【深堀り介護ニュース】第4回 全国一律最大40万円、2年間働けば返済は不要 離職中の介護人材向け再就職準備金を活用しよう

【介護職に復帰すると最大40万円】再就職準備金とは?貸付条件や対象者をわかりやすく解説

介護職向けの再就職準備金は雇用形態に関係なく借りることができ、条件を満たせば返済が免除されます。どんな使い道で活用できるのか、あなたは要件を満たしているのか、確認してみましょう。

再就職準備金とは?

再就職準備金」とは、介護の仕事をしていた有資格者で、今は介護の仕事から離れている人が、介護現場に再就職するために必要な資金を貸し付ける制度です。

厚生労働省は2020年6月、有資格者が介護の仕事に復職するのを支援する「再就職準備金」の上限を全国一律、40万円に引き上げました。「今は介護の仕事から離れているけれど、いつかまた戻りたい」。そう考えている方に朗報です。

再就職準備金の対象となるのは?

対象になるのは、介護福祉士の資格や実務者研修、介護職員初任者研修などを終了していて、介護現場での実務経験がある人など。これらの人が介護の仕事に復職しようと思った時に必要になる、例えば、保育園を探すための費用や引っ越し費用、参考図書の費用、通勤バイク・自転車の購入、介護ウェアの購入などを賄うために使えます。

最大のメリットは、無利子のうえ、復職後2年間介護の仕事に従事すれば返済が全額免除されること。自治体ごとにいくつか条件はあるものの、復職を希望する方にとってはとても嬉しい制度になっています。

再就職準備金の使い道や貸付条件は?

【再就職準備金、全国一律最大40万円に大幅拡大】: 2020年6月貸与額引き上げ20万円→40万円 |しかも、「無利子」「非常勤もOK」「条件を満たせば返済不要」 |40万円のつかいみちは自分で決められる <例>子どもの預け先を探す際の活動費/敷金・礼金や転居に伴う費用/介護ウェア、靴などの業務用被服費/研修参加費、参考図書の購入/通勤用自転車・バイク等購入費/その他 個別の審査で認められるもの
出典:『離職した介護職員の皆さまへ~再就職準備金のご案内~』(厚生労働省)、『離職介護人材再就職準備金貸付事業のご案内』(東京都社会福祉協議会)よりWe介護編集部で作成

再就職準備金の使い道や貸付条件について、詳しく見ていきましょう。

まずは対象となる雇用形態ですが、非常勤でも対象に含まれます。要件は年間の勤務時間・日数などで、常勤、非常勤、パートでも借りることができます。ただし、1年につき180日以上勤務しないと返済免除にはなりません。

最大40万円を限度として、準備金の金額は自分で決めることが可能。介護職に復帰するための費用であれば、使い道もさまざまです。

例えば、次のような使い道が想定されています。

  • 子どもの預け先を探す際の活動費
  • 研修参加費、参考図書の購入
  • 敷金・礼金や転居に伴う費用
  • 介護ウェア、靴などの業務用被服費
  • その他、再就職に必要と認められるもの

「その他」の場合は、再就職に必要と認められるかどうか、個別に審査が行われます。

申請窓口は各都道府県の社会福祉協議会(福祉人材センター)です。注意点は、再就職先が決まる前に、あらかじめ窓口に「離職介護人材の届け出」(都道府県によって名称は異なります)を済ませておく必要があることです。

各都道府県の申請先一覧(厚生労働省)

【要確認】再就職準備金の貸付条件

では、制度を利用できるのは、どのような人でしょう? 貸付けのための条件は、次のようになっています。

  1. 介護職員としての経験が1年以上ある
  2. 介護福祉士、実務者研修、初任者研修などの有資格者(すでに廃止されている介護職員基礎研修なども可)
  3. 介護保険サービス事業所などにおいて介護職員などとして再就職した人
  4. 再就職する日までの間に、あらかじめ都道府県福祉人材センターに再就職準備金利用計画書を提出

    出典:『離職した介護職員の皆さまへ~再就職準備金のご案内~』(厚生労働省)

気をつけなければいけないのは、復職後は「介護の実務」に従事する人が対象であること。施設の管理者やケアマネジャー、生活相談員などは主たる業務が介護ではないため、制度の対象外となります。

このほか、自治体主体の支援になるため、届け出をする自治体に住民票があることが前提となります。また、保証人を必要とする自治体も多いようです。

「2年間継続して働く」ことで返済免除に

【再就職準備金 返済免除の条件】: 2年間介護職として働く |ほかの事務所への転職もOK/仮に1つの事務所を退職しても、すぐに他の事務所で仕事をスタートすれば”継続”とみなされる

返済免除になる条件は、「2年間、継続して介護職として働く」こと。ですが、この「継続して働く」というのは、必ずしも同一の事業所で働くことではありません。

厚生労働省に問い合わせたところ、以下の回答が返ってきました

仮に1つの事業所を退職しても、すぐに他の事業所で仕事をスタートすれば、それは”継続して働いた”とみなされます。場合によっては退職後、求職活動をしている間も”継続して働いている”とみなされる場合もあるでしょう」(厚労省援護局福祉基盤課担当官)

つまり、復帰後に「介護の仕事は続けたいけれど、ここの施設は雰囲気が合わなかった」といって他の施設へ転職することも可能なわけです。

「離職日から1年以上経過」など自治体によってルールが異なる

実際の運用は都道府県など自治体に任されているため、離職から再就職までの期間など、少しずつ条件が異なります。

例えば、離職から再就職までの期間については、特にルールのない自治体から、1年以上の離職期間を必要としている自治体までさまざまです。

自治体ごとの独自要件の一例をご紹介します。

離職から再就職までの期間についての条件

離職期間 該当自治体
1日以上 山口県
2週間以上 京都府
1ヵ月以上 茨城県、埼玉県、山梨県、三重県、滋賀県、高知県、大分県
3ヵ月(90日)以上 北海道、青森県、富山県、石川県、福岡県、熊本県、宮崎県、沖縄県
離職から3ヵ月以上で、再就職して3ヵ月を経過していない 鹿児島県
6ヵ月以上 新潟県、長崎県
1年以上 東京都、福井県
離職から1年以上15年以内 神奈川県
離職から再就職までの期間の定めなし 岩手県、
宮城県、秋田県、山形県、福島県、栃木県、群馬県、千葉県、長野県、岐阜県、静岡県、愛知県、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、鳥取県、島根県、岡山県、広島県、徳島県、愛媛県、佐賀県

※香川県は社会福祉協議会などのホームページに記載なしのため不明
出典:各都道府県の社会福祉協議会ホームページよりWe介護編集部で作成

その他、復職後の勤務時間などについての条件

  • 介護職員として、週20時間以上勤務することとなった者(大阪府)

このように自治体によって少しずつ条件が異なる場合があるため、詳細は各都道府県の社会福祉協議会に問い合わせましょう。

例えば東京都社会福祉協議会の場合、離職介護人材再就職準備金貸付事業」という詳細なパンフレットを作って、制度を広報しています。担当者に確認したところ、ここ最近で制度への問い合わせが増えたということです

ここ数ヵ月で、制度に関する問い合わせが増えました。しかし、中には調べた結果、条件にあてはまらなかったという人もいます。厚生労働省からは大まかなルールしか示されていないため、ご自分があてはまるかどうかは、必ず各自治体の社協などに確認してください」(東京都社会福祉協議会)

再就職準備金制度ができた背景は深刻な介護職不足

この再就職準備金制度はもともと2016年にスタートしたもの。当初は、特に人手不足が深刻な首都圏、東日本大震災の被災地など14都府県では40万円、そのほかの地域は20万円の貸付けでした。

なぜ今回、全国一律で上限を40万円に引き上げたのでしょうか。

新型コロナウイルスが人材不足に拍車をかける結果に

その理由は、新型コロナウイルスの感染拡大によって、全国で介護職の人材不足が深刻化したためです。

【必要な介護職員の数と供給ギャップのグラフ】(必要とされる介護職員の数/人材供給数): <2025年>247万人/215万人(32万人不足) |<2035年>295万人/227万人(68万人不足)
出典:『将来の介護需給に対する高齢者ケアシステムに関する研究会』(経済産業省)

団塊の世代が後期高齢者になる2025年に向けて、圧倒的に不足する介護人材を確保しなければならりません経済産業省の推計では2025年までに約32万人、2035年までに68万人の介護人材が不足するとされています。

これに対して厚労省では、介護職員の処遇改善加算や離職者、アクティブシニアなどの潜在的人材の掘り起こしなどの策を講じています。特に現在、介護職についていない有資格者などの約4割は「いずれは介護業界で働きたい」という意向をもっているデータもあり、潜在的な人材の掘り起こしは人手不足解消のキーになるといえます。

今回の再就職準備金もこのような潜在的人材の掘り起こし策の一環としてみることができそうです。

2018年度の制度利用者は全国で600人程度

各都道府県社協のホームページなどでは、まだ旧制度(20万円の貸付)のままで掲載されているところも多いですが、6月12日の第2次補正予算後、すみやかに実施されることが決まっています。

2年間働けば最大40万円の返済が免除される貸付金ですが、実際の利用者は600人にも届きません(2018年度実績は596人)。原因は、制度自体があまり知られていないことにあるようです。

「政府としてはどんどん積極的に活用してほしいと考えています。ただし、なかなか制度の存在自体を知ってもらう機会が少なく、現状では利用は限られています」(前出・厚労省援護局福祉基盤課担当官)

過去に介護の仕事をしたことがあって復職を考えている人は、ぜひともご自身が要件にあてはまるかどうか、一度、確認してみてはいかがでしょうか。

著者/横井かずえ

(参考)
日本総研介護人材の働き方の実態及び働き方の意向等に関する調査研究事業』(日本総研)
介護現場に復帰で40万円 2年働けば免除の再就職貸付を全国展開へ』(福祉新聞)
将来の介護需給に対する高齢者ケアシステムに関する研究会』(経済産業省)
離職した介護職員の皆さまへ~再就職準備金のご案内~』(厚生労働省)
離職介護人材再就職準備金貸付事業のご案内』(東京都社会福祉協議会)

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