施設の感染症対策の参考になるのは、医療機関の院内感染症対策です。ただし、医療と介護では内容が異なるので注意が必要です。「スタンダード・プリコーション」を例に、感染症対策マニュアルづくりのコツを解説します。
介護施設の独自性をいかに保つか
医療の世界には、「【参考】院内感染症対策の基本」で示すように、厳しい院内感染症対策の基本があります。それがスタンダード・プリコーションと呼ばれるものです。
これらは、おもに医療従事者が行う対策ですが、入院患者にもさまざまな影響が出ます。こうした規制だらけの環境にいれば、少なからず自由が制限されることになるからです。
介護施設でも、医療機関のスタンダード・プリコーションを参考に職員が守るべき標準予防策の規定をつくり、それを徹底しなければなりません。
しかし、医療と介護では、その内容が異なります。マスク、手袋、ガウンの着用は、利用者に疎外感を与え、精神的に傷つける面もあるので注意が必要です。
スタンダード・プリコーションとは何か

スタンダード・プリコーション(標準予防策)とは、医療機関で行われる院内感染症対策の基本で、「特定の感染症や疾病を対象とせず、標準的に講じられる感染症対策」のことです。
その目的は、血液やその他の体液への接触を最低限にすることで、汗を除く全ての患者の血液、体液、粘膜および損傷した皮膚を感染の可能性のある対象として対応することにより、患者と医療従事者双方に対する院内感染の危険性を減少させるものです。
【参考】院内感染症対策の基本
下記に示したのは「日本医療福祉設備協会管理指針」の抜粋です。介護施設で感染症対策マニュアルをつくる場合は、あくまでも参考にとどめてください。

著者/山田滋
監修/三好春樹、下山名月
編集協力/東田勉
イラスト/松本剛
※本連載は『完全図解 介護リスクマネジメント トラブル対策編』(講談社/2018年2月14日発売)の内容より一部を抜粋して掲載しています