【訪問介護の事故原因①】安全な環境を整えるのが困難|事故防止編(第42回)

【訪問介護の事故原因①】安全な環境を整えるのが困難|事故防止編(第42回)

介護保険サービスの提供場所が居宅であるために生まれる問題です。安全に介護を行えるよう設計された施設とは違い、一般の家庭には事故につながる危険要因がいくつもあります。

ヘルパーのミスを引き起こす要因は?

数年前に、ある自治体の社会福祉協議会の依頼で、訪問介護事業所の事故報告書を約400枚読んで精査する機会がありました。

このときに大変驚いたことは、その約8割の事故原因が「介助時の不注意」「見守りを怠った」などヘルパーのミスとして処理されていたことです。

【訪問介護における事故原因は約8割がヘルパーのミス】訪問介護事業所の事故報告書を約400枚を精査したところ、その約8割の事故原因が「介助時の不注意」「見守りを怠った」などのヘルパーのミスとして処理されていた。その要因を詳しく分析すると、1)介護環境に潜む危険要因。2)利用者情報(アセスメント)の不足。3)ヘルパーの能力不足に分けられる。

私は、「ミスを引き起こした要因は何だったのか」という視点で分析しました。すると、ミスを起こす要因は大きく分けると、次の3つであることがわかったのです。

  1. 介護環境に潜む危険要因
  2. 利用者情報(アセスメント)の不足
  3. ヘルパーの能力不足

こうした 「ミスを引き起こす要因」が放置されたままでは、事故を防止することはできません。

訪問介護は、これら根本原因の除去によるリスクの低減が最大の課題だと言えます。

居宅で見られるおもな危険要因「4つ」

訪問介護での危険要因には、容易に解消できるものから、改善しようのないものまで、以下の4つがあります。

福祉用具をレンタルすることで解消できる危険要因

訪問介護先のご自宅にベッドがない場合のイラスト。福祉用具をレンタルするなど提案しましょう。

「ここに介助バーがあればもっと安全に移乗の介助ができるのに」「立ち上がりができない利用者なのに、ベッドではなく布団で生活している」など、これらは福祉用具をレンタルすれば解消が容易です。

簡単な住宅改修工事で解消できる危険要因

訪問介護先のご自宅のトイレに手すりがない場合のイラスト。

比較的簡易な住宅改修で解消できる要因としては、「トイレに手すりがないので、転倒しないか心配だ」「玄関の上がり框に手すりがあったらもっと出入りしやすいのに」などがあります。

比較的大がかりな改修工事が必要な危険要因

訪問介護先のご自宅の浴室の入り口に30センチの段差があるイラスト。危険を解消するには、大がかりな自宅回収が必要になります。

「浴室の入り口に30cmもの段差がある」「トイレが狭すぎて排泄介助ができない」「リビングからトイレまでが遠すぎる」など、危険要因の中には大がかりな自宅改修が必要になるものもあります。

改善しようがない構造上の問題がある

訪問介護先のご自宅が、エレベータのない団地の3階である場合のイラスト。住宅改修等では改善のしようがありません。

「足腰が弱い外出希望の利用者が、エレベーターがない団地の3階に住んでいる」「門から玄関までがあまりに長くて遠い」など、住宅改修等では対応できない要因は改善しようがありません。

居宅は危険要因の改善が難しい場合もある

訪問介護サービスの最大の特徴は、「利用者の居宅で介助や援助を行う」という点です。

在宅生活を維持するうえで利用者にとって大切なサービスですが、一般の居宅の構造は介護に適しているとは限りません。介護施設であれば最初からバリアフリーに設計したり、必要な介護用品をそろえてからサービスをスタートします。

しかし、訪問介護の場合は利用者宅で行いますから、上記イラストのように環境が整っていないことが多いのです。

福祉用具の導入や住宅改修で改善できるものは、ケアマネジャーに相談して改善してもらいましょう。そのためには、家族の理解と協力が不可欠です。それに加えて建物に構造上の欠陥があると、実際には改善できない問題も少なくありません。

このように、環境に危険要因があっても、そう簡単に改善できないことが、訪問介護のおもな事故原因の一つなのです。

著者/山田滋
監修/三好春樹、下山名月
編集協力/東田勉
イラスト/松本剛

※本連載は『完全図解 介護リスクマネジメント 事故防止編』(講談社)の内容より一部を抜粋して掲載しています

書籍紹介

完全図解 介護リスクマネジメント 事故防止編

介護リスクマネジメント 事故防止編

出版社: 講談社

山田滋(著)、三好春樹(監修)、下山名月(監修)、東田勉(編集協力)
「事故ゼロ」を目標設定にするのではなく、「プロとして防ぐべき事故」をなくす対策を! 介護リスクマネジメントのプロである筆者が、実際の事例をもとに、正しい事故防止活動を紹介する介護職必読の一冊です。

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  • 山田滋
    株式会社安全な介護 代表

    早稲田大学法学部卒業と同時に現あいおいニッセイ同和損害保険入社。支店勤務の後2000年4月より介護事業者のリスクマネジメント企画立案に携わる。2006年7月よりインターリスク総研主席コンサルタント、2013年5月末あいおいニッセイ同和損保を退社。2014年4月より現職。

    ホームページ |株式会社安全な介護 公式サイト

    山田滋のプロフィール

  • 三好春樹
    生活とリハビリ研究所 代表

    1974年から特別養護老人ホームに生活指導員として勤務後、九州リハビリテーション大学校卒業。ふたたび特別養護老人ホームで理学療法士としてリハビリの現場に復帰。年間150回を超える講演、実技指導で絶大な支持を得ている。

    Facebook | 三好春樹
    ホームページ | 生活とリハビリ研究所

    三好春樹のプロフィール

  • 下山名月
    生活とリハビリ研究所 研究員/安全介護☆実技講座 講師

    老人病院、民間デイサービス「生活リハビリクラブ」を経て、現在は「安全な介護☆実技講座」のメイン講師を務める他、講演、介護講座、施設の介護アドバイザーなどで全国を忙しく飛び回る。普通に食事、普通に排泄、普通に入浴と、“当たり前”の生活を支える「自立支援の介護」を提唱し、人間学に基づく精度の高い理論と方法は「介護シーン」を大きく変えている。

    ホームページ|安全な介護☆事務局通信

    下山名月のプロフィール

  • 東田勉

    1952年鹿児島市生まれ。國學院大學文学部国語学科卒業。コピーライターとして制作会社数社に勤務した後、フリーライターとなる。2005年から2007年まで介護雑誌『ほっとくる』(主婦の友社、現在は休刊)の編集を担当した。医療、福祉、介護分野の取材や執筆多数。

    ホームページ |フリーライターの憂鬱

    東田勉のプロフィール

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