体のねじれを改善。拘縮の方の側臥位の正しいポジショニング

拘縮の方の「ねじれ」を解消 | 傾きの確認方法とポジショニングを解説

拘縮のある方の体のねじれているのを見たことはありませんか?ねじれを解消するためのポジショニングと、側臥位にするときの正しいポジショニングについて解説していきます。

【事例1】体がねじれている利用者Aさん

右足が伸展位(しんてんい)で、左足が屈曲位(くっきょくい)の利用者Aさんは、脳血管障害の既往歴がなく、寝たきりの状態であるため、拘縮の種類は筋性拘縮が考えられます。

体がねじれてしまう逃避姿勢とは

脊椎にねじれがある状態で長時間同じ姿勢でいると背中に痛みがでて、その痛みによって背中の筋緊張が高まります。

自分でねじれを直せないとき、利用者さんは痛みを緩和させようとして片足を伸ばし、もう一方の足を曲げる姿勢になる傾向があります。これを逃避姿勢と言います。

脊椎のねじれに加えて、体が左右のどちらかに傾いてしまっている利用者さんは多くいます。そのような方は両足とも曲がっており、その片足だけがより強く曲がっている状態になっている傾向があります。

このポイントを知っていれば、この状態の利用者さんを見たときに「脊椎がねじれている状態だ」と推察できるようになります。

このねじれを少しでも改善できれば、全身の筋緊張が高まるのを予防することができ、更衣や排泄などの介助も行いやすくなります。

【拘縮による体のねじれを改善するポジショニング】両肩の位置、腰の出っ張る部分2点を水平にする。肘の下にクッションを置く。膝下の隙間をしっかり埋める。足先が揃っており、足裏がベッドに全面ついている。

ねじれや傾きのチェック方法

利用者さんの両足を揃えてみて、両膝の位置が揃えば、ねじれや傾きがないことがわかります(※ただし、大腿骨頸部骨折などによって左右の足の長さが生じている方は除きます)。

しかし、足の状態だけで判断すると、脊椎のねじれや傾きを見逃してしまうことが多々あります。それは大腿骨頸部骨折の後遺症などの要因が、足の長さを変えることがあるからです(※大腿骨頸部骨折は、高齢者の寝たきり状態の原因として上位に入っています)。

より正確にチェックするには、下記の2点を確認しましょう。

  • 両肩の位置
  • 上前腸骨棘(じょうぜんちょうこつきょく。骨盤の左右の前方にある骨)の位置

この2つの位置が左右対称になっているかを確認することで、脊椎がねじれていないか、傾いていないかを確認できます。

【拘縮による脊椎のねじれ・傾きを確認する方法】左右対称になっているかを確認する。①両肩の位置②上前腸骨棘の位置③両膝の位置

ねじれや傾きを確認し、正しい位置に直したら、両足の下側にしっかりクッションを入れましょう。クッションの入れ方について、詳しくはこちらの記事『拘縮の股関節・手指・肩を開く | おむつ交換や更衣介助のコツ』で解説しています。

【事例2】半側臥位にすると筋緊張が高まる利用者Bさん

利用者Bさんには、寝たきりによる筋性拘縮がみられます。仰臥位(ぎょうがい)のときには筋緊張が緩むようになりましたが、褥そう予防のために体位変換をして、ベッド30度の側臥位(そくがい)、もしくは半側臥位(はんそくがい)にすると、筋緊張が再び高まってしまいます。

側臥位はねじれを起こしやすい

全身性の拘縮が起きている方の場合、片方もしくは両足が曲がっている状態になっているケースが多いと思います。

褥そう予防のために体位変換を実施すると思いますが、推奨されることの多いベッド30度の側臥位、もしくは半側臥位(はんそくがい)は、両足が曲がっている状態の方に実施した場合、より脊椎のねじれを引き起しやすくなります(下の画像の図1)。

【反側臥位(または30度側臥位)のポジショニング】体がねじれている。間違ったポジショニング

自動体交装置やスモールチェンジ法には要注意

褥そう予防のため、自動体交装置を導入したり、スモールチェンジ法を行うこともあると思います。スモールチェンジ法とは、機械やタオルなどを使用して、例えば左肩→左腰→左足といった順番で、一定の時間ごとに体圧がかかる部分を変えていく手法です。「これらを導入したり、実践したことによって褥そうは改善したけど拘縮がより進行した」という相談をいただきます。

筆者の経験で言えば、このトラブルは実際によくあります。

もし、健常者にこれらを実施した場合を考えてみましょう。実施されたときの感覚としては、「少しマットレスが傾いて気になるかな?」程度の違和感で済みますし、実際に体圧がかかっている部分が動くため、褥そう予防になることを実感することもできます。

しかし、実施するのは寝たきり状態で、全身性の拘縮があり、屈曲位の傾向がある方々です。その方々に自動体交装置やスモールチェンジ法を実施すると、体のねじれを引き起こしやすく、痛みなどの不快感から筋緊張をより高めてしまいます。結果として、褥そうは改善しても拘縮が悪化してしまうことがほとんどです。

実施する場合にはポジショニング方法に工夫を

とはいえ、実際には側臥位や半側臥位、スモールチェンジ法、自動体交装置を行わなければならない方もいますし、必要な状況の現場もあると思います。

そのようなときは、足の下を支えることも大事ですが、ねじれが起きないように大きめのクッションや枕、毛布を丸めたものなどを、傾いている側の下肢の側方にあてがうことによってねじれを引き起こさないようにすることができます(上の画像の図2)。

足や背中の下に入れるクッションが柔らかすぎるとねじれが大きくなりやすくなります。硬めのクッションでポジショニングを行うようにしましょう。

著者/田中義行
イラスト/アライヨウコ

事例で学べる介護技術の記事一覧