介護業界への転職を考える際、「どの施設形態やサービスが自分に合っているんだろう?」と悩みますよね。現役介護職の場合も、「いま働いている施設は自分に合っているのか」と悩むことがあるかもしれません。
この記事は、どの施設形態、サービス種別があなたにとって働きやすい施設なのかを見つけるためのお手伝いをする記事です。未経験でも働きやすい、身体介助が少ないなど、働きやすさの指標ごとに施設形態、サービス種別を分類しました。
働きやすい施設形態・サービス分類
自分に合う施設形態、サービスを決めるのってなかなか難しいですよね。
どの施設形態、サービス種別で働くのが自分に合っているんだろうと悩んでいる人のために、働きやすさの指標ごとに施設形態、サービス種別を分類しました。

実際の働きやすさは、施設形態やサービスの種類に関わらず、法人や事業所によって異なります。
実際に求人に応募する際には、志望する施設や事業所を運営する法人のホームページや求人票をしっかりご自身で確認するようにしましょう。
まずはこちらの表を確認してから、指標ごとの解説をご覧ください。
あなたにとって働きやすい施設形態・サービスを見つけよう
特徴 | 施設形態・サービス |
---|---|
夜勤がない | |
人間関係が楽 | |
未経験でも働きやすい | |
身体介助が少ない | |
認知症対応が少ない | |
教育体制が充実している | |
医療知識をあまり求められない |
※こちらの表はあくまでも傾向であり、各施設形態、サービスの働きやすさを断定するものではありません
夜勤がない施設形態・サービス
夜勤がない施設形態、サービス種別は主にデイサービス、訪問介護、訪問入浴です。
いずれも、早朝、夜間はご自宅で生活している利用者さんにサービスを提供するため、基本的に夜勤業務がありません。
日勤のみ働き、夜勤には入りたくないという人にとっては働きやすい施設形態、サービス種別です。

①デイサービス
デイサービスは、利用者さんが日帰りで利用するため、夜勤業務がありません。日中にリハビリやレク、食事、入浴などのサービスを実施します。
一部、介護保険とは別に、宿泊を伴うお泊りデイサービスを実施している事業者もあるため、その場合は夜勤が発生する可能性もあるので、応募前に確認しておきましょう。
②訪問介護
訪問介護は日中に利用者さんのご自宅を訪問するため、夜勤業務はありません。
ただし、夜間対応型訪問介護と呼ばれる、夜間帯(18〜8時)に訪問介護サービスを提供する事業所もあります。その場合は夜間帯の勤務が発生します。
③訪問入浴
訪問介護と同様、日中に利用者さんのご自宅などを訪問して入浴サービスを提供するため、夜勤業務はありません。
人間関係が楽な施設形態・サービス
どの施設形態やサービスが人間関係の面で楽、と言い切ることはできませんが、1人で業務を行う時間が長いという面で、訪問介護は人間関係が楽だと言えるかもしれません。

①訪問介護
訪問介護では、原則1人で利用者さんのご自宅などに訪問するため、人間関係をあまり気にせずに働くことができ、介助業務に集中しやすい環境です。
ただし、出勤時、退社時には事業所に出向いて、準備や事務作業をする必要があったり、サービス担当者会議に出席してほかの職種の人たちとコミュニケーションを取る必要があります。

人間関係が楽であっても、人間関係を疎かにしていいというわけではありません。それはどの施設形態、サービスにも言えることです。
訪問介護の場合でも、同じ事業所の管理者や同僚、サービス担当者会議の出席者、利用者さんとそのご家族など、コミュニケーションを取る機会は多くありますのでその点は認識しておきましょう。
未経験でも働きやすい施設形態・サービス
介護の仕事が未経験でも働きやすい施設形態、サービスとして挙げられるのは、特別養護老人ホーム(特養)の中でもユニット型特養、有料老人ホーム、デイサービス、グループホーム、訪問入浴です。
それぞれ、未経験からでも働きやすい理由を解説します。

①特別養護老人ホーム(特養) ※ユニット型の場合
ユニット型特養は、利用者さんを10名程度の1ユニットに分けて担当を持つため、1人の職員が対応する利用者さんの人数が少ないという特徴があります。一方で、従来型特養の場合は、複数の職員で40〜50名の利用者さんを担当します。
ユニット型特養の方が、利用者さん1人あたりに割ける時間が多くなり、関係性も築きやすくなる分、未経験の人でも働きやすいと言えます。
②有料老人ホーム
有料老人ホームには介護付き有料老人ホーム、住宅型有料老人ホーム、健康型有料老人ホームの3種類があり、いずれの施設形態でも、特養や老健に比べると利用者さんの介護度が低い傾向があります。
介護度が低い分、いきなり高い介助スキルが求められることも少なく、未経験者でも挑戦しやすいと言えます。
一方で、高いレベルでの接遇マナーが求められることもあります。特に、入居一時金や月額利用料が高額な有料老人ホームではその傾向が強く見られます。
※健康型有料老人ホームは自立している方を対象としているため、介護施設ではありません
③デイサービス
デイサービスでは、日常生活に不便は抱えつつも、ある程度自立した生活が送れる利用者さんに対してサービスを提供します。
送迎、バイタルチェック、入浴介助、食事介助、排泄介助(トイレ誘導)、レクがメイン業務のため、未経験の人も多く活躍しています。
④グループホーム
グループホームの利用者さんは、認知症ではあっても、基本的な日常動作はご自身でできる方がほとんどなので、未経験や無資格からでもチャレンジしやすいと言えます。
積極的に介助をするというよりは、できることはなるべく利用者さん自身に行ってもらい、認知機能の維持や改善を目指します。
認知症についての知識や介助スキルについては、入職後に身につけてもOKという求人も多いので、入職後にしっかりと磨いていきましょう。
⑤訪問入浴
訪問入浴も無資格から始めることができます。
また、訪問介護とは違い、基本的にオペレーター(運転手兼介護職)、介護職、看護師の3人体制でサービスを提供します。
入浴介助業務メインのため仕事を覚えやすく、一緒に利用者さんのお宅を訪問する先輩介護職や看護師に教えてもらいやすい環境なので、未経験でもチャレンジしやすいと言えます。

未経験からでも働きやすい施設形態、サービスを紹介しましたが、どの施設形態の場合でも、未経験からだと始められないということはありません(無資格の場合、訪問介護サービスを提供することはできません)。
知り合いに介護職の方がいれば話を聞いて見たり、転職エージェントを使う場合にはキャリアアドバイザーにどの施設形態、サービスが自分に合っているのか相談してみましょう。
身体介助が少ない(身体的な負担が少ない)施設形態・サービス
身体介助が少なく、体の負担が比較的少ない施設、サービスとして挙げられるのは、有料老人ホーム、デイサービス、グループホームの3つです。
それぞれの特徴を解説します。

①有料老人ホーム
有料老人ホームは、特養や老健と比べると利用者さんの介護度が低い傾向があります。
移乗介助や排泄介助のサポートは必要でも、ある程度は自分で身の回りのことができる方もいるため、介護職の身体的な負担は軽くなります。
②デイサービス
デイサービスの利用者さんも介護度が低い傾向にあるため、身体介助など体に負担がかかる業務は比較的少ないと言えます。
その分、コミュニケーションやレクなどを通して利用者さんが生活に張り合いを持って過ごせるように工夫を凝らすことが求められます。
③グループホーム
グループホームの利用者さんは認知症ではあっても、身体的にはある程度自立して生活できる方も多くいます。
基本的には利用者さん自身が生活をするための掃除、洗濯、買い物、料理、掃除などは行い、そのサポートとして介護職が入ります。

年齢や体の状態によっては、介護職として働きたくても不安があるという方もいますよね。
介護の仕事はどうしても身体的な負担は付きものですが、施設形態、サービスによってはそこまで重くない求人もたくさんあるので、ぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。
もし求人を探すのが難しいという場合は、一緒に求人を選んでくれる転職エージェントを利用するのもおすすめですよ。
認知症対応が少ない施設形態・サービス
近年はどの施設形態、サービスでも基本的には認知症の利用者さんを受け入れていますが、比較的、認知症対応が少ないのはデイサービスとサービス付き高齢者向け住宅でしょう。

①デイサービス
一般的なデイサービスでは、認知症対応が比較的少ない傾向があります。なお、デイサービスの中には、認知症対応型デイサービスというサービスがあり、認知症の方のみを受け入れています。
一般的なデイサービスも認知症の利用者さんを受け入れていますが、軽度の場合が多く、認知症対応に大きな不安を抱く必要はないでしょう。
②サービス付き高齢者向け住宅
サービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)は、一般的に介護度が低い方や要支援の利用者さんを受け入れているため、認知症の方はあまり多くない傾向があります。
ただし、近年は「介護・認知症タイプ」を打ち出しているサ高住も出てきており、施設選びの際はどのタイプなのかをしっかり確認しておくようにしましょう。

認知症対応が少ない施設形態、サービスを紹介しましたが、認知症の高齢者が年々増加していることもあり、最近はどの施設形態、サービスで働く介護職も認知症の利用者さんへの対応が求められるようになってきています。
その背景を受けて、2024年4月からは、無資格や未経験の職員向けに、認知症介護基礎研修という認知症ケアの知識や技術、考え方を学ぶための研修受講が義務化されることになりました。研修や自分自身での学習を通して、認知症についての理解を深めていきましょう。
教育体制が充実している施設形態・サービス
教育体制が充実している施設形態、サービスは数多くありますが、特に充実している傾向にあるのは有料老人ホームです。
有料老人ホームの教育体制について解説します。

①有料老人ホーム
有料老人ホームは主に民間の株式会社が運営しており、独自の教育体制や研修制度を持っている会社が多くあります。
有料老人ホームの特徴として、自立から要介護5までの幅広い利用者さんを受け入れており、1人1人に対してきめ細やかに対応するため、職員の教育には力を入れている傾向があります。
特に大手の場合は、社内に独自の資格制度や研修制度を設け、着実にステップアップできるように体制を整えている施設も多数あります。

ここでは有料老人ホームを挙げていますが、どの施設でも基本的には教育体制の充実を図っています。
面接の際に教育体制について聞いてみて、「ここなら安心して働けそうだ」と思える施設を選ぶようにしましょう。
医療知識をあまり求められない施設形態・サービス
介護職は基本的に医療行為を行うことができませんが、利用者さんの持病について知識があったり、服薬している薬について知っていることは業務に役立てることができます。
「今はまだ病気や薬についての知識がなくて不安」という方におすすめの施設形態、サービスとして挙げられるのは、デイサービス、ショートステイ、訪問入浴、グループホームです。
それぞれ特徴を見ていきましょう。

①デイサービス
デイサービスは医療依存度が高い利用者さんはほとんどおらず、医療的なケアを実施することは多くありません。
体の状態が安定している利用者さんが多いので、医療知識があまりなくても安心して働けるサービスの1つだと言えるでしょう。
②ショートステイ
ショートステイは、在宅介護をしている家族が一定期間、自宅での介護をできなくなった際に、短期間の利用を目的として利用するサービスです。
介護度が高い利用者さんでも利用できますが、常時、医療ケアが必要な場合や急変リスクが高い場合は医療型ショートステイや病院への入院が必要になるため、一般的なショートステイで働くうえでは医療知識を求められるケースは多くありません。
求人を選ぶ際には、一般型のショートステイか、医療型ショートステイなのかを確認しておくようにしましょう。
③訪問入浴
訪問入浴は看護師が1名以上は必ず一緒にいるため、介護職に医療的な知識やスキルが求められることはあまりありません。
医療知識に不安がある介護職でも、必要なときは看護師に教えてもらいながら働くことができます。
④グループホーム
グループホームは、認知症の利用者さんが共同で生活を送ることを目的としているため、看護師の配置も義務付けられておらず、原則的には医療的なケアを実施することはありません。
ただし、認知症の利用者さんへの対応をするために、認知症の知識については一定程度求められますし、常に勉強はしておく必要があります。
まとめ
いきなりすべての施設形態、サービスのことを調べるのは大変なので、まずはご自宅周辺にどのような施設や事業所があるのかを調べてみることをおすすめします。
また、こちらの記事の内容はあくまでも傾向であって、それぞれの施設や事業所ごとに働きやすさは異なります。 求人票やホームページも合わせて調べるようにしましょう。
もし自分ではなかなか決められない、求人票だけではわからない、それぞれの施設の魅力についてもっと知りたいという方は、キャリアアドバイザーがサポートしてくれる転職エージェントの利用を検討してみてください。