【介護施設の感染症対策】感染症は発生形態の違いから2種類にわけて考える|トラブル対策編(第77回)

【介護施設の感染症対策】感染症は発生形態の違いから2種類に分けて考える | トラブル対策編(第77回)

介護事故と同じく、感染症も過失の大きさで施設の責任の有無を判断します。施設で発生した全ての感染症が施設側の責任になるとか、完全に防ぐことができない感染症に施設側の責任がない、ということはありません。

2種類に分かれる過失の重さ

感染症や細菌性食中毒などの予防策は、徹底した衛生管理にあることは間違いありません。しかし、介護施設は病院と違って「生活の場」ですから、いきすぎた管理は利用者の生活の自由度を損ないます。自由度を大切にしながら衛生管理を行うには、予防策を2つに分けることが必要です。

  1. 施設の設備や生産物が発生原因の感染症
    100%近く施設の過失となる。防げる事故なので、未然防止に重点を置いてマニュアル化します
  2. 外部の感染源からの侵入によって起こる感染症
    施設の過失を立証するのは困難。病原体の侵入を完璧に防ぐことはできないので、拡大防止に重点を置いてマニュアル化します
【よくある介護施設の感染症対策の勘違い】利用者が感染症を発症したら、すべてが施設側の責任になる。県戦勝を防ぐのは無理なので、施設側の責任にはならない。いずれも誤りです。

感染防止マニュアルのつくり分け方

医療機関では、感染防止マニュアルが標準化されています。介護施設がそれと同じことをしたのでは不都合が生じるのですが、施設なりの標準予防策は必要です。医療と介護の感染防止マニュアルの違いについては、 次回(第78回)で詳述するので参照してください。

職員が守るべき標準予防策があることを前提に、「2種類に分かれる過失の重さ」の本文で示した①と②のマニュアルのつくり分け方を考えてみましょう。

施設が発生原因の感染症を防ぐためのマニュアルでは、まず設備の衛生管理の徹底が必要です。次に、保管、調理、配膳時、居室内などでの食品の取り扱いルールを定めます。

外部からの侵入を防ぐためのマニュアルでは、手洗いの励行や食料の持ち込みなど、外来者へのルールが必要です。

また、感染者が出たとき迅速 に対応できるよう、感染症ごとに対処方法を定めます。

【感染症の正しい区分】介護施設で過失になりやすい感染症:施設の設備や生産物が発生原因の感染症。衛生管理の徹底によって防止できるはずなので、未然防止に重点を置く。過失になりにくい感染症:外部の感染源からの侵入によっておこる感染症。侵入を未然に防ぐのは難しいので、感染を拡大させない迅速な対応・対策を。

著者/山田滋
監修/三好春樹、下山名月
編集協力/東田勉
イラスト/松本剛

※本連載は『完全図解 介護リスクマネジメント トラブル対策編』(講談社/2018年2月14日発売)の内容より一部を抜粋して掲載しています

書籍紹介

完全図解 介護リスクマネジメント トラブル対策編

介護リスクマネジメント  トラブル対策編

出版社: 講談社

山田滋(著)、三好春樹(監修)、下山名月(監修)、東田勉(編集協力)
近年、介護事業者と家族のトラブルが増加しています。介護現場は、トラブルになりやすい事故が多いにもかかわらず、対策が未熟な施設が少なくありません。事故が起きた際の適切な対応手順をしっかり学べる一冊です。

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  • 山田滋
    株式会社安全な介護 代表

    早稲田大学法学部卒業と同時に現あいおいニッセイ同和損害保険入社。支店勤務の後2000年4月より介護事業者のリスクマネジメント企画立案に携わる。2006年7月よりインターリスク総研主席コンサルタント、2013年5月末あいおいニッセイ同和損保を退社。2014年4月より現職。

    ホームページ |株式会社安全な介護 公式サイト

    山田滋のプロフィール

  • 三好春樹
    生活とリハビリ研究所 代表

    1974年から特別養護老人ホームに生活指導員として勤務後、九州リハビリテーション大学校卒業。ふたたび特別養護老人ホームで理学療法士としてリハビリの現場に復帰。年間150回を超える講演、実技指導で絶大な支持を得ている。

    Facebook | 三好春樹
    ホームページ | 生活とリハビリ研究所

    三好春樹のプロフィール

  • 下山名月
    生活とリハビリ研究所 研究員/安全介護☆実技講座 講師

    老人病院、民間デイサービス「生活リハビリクラブ」を経て、現在は「安全な介護☆実技講座」のメイン講師を務める他、講演、介護講座、施設の介護アドバイザーなどで全国を忙しく飛び回る。普通に食事、普通に排泄、普通に入浴と、“当たり前”の生活を支える「自立支援の介護」を提唱し、人間学に基づく精度の高い理論と方法は「介護シーン」を大きく変えている。

    ホームページ|安全な介護☆事務局通信

    下山名月のプロフィール

  • 東田勉

    1952年鹿児島市生まれ。國學院大學文学部国語学科卒業。コピーライターとして制作会社数社に勤務した後、フリーライターとなる。2005年から2007年まで介護雑誌『ほっとくる』(主婦の友社、現在は休刊)の編集を担当した。医療、福祉、介護分野の取材や執筆多数。

    ホームページ |フリーライターの憂鬱

    東田勉のプロフィール

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