生活相談員とは、介護施設で利用者さんやそのご家族の相談窓口の役割を担ったり、利用者さんを増やすための営業活動を行ったりする職種です。この記事では、生活相談員の仕事内容や必要な資格、給料などをわかりやすく解説していきます。
生活相談員とは
生活相談員は、利用者さんやご家族の相談窓口として施設や行政との間に立ち、契約手続きや利用開始前後のさまざまな調整をサポートする職種です。ソーシャルワーカーとも呼ばれています。
生活相談員が勤務する代表的な介護施設は以下の4つの種類です。それぞれに配置人数の基準が定められています。
種類 | 生活相談員の配置基準 |
---|---|
特別養護老人ホーム | 利用者100名以上につき常勤で1名以上 |
介護付有料老人ホーム | 利用者100名以上につき常勤で1名以上 |
デイサービス | 1名以上(生活相談員または介護職員のうち、1名以上は常勤必須) |
ショートステイ (20名未満の併設事業所は除く) |
利用者100人につき1名以上(うち1名は常勤) |
介護施設以外にも、医療機関や社会福祉協議会などにも配置されています。病院ではMSW(医療ソーシャルワーカー)、精神科病院などではPSW(精神科ソーシャルワーカー)と呼ばれます。
支援相談員やケアマネジャー、サービス提供責任者との違い
生活相談員と混同しやすい職種として、支援相談員やケアマネジャー、サービス提供責任者を思い浮かべる方も多いでしょう。これらの職種と生活相談員の違いについて、一覧表にまとめました。

生活相談員になるために必要な資格とは
この章では、生活相談員になるためにどのような資格が必要なのかを解説します。
厚生労働省のサイト(『老人福祉施設生活相談員』)では、一般的には下記の3つの資格が生活相談員になるために必要だと紹介されています。
ただし、実際の資格要件は自治体ごとに異なるため、上記3つの資格を保有していなければ生活相談員業務ができないとは必ずしも言えません。介護福祉士などの資格で生活相談員をしている方もいます。
では、実際に生活相談員として働く人たちはどんな資格を持っているのでしょうか。
現役の生活相談員が保有する資格
自治体によっては介護福祉士や介護支援専門員の資格を持っていたり、介護施設での勤務経験が3年以上あれば、生活相談員として働くことができます。
実際に生活相談員として働く人たちの保有資格は以下の表の通りです。
生活相談員として働く人の保有資格(複数回答)
資格 | 保有割合 |
---|---|
介護福祉士 | 75.9% |
ホームヘルパー2級 | 36.3% |
実務者研修 | 15.0% |
介護支援専門員 | 14.9% |
介護職員初任者研修 | 10.8% |
社会福祉士 | 9.1% |
精神保健福祉士 | 1.2% |
出典:『令和3年度介護労働実態調査』(公益財団法人 介護労働安定センター)よりWe介護編集部で作成
介護労働安定センターの調査によると、生活相談員として働く人たちの保有資格で1番多いのは介護福祉士(75.9%)。ほとんどの人が介護福祉士の資格で生活相談員として働いていることがわかります。
続いて2番目に多いのがホームヘルパー2級(36.3%)、3番目が実務者研修(15.0%)という結果になりました。
このことから、社会福祉士や精神保健福祉士の資格を持って生活相談員として働く人はそこまで多くないということがわかります。
自治体ごとに異なる生活相談員の資格要件
各自治体のホームページで、生活相談員の資格要件を確認してみましょう。
社会福祉士、精神保健福祉士、社会福祉主事任用資格って?
社会福祉士ってどんな資格?
社会福祉士は、高齢者に限らず、生活を送るうえで困難がある障害者や児童の相談を受け、それぞれの状況を踏まえて適切なサービスにつなぐ役割を担うための国家資格です。
社会福祉士の資格を取得するためには、毎年2月上旬に行われる社会福祉士国家試験に合格する必要があります。毎年の合格率は30%前後で、2022年実施の試験の合格率は31.13%でした(「第34回社会福祉士国家試験合格発表」厚生労働省)。
受験資格は、4年制大学で指定科目を修了していたり、社会福祉養成施設を卒業しているなど、いくつかのパターンがあります。
※詳しくは社会福祉振興・試験センターのホームページ(外部サイト)で確認してください。
精神保健福祉士ってどんな資格?
精神保健福祉士は、年齢にかかわらず、精神疾患などを抱えた利用者さんが日常生活をスムーズに送れるように支援する役割を担うための国家資格です。
精神保健福祉士の資格を取得するためには、毎年2月上旬に行われる精神保健福祉士国家試験に合格しなければなりません。毎年の合格率は60%前後で、2022年実施の試験の合格率は65.6%でした(「第24回精神保健福祉士国家試験合格発表」厚生労働省)。
受験資格は社会福祉士国家資格と同様に、4年制大学で指定科目を修了していたり、精神保健福祉士養成施設などを卒業しているなどのパターンがあります。
※詳しくは社会福祉振興・試験センターのホームページ(外部サイト)で確認してください。
社会福祉主事任用資格ってどんな資格?
社会福祉主事任用資格は、介護施設などの福祉施設や医療機関で相談業務を行うための資格です。社会福祉主事任用資格の資格を取得するためには、大学などで指定科目を3科目以上履修して卒業するか、養成機関などに通う必要があります。
※詳しくは厚生労働省のホームページ(外部サイト)で確認してください。

社会福祉主事任用資格は、国家資格である社会福祉士、精神保健福祉士に比べると、取得の難易度は低い資格だと言えます。
そうは言っても、どの資格も仕事をしながら取得をするのはなかなか大変です。最近は通信制で学べる大学や養成機関も増えてきているので、自分に合う資格取得までの道のりを探してみましょう。
生活相談員の仕事内容
生活相談員の仕事は、利用者さんとそのご家族に対する相談業務、入退去手続き、ケアマネジャーや行政機関との連絡や調整など多岐に渡り、現場の介助業務と兼務するケースもあります。

生活相談員の業務は、利用者さんやそのご家族の要望に応じてどのような支援が必要か、活用できる制度はなにか、どんな手続きが必要かなどを考案していくための知識が重要になります。
生活相談員の1日の流れ
生活相談員の1日のスケジュールは、勤務する施設や規模、現場の介助業務を兼務するかなどによってさまざまです。
基本的に夜勤はありませんが、現場の介助業務を兼務する場合、施設によっては夜勤が発生する可能性もあります。
それでは、入所系に施設に勤める生活相談員の一般的な1日のスケジュール例を紹介します。


生活相談員は主に日勤での業務になるので、「介護職としてキャリアアップしたいけど、家庭との両立も考えたい」という人にとっては魅力のある職種だと言えます。
生活相談員の給料
ここからは、生活相談員の給料事情について見ていきます。ほかの職種と比較したり、モデルケースを紹介しているのでぜひ参考にしてみてください。
※令和3年度介護従事者処遇状況等調査、令和3年度介護労働実態調査、令和2年賃金構造基本統計調査、We介護転職の求人情報などをもとに編集部にて算出しています。
生活相談員の平均年収

生活相談員の平均的な年収相場は330万円~490万円です。介護職員の年収相場である240~450万円と比べると生活相談員の年収はやや高い傾向にあります。
それでは、次に月給のモデルケースを見てみましょう。
生活相談員の月給モデルケース

生活相談員3年目の方のケースでは、残業代や資格手当も合わせて月給が額面で28万8,000円、実際に振り込まれた手取り金額が23万6,000円となっています。
この方の場合、生活相談員としてさらに給料を上げるためにできることとしてまず挙げられるのが、経験年数を積んでいくことです。
また、インセンティブがつく施設もあるので、新規入居者の獲得を積極的に行うなど、施設の売上に貢献することが挙げられます。
生活相談員とほかの職種の年収、月給、ボーナス比較
介護職、生活相談員、サービス提供者、ケアマネジャーの給料を比べてみました。

生活相談員の年収をほかの職種と比べてみると、サービス提供責任者の330万円〜480万円とほぼ同額で、ケアマネジャーの340万円〜510万円と比べるとやや低くなります。月給やボーナスにおいても、同様です。
もちろん、勤務している施設の形態や規模、地域によっても変わりますし、昇給の基準なども法人によって異なります。
介護職からのステップアップを考える際の参考にしてみてください。
生活相談員に向いている人はどんな人?
生活相談員に向いているのはどんな人なのでしょうか。キャリアアドバイザーからの解説も併せて見ていきましょう。

1.傾聴力があり、寄り添う姿勢がある人
生活相談員は、利用者さんやそのご家族の相談窓口になることが主な業務の1つなので、傾聴力や寄り添う姿勢がある人に向いています。
さまざまな不安を抱えた利用者さんやそのご家族に対して、「きちんと不安や悩みを聞いてくれて、一緒に解決策を考えてくれる」と安心感を持ってもらうことができます。
2.コミュニケーション能力が高い人
生活相談員は多くの職種や機関との調整業務を行うので、コミュニケーション能力も必要不可欠です。
ケアマネジャー、行政、現場スタッフと連携して利用者さんを支援していくので、各担当者の考えや動き方を理解して仕事を進めていくことが求められます。
3.制度や介護サービスに詳しい人
もちろん、生活相談員として介護にまつわる制度やサービスに詳しいことも大切です。 定期的に変更される介護報酬制度に関する知識をアップデートしたり、細々とした法律を調べたりすることが苦にならない人にも生活相談員は向いていると言えるでしょう。
利用者さんごとにどの制度のどんなサービスが必要か、助成金などはあるかなどを見極めて提案していくことで、利用者さんが抱えている問題や不安を解消することができます。

施設の人員配置次第ですが、日によって現場の介助業務をサポートすることも生活相談員の役割です。そのため、周囲の状況に応じて動き方を変えることのできる臨機応変でホスピタリティ精神がある人は重宝されます。
事務作業なども多く、業務は多岐に渡りますが、これまでの介護職としての経験や知識を存分に活かすことができます。
生活相談員のやりがい
生活相談員にはどのようなやりがいがあるでしょうか。大きく2つのやりがいを紹介します。
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利用者さんの不安や課題を解決できる
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施設運営の重要なポジションを担える
①利用者さんの不安や課題を解決できる
生活相談員は、利用者さんやそのご家族の相談窓口を担当する役割を担っています。そのため、利用者さんやご家族にとって一番の理解者となり、不安や課題の解決を目指すことができます。
ヒアリングを行いながら適切な支援につなげて不安や課題を解決でき、利用者さんやご家族からお礼を言われたときに大きなやりがいを感じることができます。
②施設運営の重要なポジションを担える
生活相談員は、入居希望者との面接や入居後の相談業務、現場スタッフのサポートなど、施設の重要なポジションを担うことになります。
生活相談員は利用者さん、現場スタッフ、管理者、ケアマネジャー、行政など多くの人にとってのパートナーです。施設運営には欠かせない職種として周囲から頼りにされるというやりがいがあります。

生活相談員は施設運営において重要な職種なので、責任感が求められる分、やりがいも大きいでしょう。
資格取得などのハードルはありますが、キャリアアップの方向性の1つとして生活相談員を目指してみてはいかがでしょうか。
まとめ
生活相談員になるための必要な資格、仕事内容、給与水準、やりがいや向いている人の傾向を解説しました。
生活相談員が1人のみという施設も珍しくありません。そのため、転職の際には求人の数が介護職に比べると多くないということも頭に入れておきましょう。
もし求人サイトなどで生活相談員の募集が出ていない場合、いま働いている施設で生活相談員の枠がないかを確認してみることをおすすめします。施設によっては現職の生活相談員が退職した場合でも求人を出さず、その施設で働いている職員を生活相談員に登用するというケースもあるからです。
(参考)
『老人福祉施設生活相談員』(厚生労働省)
『第34回社会福祉士国家試験合格発表』(厚生労働省)
『第24回精神保健福祉士国家試験合格発表』(厚生労働省)
『令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果』(厚生労働省)
『令和3年度介護労働実態調査 介護労働者の就業実態と就業意識調査結果報告書』(公益財団法人介護労働安定センター)
『令和2年賃金構造基本統計調査による職種別平均賃金(時給換算)』(厚生労働省)