今回は、ケース検討会議における原因究明方法について考えてみましょう。ヒヤリハットの原因をさらに掘り下げて突き詰めることで、事故防止のために本当にやるべきことが見えてくるのです。
リスク要因を探す「なぜなぜ分析」とは
ヒヤリハットの原因を多角的に書き出したら、続いてはその原因を誘発した要因(二次要因)を考えましょう。要因を探るには、「なぜこの原因が生まれたのか」という「なぜ」を突きつめていくことが大切です。
たとえば、第15回「【ヒヤリハット活動】本当の事故原因を探すためのアプローチ方法を紹介」で例に挙げたBさんについて調べたら、「前日の夜に睡眠薬を飲んでいたことが原因の一つのようだ」という仮説が浮かぶとします。そうしたら「なぜBさんは朝になっても睡眠薬の効果が残るのか」を考えるのです。そうすると「高齢で小柄なBさんにとって睡眠薬は、通常の処方量だと多すぎるのではないか」という二次要因が考えられます。
「車イスのブレーキがゆるんでいたこと」が原因なら、「なぜブレーキがゆるんだのか」を考えましょう。このようにして原因の奥にある要因を探す手法を「なぜなぜ分析」と言います。
【見本あり】事故原因分析シートの活用法
ケース検討会議における原因究明方法をまとめたものが次の表です。
このように「利用者側の原因」「介護職側の原因」「設備や用具などの原因」からたくさんの原因を見つけ、それらの原因を「なぜなぜ分析」で深く掘り下げます。
こうすることで、ヒヤリハットや事故の原因をつくり出すリスク要因をも発見することができるのです。
ある施設では、これらの分析結果をもとに「転倒リスクアセスメントシート」をつくりまし た。それが下図です。
これを使うと「介護度は低いのに、意外と転倒リスクが高い人」が発見されるそうです。
このように事故原因の究明は、発想次第で多角的な事故防止対策につなげることができます。
著者/山田滋
監修/三好春樹、下山名月
編集協力/東田勉
イラスト/松本剛
※本連載は『完全図解 介護リスクマネジメント 事故防止編』(講談社)の内容より一部を抜粋して掲載しています