介護職をしていて、人間関係や新型コロナによるストレスで疲れてしまった……という方もたくさんいるのではないでしょうか? 介護職の方とストレスの関係、ストレスチェック方法、あなたの状態に合わせた対応方法などをご紹介します。
介護職とストレスの関係
介護の仕事をしていて「仕事に行くのがつらい」「業務の負担が大きい」などの悩みを抱えていませんか?
ストレスを抱えている介護職の方は多く、仕事にまつわるストレスの有無についてのアンケートでは8割以上の方が「ストレスがある」と回答しています。

介護職のストレスの原因
介護職の方に多いストレスの原因としては、人間関係や職場環境などが挙げられます。
職場の人間関係
介護施設では職員同士の連携が求められるため、職場の人間関係は働きやすさに影響します。チームに馴染めなかったり、職員との相性が悪かったりすると業務に影響することもあり、職場に行くことも億劫になることがあります。
人間関係は介護職を辞める理由として挙げる方も多く、介護職の悩みの種であることがわかります。

利用者さんやご家族との関係性
利用者さんやご家族との関係も、ストレスの原因としてよく挙げられるものの1つです。介助を拒否される、怒鳴られるといったことがあると、仕事だと割り切っていても心が折れてしまうことも……。
また、利用者さんのご家族との関係性がうまくいかず、ふさぎ込んでしまう方も少なくありません。ご家族から理不尽なクレームを受けてしまったり、困ったときに協力してもらえなかったりするなど、ご家族との関係性に悩んでしまうケースもあります。
運営や労働の不満
介護業界は常に人手不足の状態であるため、残業が多い、休みがなかなか取れないといった職場もあります。その状態が長期化すると、誰だって疲弊してきてストレスを抱えてしまいます。
そのほかにも、利用者さんのケアの方針に納得いかない、給料が安いのに残業が多いなど、施設の運営方針や待遇面への不満はストレスになるだけでなく、日々の仕事のモチベーションにも影響します。
自分の「ストレスのサイン」を確認する
ストレスに耐えきれなくなると、体にさまざまな症状が起こります。そのため、まずは自分の「ストレスのサイン」に気づくことが大切です。
今まで、ストレスが溜まっていた時期に「眠れなくなった」「集中力が落ちた」といった変化はありませんでしたか?それが、あなたがストレスを抱えたときに出るストレスのサインかもしれません。
ストレスのサインの確認方法としては、次のチェックリストも活用してみてください。もし当てはまる項目が多ければ、抱えているストレスが大きい可能性があります。

ここからは、上記のストレスチェックに当てはまる項目の少なかった方、多かった方それぞれの対策を解説していきます。
【解決策】ストレスチェックの該当項目が少ない方の場合
「メンタル不調のチェックリスト」で当てはまる項目が少なかった方は、まずは自分でできるストレス発散方法を試してみる、誰かに相談してみるところから始めてみましょう。
自分で合ったストレス対策を見つける
ストレス解消にはさまざまな方法があります。大切なのは、自分にストレス解消方法として効果のあるものをいくつか用意しておくことです。いろいろな方法を試して、自分と相性の良いストレス発散方法を見つけましょう。
下記に例を6つ挙げました。
また、初めて作る料理にチャレンジする、初めて来た場所で散歩するなど、新しいことを日々の生活に取り入れることで、気分がリフレッシュできます。
もし「新しくやってみたいこと」があれば、この機会にチャレンジするのもよいでしょう。
誰かに相談する
自分の中で抱え込んでしまうと、自分のなかでどんどんストレスが大きくなります。
ストレスを負担に感じ始めたら、家族や友人などの身近な人、上司(もしくはその周囲の立場の方)、自治体が設置している窓口などに相談してみましょう。
誰かに相談するだけで、ポジティブな考え方を取り入れることができたり、気持ちを整理できたり、具体的なアドバイスを貰えることがあります。
【例】
利用者さんの対応方法に悩んでいたことを同僚に相談したところ、同じ悩みを抱えていることがわかった。お互いに共感することができて少し気持ちが楽になったし、一緒に解決策を話し合うことができて、気持ちが少し前向きになれた…など
【解決策】ストレスチェックの該当項目が多い方の場合
「メンタル不調のチェックリスト」で当てはまる項目が多かった方は、自分で思っている以上に心や体が疲れてしまって、つらい状況にある可能性があります。
できるだけ早く、身近な誰かや専門家、専門窓口などに相談しましょう。
すぐ専門家へ相談を
ストレスによるダメージが大きく、心身のコンディションに支障が出ている場合は、医師やカウンセラーなど専門家の力を借りることも検討しましょう。
また、「休職しようか…」「転職しようか…」などで悩んでいませんか?
気持ちが沈んでいるときに、冷静に物事を決断するのは思っている以上に難しい場合があります。そのため、休職、転職について悩んでいる方は、無理に決断しようとせず、それらの悩みも含めて相談できる専門家に相談しましょう。
病院やカウンセリングに行くことに抵抗がある方も多いと思います。そういった場合、地域の相談窓口にコンタクトを取ってみるのも一案です。例えば東京都では、福祉の職場で働く人を対象にした相談ダイヤルを設置しており、臨床心理士や産業カウンセラーが無料で相談に乗ってくれます。※1
また、各都道府県の労働局や労働基準監督署では、いじめ、パワハラ、労働条件等に関するトラブルについて解決に向けたアドバイスや情報提供を行っており、こちらも無料で利用できます。※2
ほかに、各自治体でもさまざまな相談窓口を設けています。自分が相談しやすい窓口を探して、利用を検討してみましょう。
※1)東京都社会福祉協議会「福祉の仕事に関する悩みを相談する」
※2)厚生労働省「総合労働損団コーナーのご案内」
新型コロナによる介護職のストレスへの影響
最後に、新型コロナによる介護現場の影響とストレスの関係を見ていきましょう。
「自分の家族や利用者さんに感染させてしまったら…」など、新型コロナの感染拡大によって、介護職は以前よりも不安を抱えて仕事をしなければならない状況が続いています。
コロナ禍でストレスに感じている具体的な原因について、厚生労働省が2021年3月に発表した下記のデータをご参照ください。

上記のデータから、コロナ禍のストレスの原因は主に「長期化していることへの不安」「感染リスクへの不安」「対応方法がわからない不安」の3つに分類できます。
長期化していることへの不安
新型コロナによる影響が長期化していて、「いったいいつになったら終わるんだ」と不安を抱えている方も多いのではないでしょうか?
新型コロナな流行し始めた当初は、「とにかく今を乗り切ろう」と思って対応を頑張ってきた方々も、今になって限界を感じてしまう段階に来ているかもしれません。
感染リスクへの不安
もし自分のいる施設や事業所でクラスターが発生してしまったら……と考えたことはありませんか?
高齢者が新型コロナに感染した場合、重症化リスクが高いことから、「利用者さんに感染させてしまったらどうしよう……」と日々プレッシャーを感じている方も多くいます。
自分の感染リスクだけでなく、職場で感染を広げてしまうかもしれない不安を抱えている状況が、より神経をすり減らしてしまう原因になっています。
対応方法がわからない不安
新型コロナの感染防止策や、感染が起こってしまった場合の対応方法がよくわからず、不安がある方もいます。
新型コロナによるクラスターによって人手不足がより深刻化した事業所もあり、残った職員の精神的、肉体的負担はいっそう増している状況です。
また、新型コロナ禍のストレス軽減に役立っているものとして、介護職が挙げたものは下記のとおりです。
まずは周囲と話す機会をもつ

上記のデータから、身近な方との会話をきっかけにストレスが軽減されたという方が多くいることがわかります。
新型コロナの影響によるストレスで悩んでいる方は、まずは家族や友人、同僚など、あなたの身近にいて理解を示してくれそうな人に相談するとよいでしょう。ちょっとした会話から、不安が解消されたり気持ちが明るくなることがあります。
そのほか具体的なストレス対応方法は、『自分の「ストレスのサイン」を確認する』以降の項目で解説した通りです。
心身の不調を招いてしまう前に、ぜひ一度、ストレスチェックをして今の自分の状態を見つめ直してみましょう。