介護施設では、食事の衛生管理基準が甘すぎるのが実情です。食品の管理と調理、清掃などは厳しく行うべきでしょう。注意したいポイントを、わかりやすく解説していきます。
食事の衛生管理は施設運営の基本
一般の給食業者は、厚生労働省の「大量調理施設衛生管理マニュアル」の遵守が求められています。しかし、このマニュアルは健常者に対する衛生管理の基準なので、免疫力の低い幼児や高齢者などの施設では、もっと厳しくあるべきだという識者もいるほどです。
たとえば、食材を冷蔵庫で管理する場合の温度も、基準より2℃以上低くしないと、食中毒を起こしかねないと指摘されています。介護施設の衛生管理者は、そのことを十分意識した運営を心がけましょう。
また、食材受け入れ→食材洗浄→調理→盛りつけ→保存、の全ての調理工程を分離し、その都度、調理器具を熱処理または交換する必要もあります。
食品の衛生管理で気を付けたい4つのポイント
食品の衛生管理においては、「調理服の着用順序」「調理器具の滅菌方法」「食材の温度管理」「厨房の床を清潔に保つ」、この4つのポイントが重要になります。
調理服を着用する順序

①調理帽をかぶり、②服を着替え、③靴をはき替え、④その後に手をよく洗います。この順序が逆になると靴の雑菌が服に付き、髪の毛が服に落ちたり髪の塵が服に付いたりしてしまいます。
調理器具などの減菌方法

包丁やまな板などの減菌方法は加熱処理が正解で、消毒剤や洗剤ではありません。0-157は75 °Cで1分、ノロウイルスは85°Cで1分など、おもな病原体の熱処理温度と時間を覚えましょう。
食材や製品などの温度管理

厚生労働省の「大量調理施設衛生管理マニュア ル」では、食肉10°C以下、生食カキ10°C以下、液卵8°C以下が基準とされていますが、介護施設ではそれより2°C以上低くしたいものです。
厨房の床を清潔に保つ

厨房の床は、通常コンクリートにタイル張りです。水を流すことを前提にしているためですが、食材の破片が床に落ちたままだと大変不衛生なので、こまめな掃除が必要です。
【わかりやすく解説】食堂と配膳の衛生管理
続いて、施設の食堂と、食事を配膳する際の衛生管理の注意点について解説していきます。
食堂の衛生環境はどうか

玄関を入ったエントランスやデイサービスを行うパブリックな空間と食堂との間に、仕切りの扉がない施設は問題があります。食堂は2階以上の居住スペースに設けましょう。
食事介助する職員の衛生管理

介護職は、排泄介助時にはいている靴や着ている服で食事介助をしています。これではせっかく手洗いをしても意味がないので、せめて食事介助用のエプロンを着用しましょう。
帽子を着用して配膳する

厨房の調理員は、髪の毛が食事に混入しないように帽子をかぶっています。小学校の給食当番でさえかぶっているのに、食堂で無帽の職員が食事を配膳しているのは問題です。
食堂の清掃状況は要確認

食堂のテーブルは配膳前にクロスでふきますが、椅子や床はどうでしょう。食堂のすぐ横に使わなくなったステージがあり、そこはほこりだらけという施設も少なくありません。
居室に持ち込まれた食べ物について
施設が感染源というわけではありませんが、家族が持ち込んだ食べ物によって食中毒が起こることもあります。そのため、食べ物の持ち込みを禁止したり、全て職員に申し出てもらう施設もあるようです。
家族にお願いする場合、持ち込みは可として、食べ残しだけは持ち帰ってもらいましょう。同室の入所者へのお裾分けは、飲み込みの機能が低下したお年寄りもいるので禁止が妥当です。
著者/山田滋
監修/三好春樹、下山名月
編集協力/東田勉
イラスト/松本剛
※本連載は『完全図解 介護リスクマネジメント トラブル対策編』(講談社/2018年2月14日発売)の内容より一部を抜粋して掲載しています