事故防止活動の要となるのは、正しい基準を持つことです。今回は、介護現場の事故をどう評価するかについてご紹介します。また、ご家族に事故のリスクを説明する際の注意点もあわせて考えてみましょう。
過失の大きさで事故を評価する
事故の大きさを損害の大きさで評価すると、職員の努力でコントロールできない部分なので現場の士気が下がってしまいます。では、事故はどう評価すればいいのでしょうか。
私たちは施設の過失の有無や大きさによって、次のように5段階に分けて評価します。
もっとも施設の過失が大きいのが、 レベル1の「ルール違反で起こる事故」です。反対に施設の過失が「なし」とされるのが、レベル5の「どんな対策を講じても防げない事故」です。
レベル1~3は過失になるので、賠償責任が発生する「防ぐべき事故」と言えます。一方の レベル4と5は、基本的に施設の過失にはなりません。
防げない事故と家族への説明
防げない事故が起こったときに問題になるのが、家族の感情です。
多くの家族は、施設側から「この事故は防げません」と言われても、そう簡単には納得できません。ですから、事故の可能性について、入所時から丁寧に説明しておくことが大切です。
事故の可能性についてご家族に説明する際、「お父様は歩行が不安定なので転倒する危険性があります。ご了承ください」などと事実だけを述べてはいけません。これでは施設が何の努力もなしに、責任を放棄しているように聞こえてしまいます。
そのようなときは、「事故の危険性」と「防止するために施設で行っている対策」をセットで説明することが必要です。
そこで家族に協力してほしいことを併せて伝えれば、家族も当事者意識を持ってくれます。 「プロに預けたから万事安全」ではなく、当事者意識を持って施設生活を見てもらうと、初めて事故防止の難しさを理解してもらえるのです。
著者/山田滋
監修/三好春樹、下山名月
編集協力/東田勉
イラスト/松本剛
※本連載は『完全図解 介護リスクマネジメント 事故防止編』(講談社)の内容より一部を抜粋して掲載しています