【ケース検討会議】ヒヤリハットと事故をどう分ける? ルールづくりから原因分析の手法まで解説|事故防止編(第14回

【ケース検討会議】ヒヤリハットと事故をどう分ける? ルールづくりから原因分析の手法まで解説 | 事故防止編(第14回)

事故の認定基準から原因の分析方法まで、ケース検討会議の考え方を見てみましょう。解説図を用いてわかりやすく解説します

まずは「事故の定義」を決めることから

ヒヤリハットの事例を使ってケース検討会議を行うに当たって問題となるのが、「どこまでをヒヤリハットとして扱うのか」という基準です。

事故とヒヤリハットとの間に、明確な区分はありません。ですから、各施設で独自にルールをつくる必要があります

ヒヤリハットと事故を区分するためには、まず「事故の定義」を決めることです。「このような場合は事故報告書を提出すること」という定義を決めておけば、その定義に満たない事象についてはヒヤリハットに区分されることになります。

次の表は、事故防止に熱心に取り組むある施設がつくった事故の認定基準です。若干厳しいですが、参考にしてください。

【事故の認定基準(ヒヤリハットの区別一例)】事故:認定基準。転倒・転落:転落したら、ケガがなくても転落事故として取り扱う。(職員が見ていなくても、本人や他の利用者の申告があれば事故として扱う)。誤えん:食事が喉につまり呼吸困難になったら、誤えん事故として取り扱う。自力で飲み下すなど、職員の処置が必要なかった場合はヒヤリハットとして取り扱う。誤薬:「他人の薬を服用した」「飲むべき薬を飲まなかった」「処方量を誤って飲んだ」「職員が配役を間違えた」場合、誤薬事故として取り扱う。溺水:お風呂で頭部まで沈んで溺れ、職員の処置が行われた場合は溺水事故として取り扱う。それ以前はヒヤリハットとする。火傷:熱いもの(熱湯、日、暖房用具等)による火傷を被り、職員の処置が行われた場合は火傷事故として取り扱う。暴食・誤飲:食用でないものを口に入れた時点で暴食、誤飲事故として取り扱う。ただし体に害がないもので、すぐに吐き出した場合はヒヤリハットとして取り扱う。暴力:利用者が他人に対して物理的な暴力をふるった場合、暴力事故として取り扱う。(言葉の暴力は含まれない)感染症:施設内で新たに感染症に覆患した場合、感染症事故として取り扱う。感染源が施設内部か施設外部かは問わない。無断外出:利用者が本来すごしているフロアから職員が気づかない間に外出した場合、無断外出事故として取り扱う。介護中の骨折・あざ・外傷:介護中に地容赦が骨折、あざ、外傷を負った場合、事故として取り扱う。原因不明の骨折、あざ、外傷:原因がわからなくても、利用者にお骨折、あざ、外傷があつことが判明した時点で事故として取り扱う。

原因の分析方法と防止対策の考え方

ヒヤリハットシートを使ったケース検討会議で、「原因究明」「再発防止策の検討」「マニュアル化」を行うことはすでに紹介しました(第13回「ヒヤリハットの原因分析は「ケース検討会議」で行おう!」)。では、原因の究明や再発防止策の検討は、どのような手法で行うのでしょうか。その概要を見てみましょう。

事故原因の究明に当たっては、大きく分けて2段階あります。

まずはそのときの状況を多角的に振り返り、可能性のある原因をなるべくたくさん洗い出す作業です。さらに「それらの原因を誘発する裏の原因がなかったか」という二次要因まで考えられると、事故防止効果が格段に上がります。

【ヒヤリハットを含む事故原因の分析方法】状況を多角的に振り返り、利用者側の原因、介護職側の原因、設備や用具などの原因など可能性のある原因をなるべくたくさん洗い出す。さらに、原因の裏に潜んでいる原因(二次要因)を探し出す。

続いて再発防止策を検討するときに重要になるのは、「未然防止策」「直前防止策」「損害軽減策」の3種類をバランスよく考えることです。

【再発防止の考え方】損害軽減策と直前防止策、未然防止策をバランスよく考えることが大切。

ただやみくもに話し合うよりも、こうした分析の手法を知ることで着眼点が定まり、ケース検討会議の内容が一段と深まります。

著者/山田滋
監修/三好春樹、下山名月
編集協力/東田勉
イラスト/松本剛

※本連載は『完全図解 介護リスクマネジメント 事故防止編』(講談社)の内容より一部を抜粋して掲載しています

書籍紹介

完全図解 介護リスクマネジメント 事故防止編

介護リスクマネジメント 事故防止編

出版社: 講談社

山田滋(著)、三好春樹(監修)、下山名月(監修)、東田勉(編集協力)
「事故ゼロ」を目標設定にするのではなく、「プロとして防ぐべき事故」をなくす対策を! 介護リスクマネジメントのプロである筆者が、実際の事例をもとに、正しい事故防止活動を紹介する介護職必読の一冊です。

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  • 山田滋
    株式会社安全な介護 代表

    早稲田大学法学部卒業と同時に現あいおいニッセイ同和損害保険入社。支店勤務の後2000年4月より介護事業者のリスクマネジメント企画立案に携わる。2006年7月よりインターリスク総研主席コンサルタント、2013年5月末あいおいニッセイ同和損保を退社。2014年4月より現職。

    ホームページ |株式会社安全な介護 公式サイト

    山田滋のプロフィール

  • 三好春樹
    生活とリハビリ研究所 代表

    1974年から特別養護老人ホームに生活指導員として勤務後、九州リハビリテーション大学校卒業。ふたたび特別養護老人ホームで理学療法士としてリハビリの現場に復帰。年間150回を超える講演、実技指導で絶大な支持を得ている。

    Facebook | 三好春樹
    ホームページ | 生活とリハビリ研究所

    三好春樹のプロフィール

  • 下山名月
    生活とリハビリ研究所 研究員/安全介護☆実技講座 講師

    老人病院、民間デイサービス「生活リハビリクラブ」を経て、現在は「安全な介護☆実技講座」のメイン講師を務める他、講演、介護講座、施設の介護アドバイザーなどで全国を忙しく飛び回る。普通に食事、普通に排泄、普通に入浴と、“当たり前”の生活を支える「自立支援の介護」を提唱し、人間学に基づく精度の高い理論と方法は「介護シーン」を大きく変えている。

    ホームページ|安全な介護☆事務局通信

    下山名月のプロフィール

  • 東田勉

    1952年鹿児島市生まれ。國學院大學文学部国語学科卒業。コピーライターとして制作会社数社に勤務した後、フリーライターとなる。2005年から2007年まで介護雑誌『ほっとくる』(主婦の友社、現在は休刊)の編集を担当した。医療、福祉、介護分野の取材や執筆多数。

    ホームページ |フリーライターの憂鬱

    東田勉のプロフィール

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