事故を防止するためにヒヤリハット活動をしているのに、肝心の事故がなかなか減らない……なぜ? そんな悩みを抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回はその理由を解説します。
ヒヤリハット活動とは?
ヒヤリハット活動とは、さまざまな業界で広く行われている事故防止活動の手法です。事故にはならなかったものの、「ヒヤリとした」「ハッとした」など事故になりそうだった事例を発見し、集めます。
ハインリッヒの法則(下図参照)によると、1件の重大事故の裏には300件ものヒヤリハットが潜んでいるそうです。つまり、「重大事故を起こす前に事故の芽を摘もうとする活動」と言えます。
ヒヤリハットで介護事故が減らない2つの理由
ヒヤリハット活動は医療現場から建設現場まで、事故防止の手法として幅広く行われてきました。当然、介護業界でも大きな成果を上げるだろうと思われましたが、意外にも「ヒヤリハット活動を行って事故が大幅に減った」という話はあまり聞きません。なぜでしょうか。
その理由は2点考えられます。
1点目は「ヒヤリハット活動の前に行うべき、事故防止の基本活動がおろそかになっているから」です。
そして2点目は、「ヒヤリハット活動の”方法” が間違っているから」です。どうすれば正しく行えるかについては、改めて紹介します。
ヒヤリハットはあくまで「補完的な活動」
ヒヤリハット活動を行っても介護事故が減らない原因として「ヒヤリハット活動がそもそも補完的な活動である」という点が挙げられます。介護事故を防止するうえで中心になるのは、「事故防止の基本活動」です。
上の図で示したように、介護事故を防止するための基本活動は「安全規則の順守」と「危険発見活動」の2段階に分かれます。つまり、「ルール違反による事故をなくし」「身のまわりにある、事故につながりやすい危険を改善する」ことが、ヒヤリハット活動の前に行う基本活動となるわけです。
この基本活動の2点がしっかり行われて初めて、ヒヤリハット活動は効果を発揮します。基本活動をやらない状態で行うヒヤリハット活動は目の粗いザルのようなもので、一向に事故を防ぐことができないのです。
著者/山田滋
監修/三好春樹、下山名月
編集協力/東田勉
イラスト/松本剛
※本連載は『完全図解 介護リスクマネジメント 事故防止編』(講談社)の内容より一部を抜粋して掲載しています