介護事故と同じく、感染症も過失の大きさで施設の責任の有無を判断します。施設で発生した全ての感染症が施設側の責任になるとか、完全に防ぐことができない感染症に施設側の責任がない、ということはありません。
目次
2種類に分かれる過失の重さ
感染症や細菌性食中毒などの予防策は、徹底した衛生管理にあることは間違いありません。しかし、介護施設は病院と違って「生活の場」ですから、いきすぎた管理は利用者の生活の自由度を損ないます。自由度を大切にしながら衛生管理を行うには、予防策を2つに分けることが必要です。
- 施設の設備や生産物が発生原因の感染症
100%近く施設の過失となる。防げる事故なので、未然防止に重点を置いてマニュアル化します - 外部の感染源からの侵入によって起こる感染症
施設の過失を立証するのは困難。病原体の侵入を完璧に防ぐことはできないので、拡大防止に重点を置いてマニュアル化します

感染防止マニュアルのつくり分け方
医療機関では、感染防止マニュアルが標準化されています。介護施設がそれと同じことをしたのでは不都合が生じるのですが、施設なりの標準予防策は必要です。医療と介護の感染防止マニュアルの違いについては、 次回(第78回)で詳述するので参照してください。
職員が守るべき標準予防策があることを前提に、「2種類に分かれる過失の重さ」の本文で示した①と②のマニュアルのつくり分け方を考えてみましょう。
施設が発生原因の感染症を防ぐためのマニュアルでは、まず設備の衛生管理の徹底が必要です。次に、保管、調理、配膳時、居室内などでの食品の取り扱いルールを定めます。
外部からの侵入を防ぐためのマニュアルでは、手洗いの励行や食料の持ち込みなど、外来者へのルールが必要です。
また、感染者が出たとき迅速 に対応できるよう、感染症ごとに対処方法を定めます。

著者/山田滋
監修/三好春樹、下山名月
編集協力/東田勉
イラスト/松本剛
※本連載は『完全図解 介護リスクマネジメント トラブル対策編』(講談社/2018年2月14日発売)の内容より一部を抜粋して掲載しています