×30台
合計172,230円
(電気消費量はスチーム式は200W、ミスト式は80W、電力料金単13円/1kw時、24時間30日稼働として計算)
②人件費:4,248,750円(1ヵ月849,750円×5ヵ月)
1ヵ月の人件費:1日3回×5分×110台×30日=825時間(1ヵ月の労働時間)×1,030円
合計849,750円
(平均月収34万円、時給換算1,030円として計算)
上の図をみればおわかりの通り、家庭用加湿器を使用する場合、1シーズン1施設に必要なコストは実に510万円以上になるのです。驚きの結果と言えるでしょう。
著者/山田滋
監修/三好春樹、下山名月
編集協力/東田勉
イラスト/松本剛
※本連載は『完全図解 介護リスクマネジメント トラブル対策編』(講談社/2018年2月14日発売)の内容より一部を抜粋して掲載しています