家族からのクレーム対応のポイントを解説「トラブルに発展させないこと」|トラブル対策編(第65回)

家族からのクレーム対応のポイントを解説「トラブルに発展させないこと」 | トラブル対策編(第65回)

介護業界に寄せられるクレームの傾向を掴みましょう。利用者の家族がどういったポイントに不満を感じているかを知ったうえで、「クレームをトラブルに発展させないこと」が大切です。

苦情実態調査から学べることは?

介護保険サービスの内容に対する苦情には、解決のしくみづくりを行うよう介護保険法によって定められました。それを受けて、国民健康保険組合連合会(国保連)を窓口にした苦情受付が制度化されたのです。

国保連は苦情を受け付けたらまず、該当する事業者に対して中立の立場から調査に入ります。調査の結果、事業者側の対応に問題があると判断された場合、指導や助言を行うことがおもな役割です。

国保連に寄せられた苦情を分析すると、事故が発生したこと自体に対する苦情はあまり多くありません。事故自体よりも、その後の施設の対応の悪さに対して家族は大きな不満を抱いていることがわかります。

国保連に寄せられる介護事故に関する苦情の内訳のグラフ。8割は事故発生後の施設側の対応に対する苦情など。残りの2割は事故を未然に防げなかったことに対する苦情など。

クレームをトラブルに発展させないためには?

介護現場で事故が起こった際に、対応を間違えると大きなトラブルにつながることはすでに本連載第50回~第64回で見てきました。こうした「適切な事故対応」と同じくらいに大切なのが「適切なクレーム対応」です。

【施設側の対応に関する苦情をさらに分類すると】事故発生時の対処方法が悪かった→本連載の第50回~第64回を参照。事故後の対応姿勢(態度)が悪かった。→今回からのテーマ

上のイラストのように、事故対応について不満を訴える家族に対して、詳しい調査もせずに事業者側の正当性を主張するようではいけません。こういう対応をする職員は、おそらくトラブルになったら困ると思って自分たちの正当性を主張したくなるのでしょう。しかし、これでは家族の心情を傷つけてしまい、よけいにトラブルに発展しやすくなってしまいます。

クレーム対応で大切なのは、 正当性を相手に理解させることではありません。「どちらが正しいか」をはっきりさせることよりも、「クレームがトラブルにつながらないようにすること」を心がけるほうが、結果としてよい方向に進むものです。

著者/山田滋
監修/三好春樹、下山名月
編集協力/東田勉
イラスト/松本剛

※本連載は『完全図解 介護リスクマネジメント トラブル対策編』(講談社)の内容より一部を抜粋して掲載しています

書籍紹介

完全図解 介護リスクマネジメント トラブル対策編

介護リスクマネジメント  トラブル対策編

出版社: 講談社

山田滋(著)、三好春樹(監修)、下山名月(監修)、東田勉(編集協力)
近年、介護事業者と家族のトラブルが増加しています。介護現場は、トラブルになりやすい事故が多いにもかかわらず、対策が未熟な施設が少なくありません。事故が起きた際の適切な対応手順をしっかり学べる一冊です。

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  • 山田滋
    株式会社安全な介護 代表

    早稲田大学法学部卒業と同時に現あいおいニッセイ同和損害保険入社。支店勤務の後2000年4月より介護事業者のリスクマネジメント企画立案に携わる。2006年7月よりインターリスク総研主席コンサルタント、2013年5月末あいおいニッセイ同和損保を退社。2014年4月より現職。

    ホームページ |株式会社安全な介護 公式サイト

    山田滋のプロフィール

  • 三好春樹
    生活とリハビリ研究所 代表

    1974年から特別養護老人ホームに生活指導員として勤務後、九州リハビリテーション大学校卒業。ふたたび特別養護老人ホームで理学療法士としてリハビリの現場に復帰。年間150回を超える講演、実技指導で絶大な支持を得ている。

    Facebook | 三好春樹
    ホームページ | 生活とリハビリ研究所

    三好春樹のプロフィール

  • 下山名月
    生活とリハビリ研究所 研究員/安全介護☆実技講座 講師

    老人病院、民間デイサービス「生活リハビリクラブ」を経て、現在は「安全な介護☆実技講座」のメイン講師を務める他、講演、介護講座、施設の介護アドバイザーなどで全国を忙しく飛び回る。普通に食事、普通に排泄、普通に入浴と、“当たり前”の生活を支える「自立支援の介護」を提唱し、人間学に基づく精度の高い理論と方法は「介護シーン」を大きく変えている。

    ホームページ|安全な介護☆事務局通信

    下山名月のプロフィール

  • 東田勉

    1952年鹿児島市生まれ。國學院大學文学部国語学科卒業。コピーライターとして制作会社数社に勤務した後、フリーライターとなる。2005年から2007年まで介護雑誌『ほっとくる』(主婦の友社、現在は休刊)の編集を担当した。医療、福祉、介護分野の取材や執筆多数。

    ホームページ |フリーライターの憂鬱

    東田勉のプロフィール

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