介護業界に寄せられるクレームの傾向を掴みましょう。利用者の家族がどういったポイントに不満を感じているかを知ったうえで、「クレームをトラブルに発展させないこと」が大切です。
苦情実態調査から学べることは?
介護保険サービスの内容に対する苦情には、解決のしくみづくりを行うよう介護保険法によって定められました。それを受けて、国民健康保険組合連合会(国保連)を窓口にした苦情受付が制度化されたのです。
国保連は苦情を受け付けたらまず、該当する事業者に対して中立の立場から調査に入ります。調査の結果、事業者側の対応に問題があると判断された場合、指導や助言を行うことがおもな役割です。
国保連に寄せられた苦情を分析すると、事故が発生したこと自体に対する苦情はあまり多くありません。事故自体よりも、その後の施設の対応の悪さに対して家族は大きな不満を抱いていることがわかります。
クレームをトラブルに発展させないためには?
介護現場で事故が起こった際に、対応を間違えると大きなトラブルにつながることはすでに本連載第50回~第64回で見てきました。こうした「適切な事故対応」と同じくらいに大切なのが「適切なクレーム対応」です。
上のイラストのように、事故対応について不満を訴える家族に対して、詳しい調査もせずに事業者側の正当性を主張するようではいけません。こういう対応をする職員は、おそらくトラブルになったら困ると思って自分たちの正当性を主張したくなるのでしょう。しかし、これでは家族の心情を傷つけてしまい、よけいにトラブルに発展しやすくなってしまいます。
クレーム対応で大切なのは、 正当性を相手に理解させることではありません。「どちらが正しいか」をはっきりさせることよりも、「クレームがトラブルにつながらないようにすること」を心がけるほうが、結果としてよい方向に進むものです。
著者/山田滋
監修/三好春樹、下山名月
編集協力/東田勉
イラスト/松本剛
※本連載は『完全図解 介護リスクマネジメント トラブル対策編』(講談社)の内容より一部を抜粋して掲載しています