ヒヤリハット活動の前に行うべき2つの基本活動を解説|事故防止編(第7回)

ヒヤリハット活動の前に行うべき2つの基本活動を解説 | 事故防止編(第7回)

事故を防止するためにヒヤリハット活動をしているのに、肝心の事故がなかなか減らない……なぜ? そんな悩みを抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回はその理由を解説します。

ヒヤリハット活動とは?

ヒヤリハット活動とは、さまざまな業界で広く行われている事故防止活動の手法です。事故にはならなかったものの、「ヒヤリとした」「ハッとした」など事故になりそうだった事例を発見し、集めます。

ハインリッヒの法則(下図参照)によると、1件の重大事故の裏には300件ものヒヤリハットが潜んでいるそうです。つまり、「重大事故を起こす前に事故の芽を摘もうとする活動」と言えます。

【ハインリッヒの法則】重大事故は氷山の一角。1件の重大な事故の裏には、29件の軽微な事故、300件のヒヤリハットが潜んでいる。

ヒヤリハットで介護事故が減らない2つの理由

ヒヤリハット活動は医療現場から建設現場まで、事故防止の手法として幅広く行われてきました。当然、介護業界でも大きな成果を上げるだろうと思われましたが、意外にも「ヒヤリハット活動を行って事故が大幅に減った」という話はあまり聞きません。なぜでしょうか。

その理由は2点考えられます。

1点目は「ヒヤリハット活動の前に行うべき、事故防止の基本活動がおろそかになっているから」です。

そして2点目は、「ヒヤリハット活動の”方法” が間違っているから」です。どうすれば正しく行えるかについては、改めて紹介します。

ヒヤリハットはあくまで「補完的な活動」

ヒヤリハット活動を行っても介護事故が減らない原因として「ヒヤリハット活動がそもそも補完的な活動である」という点が挙げられます。介護事故を防止するうえで中心になるのは、「事故防止の基本活動」です。

【ヒヤリハット活動の本来の位置づけ】ヒヤリハット活動は介護事故防止の基本活動である安全規則の遵守と危険発見活動を行った上ではじめて効果を発揮する。安全規則の遵守:介護手順等の安全ルールを徹底することによって、ルール違反による事故を撲滅する。危険発見活動:施設の管理に関する危険の改善・介護活動の見直し・利用者個別の危険性の把握と対処

上の図で示したように、介護事故を防止するための基本活動は「安全規則の順守」と「危険発見活動」の2段階に分かれます。つまり、「ルール違反による事故をなくし」「身のまわりにある、事故につながりやすい危険を改善する」ことが、ヒヤリハット活動の前に行う基本活動となるわけです。

この基本活動の2点がしっかり行われて初めて、ヒヤリハット活動は効果を発揮します。基本活動をやらない状態で行うヒヤリハット活動は目の粗いザルのようなもので、一向に事故を防ぐことができないのです。

著者/山田滋
監修/三好春樹、下山名月
編集協力/東田勉
イラスト/松本剛

※本連載は『完全図解 介護リスクマネジメント 事故防止編』(講談社)の内容より一部を抜粋して掲載しています

書籍紹介

完全図解 介護リスクマネジメント 事故防止編

介護リスクマネジメント 事故防止編

出版社: 講談社

山田滋(著)、三好春樹(監修)、下山名月(監修)、東田勉(編集協力)
「事故ゼロ」を目標設定にするのではなく、「プロとして防ぐべき事故」をなくす対策を! 介護リスクマネジメントのプロである筆者が、実際の事例をもとに、正しい事故防止活動を紹介する介護職必読の一冊です。

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  • 山田滋
    株式会社安全な介護 代表

    早稲田大学法学部卒業と同時に現あいおいニッセイ同和損害保険入社。支店勤務の後2000年4月より介護事業者のリスクマネジメント企画立案に携わる。2006年7月よりインターリスク総研主席コンサルタント、2013年5月末あいおいニッセイ同和損保を退社。2014年4月より現職。

    ホームページ |株式会社安全な介護 公式サイト

    山田滋のプロフィール

  • 三好春樹
    生活とリハビリ研究所 代表

    1974年から特別養護老人ホームに生活指導員として勤務後、九州リハビリテーション大学校卒業。ふたたび特別養護老人ホームで理学療法士としてリハビリの現場に復帰。年間150回を超える講演、実技指導で絶大な支持を得ている。

    Facebook | 三好春樹
    ホームページ | 生活とリハビリ研究所

    三好春樹のプロフィール

  • 下山名月
    生活とリハビリ研究所 研究員/安全介護☆実技講座 講師

    老人病院、民間デイサービス「生活リハビリクラブ」を経て、現在は「安全な介護☆実技講座」のメイン講師を務める他、講演、介護講座、施設の介護アドバイザーなどで全国を忙しく飛び回る。普通に食事、普通に排泄、普通に入浴と、“当たり前”の生活を支える「自立支援の介護」を提唱し、人間学に基づく精度の高い理論と方法は「介護シーン」を大きく変えている。

    ホームページ|安全な介護☆事務局通信

    下山名月のプロフィール

  • 東田勉

    1952年鹿児島市生まれ。國學院大學文学部国語学科卒業。コピーライターとして制作会社数社に勤務した後、フリーライターとなる。2005年から2007年まで介護雑誌『ほっとくる』(主婦の友社、現在は休刊)の編集を担当した。医療、福祉、介護分野の取材や執筆多数。

    ホームページ |フリーライターの憂鬱

    東田勉のプロフィール

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